宝石の輝きの先に 2
メイドさんから間髪入れずに差し出されたスイーツが輝きを放つ。
かぐわしい香りのするアールグレイ。バターが香るプチサイズのシュークリーム。輪切りにされたドライオレンジにチョコレートをつけたきらきらスイーツ。
なんというおもてなし力。これがお嬢様の本気。
「申し訳ございません。今日はこのくらいしかご用意できなくて」
どうやら全然本気ではなかったようだ。庶民の物差しで彼女を測ると事故る可能性大。
一瞬呆然として、素早く切り替えて飛び上がる。
「まさかっ! ご丁寧にもてなしてもらって、感謝の言葉もありません」
「ですですっ! こんなにおいしいスイーツは初めてです! 本当にありがとうございます!」
アルマとカルティカは心よりの感謝をフィアナさんに伝え、そして心をひとつにした。
「「それよりっ!」」
カルティカの顔を見て、アルマから先に話しをする流れとなる。
「宝石魔法の件ですが、現時点でどの程度のところまで進んでるのか、見える化しようと思うんです。そこにマーリンさんの研究ノートを落とし込んで、ゴールまでの道筋を立てて行こうと思ってます。いかがでしょうか?」
「素敵ですっ! わたくしも同じことを考えていました。それでは、スイーツを食べたら始めましょう。それで、カルティカさんのお話しはなんでしょうか?」
フィアナさんは視線をアルマの奥にいるカルティカに合わせて頬を紅潮させた。
「ティカもアルマと同じことを言おうとしてました。ゴールまでのフローチャート作りは大事ですから」
「さすがカルティカさんです。とてもしっかりされてますね♪」
ふわっとしてながらも仕事ができるカルティカには好感を覚える。魔獣戦の時もそうだった。緊急事態で、しかも命がかかってる状況でありながら、メタフィッシュの操縦に狂いがなかった。
さすがベルン寄宿生は伊達じゃない。
よし。このまま宝石魔法の話題に振り切ろう。
「ところで、お二人は、その……好きな殿方はいらっしゃるのですか?」
いやあああああああああああああああああああッ!
そういう話し切り出すのやめてえええええええッ!
「ないっすね」
アルマ、ばっさり切り返す。
「ないことはないけど、片思いのまま自然消滅しました」
カルティカは片思い経験者。アルマよりも一歩先を行く猛者。
「こ、告白は、されたのですか!?」
恋するフィアナさんは興味津々。
「告白してないです。その前に冷めました」
「ど、どうして冷めてしまったのですか?」
「なんだったかな。足攣って溺れて、情けない姿を見た時だったかもしれません」
「それはまた、情けないところを目撃してしまわれたのですね」
「まぁ8歳くらいの出来事でしたので。移ろいやすい年頃だったのかもしれません」
それを聞いてなにやらそわそわするフィアナさん。えぇーー、恋バナスタートですかーー。
恋色ブースターに火が点くんですかーー。
アルマは魔法の話しがしたいのにーー。
いっそマルコを召喚して接着剤でくっつけてあげようか。
「そ、その、不躾なお願いではあるのですが、殿方に好かれる女性というのは、一般的にどういったものなのでしょうか?」
貴女のような人ですよ。
アルマたちは沈黙。悶々とする女性は続ける。
「これは、ええと、友達の友達の話しなのですが」
それは貴女のことですよね。友達の友達って。ブーメランしてますよね?




