宝石の輝きの先に 5
言葉を腹の中に収めていると、フィアナさんはみるみるうちに顔を真っ赤にする。全身の力が抜けて崩れるように椅子に座った。
そこまでのことなのか?
疑問符を浮かべるアルマの前に、人目もはばからずカーペットを転げまわり叫びまわり頭ブリッジをするお嬢様のお姿があらせられた。
「ああああああああああああああもうおしまいですわああああああああああッ!」
「なにがですか?」
「好きな人が特定されるなんて死んだも同然ですわあああああああああああッ!」
「どうしてですか?」
「だってだってだって好きな人の話しを誰にも話さないってわたくしたちの取り決めなのに口を滑らしてしまったのですわあああああああああああああッ!」
絶賛口を滑らせ中。直下降ウォータースライダーのように滑り落ちる。滑るどころか、ただただ落下。
この人に大事な秘密を打ち明けるのは危険かもしれない。
やれやれ。この事態をどう収拾したものか。面倒くさいが9割を占める。だけどフィアナさんを絶叫させた原因はアルマにもある。
少し調子に乗ってしまった部分がないわけではない。
素直に謝って考えうる正攻法を提案しよう。
「ごめんなさい。でもアルマはフィアナさんに幸せになってほしいんです。エディネイにも、リリィにも、ニャニャさんにもアナスタシアさんにも。それが難しいのは分かってます。それと、アルマは本当に恋愛に疎いので、その手のあれやこれやは全く分かりません。すみません。こんな性格なので、真っ向勝負しかできません」
フィアナさんを抱き起こし、ひとつ笑みを浮かべて向き直る。
「そんなアルマでよければ、フィアナさんの幸せのお手伝いをさせてください。主に宝石魔法関係で」
恋愛相談をされても困るのだっ!
正気を取り戻したフィアナさんはひとつ大きな息を吸って落ち着きを取り戻したようだ。
「こちらこそ、無理なお願いを押し付けてしまって申し訳ございません。それでは当初の予定通り、宝石魔法のお話しに移りましょう」
服の乱れを整えながら椅子に座り直し、紅茶をひと含みして心を落ち着かせる。
おいしいスイーツを食べて心を落ち着かせる。
背もたれに深く腰を落ち着かせて心を落ち着かせる。
めちゃくちゃ動揺してる。動揺の余韻が抜けきらない。片思いの相手を打ち明けてしまい、少なからず己の内に眠る秘密を吐露してしまった。
バラされるんじゃないか。
心配が先に立って手が震える。
脚も震えてる。
声も震えた。
アルマにはフィアナさんの恋バナは荷が重すぎる。どうすればフィアナさんは心の平穏を取り戻すことができるのか。
ひとまず、誰にもしゃべらないことを約束しよう。無駄だとは思うが。みんな周知の事実だし。
そこはもう、信じてもらうしかない。




