魔獣来たりて、ぶっ殺す 11
~おまけ小話『魔獣』~
陽介「いやぁ~。とんでもない事実を発見してしまいましたねえ」
ユノ「とてもマルタやニャニャちゃん、アルマちゃんには言えませんね~」
シェリー「そういえば、魔獣を解体して調査してたんですよね。どうでしたか? なにか有益な情報は得られましたか?」
陽介「魔獣についての見識がないので有益な情報かは判断できかねますが、異世界間に共通する極めて重要な情報を得ることができましたねえ」
ユノ「ですねぇ~。しかし、これは困ったことになりました。レナトゥスでも超極秘事項に指定するつもりです。シェリーさんも御内密に」
シェリー「内密にするのは分かった。それで、その内容とは?」
ユノ「今回得た魔獣の検体を調査したところ、人為的にサメの体内に魔獣になるために必要な、邪悪な魔力が注入された痕跡が見つかりました」
シェリー「――――仮にそれが本当だとしたら世界を揺るがす超大事件なんだがッ!?」
陽介「残念ながら事実です。ワタクシが魔剣の魔力の脱色化ができることは御存じですよね?」
シェリー「ええ、魔剣の魔力の色を脱色化して、使用者の魔力の色に染めることで、魔力の伝達効率を上げて威力を最大化するんですよね?」
陽介「おっしゃる通りです。人為的に魔力の脱色化ができるゆえ、魔獣に人為的な魔力の注入の痕跡を見つけることができました。これは実に興味深いですねえ」
ユノ「史上最低最悪の発見です。人間が魔獣を故意に創り出してるだなんてこと……。しかもここから最も近く、サメや大型海洋生物を研究してる海洋研究所の所有機関が」
シェリー「――――ナッソー海洋研究所。国際魔術協会か!」
ユノ「きな臭いなんて次元ではありません。元々、法外な研究をしてるとの噂は聞いてますが。それに、国際魔術協会の支部が世界中にあるとはいえ、回収に来るのが早すぎます。あらかじめ魔獣が現れるのを知ってたかのような」
シェリー「今はまだ根拠がない。人為的というだけで、誰が、あるいはどの組織が手を加えたかは分からない。その言葉は胸の内に秘めておけ。ところで陽介さん。今回得られた情報を元にワクチンを作成することはできるのですか?」
陽介「ワクチンは不可能でしょうねえ。魔獣自体の魔力も混じってますから、個体ごとにワクチンが必要になります。しかし」
ユノ「魔力を魔獣に注入するという点は全てに於いて同様に行われるはずです。であれば、なにか特徴があるはず。その部分を解明できれば、中和、あるいは魔力の排出や脱色、魔力の上書きが可能になるかもしれません。そっち方面で研究を進めようと思います」
シェリー「よろしく頼む。陽介さんとユノがサマーバケーションに参加してくれていて助かった。我々だけでは、検査はおろか捕縛も難しかっただろう。本当にありがとうございます」
陽介「いえいえ、こちらとしてもたいへん充実した日々を体験させていただきました。しかし、くれぐれもアルマさんにだけは、耳に入らないようにお願いします。彼女は魔法で世界中の人々を笑顔にしたいと思ってます。それが、まさか人為的に人を襲う魔獣を創り出すなんて」
ユノ「私も彼女の悲しむ顔を見たくはありません。秘密を厳守することを誓います」
陽介「それもあるのですが、アルマさんのことなので、猪突猛進して魔法をぶっ放さないか心配でしてねえ」
シェリー「あぁ……絶対に知られないようにしないとな…………」
無事に魔獣を撃退したアルマたちはおいしいランチに舌鼓。めでたしめでたしとなればよかったのですが、最後に国際魔術協会から尋問に近い質問の嵐に遭い、イライラを募らせて帰路につくのでした。
次回は、フィアナの研究課題のひとつである宝石魔法でわいわいする話しです。自宅に友達を呼ぶことなんてほとんどないお嬢様は例に漏れず大暴走。アルマとカルティカはドン引きしながらも、彼女のおもてなしの心を傷つけないように必死に取り繕います。
例に漏れずアルマがいろいろとやらかし、ペーシェが調子に乗って余計なことを口走り、魔法大好きおじいちゃんが押しかけて来て、フェアリーたちが知ってか知らずか恋色ランチャーをぶっ放すお話しです。




