宝石の輝きの先に 12
なんせ無尽蔵と思える宝石の供与を約束しましたからね。なんならエルドラドで採掘される全ての石を預けてもいいとおっしゃった。
暁さんからしてみれば、腹の膨れない石ころに限りない可能性を与えることができる。
冒険者の生存率の高さに直結する魔道具が手に入る。それがなにより重要だ。
それでは、と踵を返してストーンウォールに向き直る。
「わたくしは水と氷系魔法が優位ですので、魔法の行使についてはアルマさんにお願いします!」
「アルマにお任せっ!」
火のマナを灯した魔法石。火の魔法を付与されたなら、火属性優位のアルマの出番です!
宝石魔法で魔法をぶっ放せる。
歴史的体験。
歴史的偉業。
アルマの名が魔法史に刻まれるだろうっ!
水晶を袖に巻き込み、魔力を流して魔法を発動させる。
魔力量10。練度10。魔力流出速度10。
魔法の扱いを覚える8歳児相当の魔力で出力してみよう。これほど微量であれば爆散する心配もないだろう。
ぱぴょん。
音を出してファイヤーボールがストーンウォールに向かって飛んでいく。距離は50メートル。
ばしゅっと当たって霧散した。焼けこげは丸く浅い。ファイヤーボールの組成が均一な力加減になってる証拠。魔力にムラがあったり、出力にブレがあると途中で消えたり目標まで届かなかったり、届いても威力が激減したりするのだ。
紫金石も問題なく合格。振動に弱く、急激な熱変動にも弱いガラスだから破損するのではと思われていた。ファイヤーボール程度であれば大丈夫そう。
しかし、中級以上の複雑な魔術回路には耐えられないかもしれない。ここは要検証です。
「ガラスでも宝石魔法の要領で魔術回路を付与できるのは盲点でした」
「ですね。でもあんまり複雑な魔術回路だとマジックアイテムとしてのキャパシティを越えてしまうので、ドロドロに溶けるか破裂する可能性大な印象です。ガラス質の弱点を克服しなくては、宝石魔法としては成立しそうにないですね」
誰でも使える下位魔法を付与する宝石魔法は研究段階に於いて意味はある。が、実戦では付加価値がなさすぎる。
材質、材料の質向上。これは職人と技術者の領域ですな。
続いて花崗岩。なるほど、魔力を流すと魔術回路の起動とともに石が振動する。振動すると熱が発生する。花崗岩は水分を吸収しやすい石。内包された水が熱で膨張して破損するのか。
これ、間違いなく破損する。
「破損してもいいので、とりあえずやってみてください」
「わかりました。やるだけやってみます」
フィアナさんからGOが出た。なればやるしかあるまいて。




