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魔獣来たりて、ぶっ殺す 3

 始まりました、魔法アリアリなんでもアリのトライアスロン。

 島の外周を10周。約30キロメートル。メタフィッシュでの潜水潜航10キロメートル。へとへとになった最後にシェリーさんが用意した超頑強ゴーレムと対戦。

 ゴーレムにはダメージスコアが用意されており、高スコアを叩き出すほど高評価に繋がる。ちなみに、いまだかつて個人でゴーレムを破壊した者はいない。

 なので、アルマがその最初の偉大なる破壊者になろうと思いますっ!


「偉大なる破壊者って、またすごいあだ名だな」


 アルマとタッグのエディネイが肩を落とす。


「とにかく最後のゴーレム戦が超楽しみ!」

「そんなこと言って、シェリーさんの作るゴーレムの強さを知らないから……」

「ゴーレムは知らん。でもストーンウォールの強度は知ってる。あのレベルでゴーレムが作れるんなら、それはもうすんごいものになるよね。超楽しみ!」

「アルマ、お前、ほんと怖いもんなしだな」


 怖いものなどあるものか!

 楽しみしかないっつーの!


 周囲にはライバルがいっぱい。トライアスロンはタッグ戦。アルマのタッグはドラゴノイドのエディネイ。

 基本的にタッグになるパーティーはくじ引きで決まる。今回飛び入りのアルマはエディネイと強制タッグ。というのも、エディネイの魔力の属性がメタフィッシュと相性が悪いからだ。

 保有魔力の99パーセント以上を火属性の魔力のエディネイに、水操作する必要のあるメタフィッシュとは食い合わせが悪すぎる。


 他の人たちもタッグで臨む。新しく得た縁結びの魔法で手を組んだ2人組は、それぞれの短所を補い、長所を伸ばすことのできる組み合わせ。

 驚くことに、教師陣が考えてた組み合わせとほぼ同じ。縁結びの魔法の有用性が再確認された。


 結ばれた運命と手を取り、固い握手を交わす。

 同時に、シェリーさんから号令がかかった。Tシャツにホットパンツではない。フリルのついた白いビキニとカラフルなパレオが美しい海の守護神。白いツバ広帽には満開のナマクアランド・デイジーが咲く。

 抜群なスタイルも相まって、目のやり場に困るナイスレディ。


 寄宿生には、鬼にしか見えないが。


「それでは、夏合宿最後の課題。トライアスロンを開催するッ!」


 一喝しただけでアルマたちの背筋が伸びる。かわいい水着を渡されてわたわたしてた乙女の姿はない。あるのは鬼神の如き覇気を放つ羅刹の仁王立ち。


「ルールは単純だ。島を10周。メタフィッシュでチェックポイントを探してキバーランドへ戻り、ゴーレムと戦闘。以上だ!」

「はいっ!質問よろしいでしょうか!」

「許す!」


 フィティが苦笑いとともに手を挙げた。


「『チェックポイントを探して』ということは、潜水しながらなにかを探すということですか?」

「その通りだ。例年であれば本土まで水泳して戻ってくるだけだった。今回はメタフィッシュで潜水だからな。少し趣向を変えてみた。レナトゥスの紋章が入ってるからすぐにわかる」

「了解であります!」

「すぐにわかるような所には置いてないから、なんとかして探せ」

「りょ、了解であります…………」


 なるほど宝探し。超楽しそう!

 なぜだかみんなは嫌そうな顔してるけど。


 開始の合図が始まって、まずはエディネイとライバルたちが走り始めた。

 トライアスロンはタッグ戦。体力に自信のある戦士職と、魔法が得意な魔法職。

 自力で走る体力勝負を戦士職が、魔力で動かすメタフィッシュを魔法職が。それぞれがそれぞれの得意分野で補い合う。

 無論、残り5キロ地点でも、どこでも交代してもいい。とにかく2人で10周すればいいのだ。


「とはいえ、アルマは体力に自信がないから、走るのは全部エディネイ頼みなのだ」


 生粋の魔法職なので。フライの魔法を使っていいならともかく。


「アルマはいいなぁー。わたしは残り5キロは走ってくれって言われたよぉー」


 アクエリアがぼやいた。できれば走りたくない彼女は魔法職。あまり体力に自信があるほうではない。


「俺は15キロだちくしょう…………」


 魔法職男子は男ってだけで不利益を被る傾向にある。(リュ)吴然(ウゥラン)も例にもれず、半周走ることになった。

 相方はシューティングスターレースの訓練を受けてるディピカ・ハリッシュ。魔法研究職専攻の彼女はスポーツ選手でもあり、魔法職の中でも体力のあるほう。

 しかし箒に乗ってレースをする彼女は走ることが得意ではない。さらに、犬猿の仲であるシェンリュの援護射撃(挑発)に乗ったウゥランは、まんまと半分走らされる羽目になった。


 不機嫌なのは半周走らされることじゃない。まんまとシェンリュの挑発に乗ったことだ。


「絶対にシェンリュにだけは負けねえ」


 ウゥランはさっきからそればっかり呟いてる。ぶっちゃけうるせえ。


 先頭を走るのはマルコ。次期騎士団長候補とだけあって優秀そのもの。リズミカルに、息切れもなく、理想的なフォームで走り続ける。

 次点はカルロス。飄々とした優男の風貌とは裏腹に、生粋の近接戦闘職の彼は体力も走力も抜群。コミュ力も高く、彼が加わるチーム戦は常に優秀な成績を収めるらしい。

 三番手はエディネイ。女性でありながら体力とガッツのある彼女はクラスのムードメーカー。笑顔を絶やすことなく、前向きな彼女の背中を頼もしく思うのは男女はもちろん、目上の先輩からも信頼されていた。


「さすがカルロス。わたしが足遅いからもっと頑張ってねぇ~♪」

「アクエリア、応援の仕方が雑」

「彼はこれでいいんですぅー。頼りにされると力が出るタイプですからぁー」

「あ、そう……」


 そういう男子もまぁいるよね。特に彼は女子大好きみたいだから。女の子に頼られるとガッツが湧くのでしょう。

 アルマ的には暁さんやセチアさんに頼られた時みたいな感じかな。いい子いい子してくれる人に頼られると頑張れる。


 エディネイに檄を飛ばしたのち、しばらくしてシェンリュが現れた。近接職の彼女もかなり早い。通りすぎる間際、ライバルが余計なひと言を叫ぶ。


「シェンリュこけろーーーーッ!」

「野次飛ばすのはやめろよ」


 ウゥランに野次られて、シェンリュがむきになって加速した。ペースを乱さなければいいのだが。

 その後、シェンリュが一周して、応援組を通り過ぎる間際にウゥランの顔面に魔力弾をぶち込んで走り去っていった。


「これルール違反ではッ!?」


 審判のシェリーさんは両腕を組んで仁王立ち。


「走者に対する妨害は禁止だ。一応、待機組のお前らに対する直接攻撃は禁止してない。そもそもそんなこと想定してないからな。というか、野次を飛ばすな。ルール以前の問題だ」


 ウゥランは一喝されて奥歯を噛んだ。


 アホの子はともかく、アルマが考えなくてはならないのは海のどこかにあるというチェックポイントをどう探すか、ということである。

 漁業で使われるようなブイなのか。はたまた海底に沈めた宝箱なのか。なんにしても、砂底に擬態するヒラメのような隠され方はしてないはず。であれば、物自体は見つけやすい。

 問題はそれがどの程度の距離にあるかということ。例年の水泳距離とメタフィッシュの潜水能力を計算して割り出せるかもしれない。

 メタフィッシュで造形する海生生物はなににするか。エコーロケーションが使えるイルカか。嗅覚が鋭い鮫か。海底を照らすことのできるアンコウか。速さ重視ならカジキだろうか。

 うぅむ。悩みますな。


 そんなこと考えてたらエディネイが戻って来てたー!


「おいアルマ! さっさとメタフィッシュを出せ! 一番を取るんだろ!」

「もちろんだともっ!」


 悩んでる場合じゃねえぜ。とにかくエディネイとともに、寄宿生一同を蹴散らしてやるのだ。

 無理を言って教練に参加させてもらってるアルマからすれば、彼らをよいしょしておくのが社会人の良識。しかし、アルマにそういう忖度は存在しない。

 やるからには全力で叩き潰す。メンツをバラバラにして粉砕してくれるぜっ!

 それがアルマ流の礼儀というものです。

 暁さんが聞いたら呆れてため息をつくでしょうねっ!


 エディネイにも負けられない理由があった。もしも一番を取れたなら、今度の週末にメリアローザに転移してリィリィちゃんと会わせてあげるって約束したのだ。

 そうでなくても、エディネイは最良の結果を目指すだろう。そこにアルマがドーピングを投入。もっとやる気を出してもらうために、エディネイに精神的ジェットエンジンを搭載してやったのだ。


 その甲斐あってか、エディネイは前二人を抜いて一着で到着。息切れし、肩と胸を揺らしながらアルマのお尻に火を点けた。

 点火された導線を消火するようにメタフィッシュを持って海へ参る!

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