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シューティングスター・ティアドロップ 7

 魔力を溜め、圧縮し、放つ。魔力の塊は空気抵抗を受けて『ひゅ~』の音を奏でながら空へ飛翔。外殻が割れ、幾千の閃光が四散。爆発音が胸に鳴り響く。


「ひゅ~~~~どどーーーーんっ!」

「しゃらららら、ぱぱん」

「ひゅ~~ぱぱんどどどーーーーんっ!」

「ぱぱっぱぱっぱぱっぱららららら」

「ひゅらららひゅひゅ~~~~どぉおおおおおんっ!」


 結局、撃ちあげて口でも発声し始めた。なんか楽しくて、つられて声に出して歌ってた。踊り狂いながら。


 最後に全員で手を繋ぎ、超巨大な花火を開花。島を覆い尽くすほどの、太陽とも見紛うばかりの大輪の花。


「ふふふっ。いつもお世話になってるヘラさんへの贈り物です。いかがでしたか?」

「最高だわっ! ありがとう、アルマちゃん。マーリンさん、マルタ、ユノ、ベレッタちゃん、フィアナちゃん、ニャニャちゃん!」

「いえいえ、楽しんでいただけてなによりです」

「なんだか、勢いで花火を撃ちあげたけど、すっごく恥ずかしいことをしてたような」

「ベレッタさん、ちょーかわいかったですっ!」

「ふわぁっ!?」


 一瞬で赤面してしゃがむベレッタちゃん。アルマちゃんに手を引かれて戻ってきても、まだ顔は真っ赤っか。


「ベレッタさんかっこいいですっ! みなさんも、本当にありがとうございました!」


 称賛と感謝の言葉が贈られ、ベレッタちゃんの熱が全身に伝わる。恥ずかしさは興奮に変わり、みんなの役に立てたと嬉しくなって涙を浮かべた。


「こちらこそ、ありがとうございます!」

「踊り狂ってたベレッタさん、ちょーかわいかったですよー!」


 はいもうそういうこと言うとベレッタちゃんが顔真っ赤にしてどっか逃げちゃうからやめて!


「火薬草を使う占いの他にはなにかないんですか!?」

「ない。私の占いは火薬草占いだけ」

「はぁーーーーーーーーーーーーっ!」

「寝てる子もいるから静かにして」


 愕然と天を仰いで失望の雄たけびを吠える。すっかり夜が更けてペンションに入った私は占い大好き女子に囲まれた。

 寄宿生のほぼ全員に囲まれてる。


 リビングのソファに座り、みんなでお菓子の山を囲みながら、秘密の夜を過ごしたい思春期女子に詰め寄られた。

 なにかそれっぽいことを教えてあげないと解放されそうにない。

 というか、寄宿生の子らは合宿で来てるんだから、さっそと寝て体力回復させなさいよ。


 と言うと、反感を買われるのが目に見えてるので言わない。


「そうねぇ、マジックナンバーって知ってる?」

「「「「「マジックナンバー?」」」」」


 生年月日を足した数字によって運勢が違うというもの。無論、特定の数字が良くて、特定の数字が悪いというわけではない。それぞれに良いところがあり、悪いところがある。

 ただし、生まれ持っての運勢と、外的要因と精神的要因によって人生の運勢は大きく変わる。だから一概にどの数字がいいとかって言えない。

 けれど、それなりに運のいい悪いは数字によってあるもの。


「比較的、生まれた月と日にちを足して、3、7、12の数字は良性の傾向がある。とりわけ、16はマジックナンバーって言われてて、エネルギーの強い数字って言われてる。万能ってわけじゃないけどね」


 念を押すも、すぐに自分の誕生日を足してやいのやいのするところなんて青春女子。あと、ヘラさんまで本気にならないでください。貴女、もうそういう歳じゃないでしょ。


 さて、マジックナンバーで賑わってる内に退散するとしますか。

 明日の朝食はすみれちゃん特製の七星点心。ワールドワイドな味付けを閉じ込めたスペシャル仕様。キキちゃんとヤヤちゃん曰く、揚げ点心が美味だったとのこと。

 すみれちゃんは飲茶の講義をとったらしく、その腕をぜひにふるいたいとガッツのポーズ。

 これは期待が高まります。明日へ向かってワープするため、スキップしながら夢の中へレッツラゴー!


「あっ、私は16だ!」


 背後でマジックナンバーが聞こえた。16の数字を持つ人は基本的に幸運値高めな傾向が強い。誰だろう、振り返って見た少女は、なるほどこの子かと納得させられた。


「すみれさん、16なんですか! ちなみに誕生日っていつ?」

「私の誕生日は8月8日なんです。なので足して16です」

「へぇ~、8月8日。って、それ明日じゃないですか!」

「えっ、あっ、ほんとだっ!」

「自分の誕生日を忘れてたやつ!」


 ペーシェちゃんがつっこんで、お祝いしなきゃの合唱が始まる。

 すみれちゃんの誕生日。私も彼女にはお世話になってる。それに、すみれちゃんとエマちゃんには私の料理助手になって欲しいと密かな想いを抱いてる。

 よし、ここはよいしょしておくチャンス!


「自分の誕生日を忘れるほど、今日のサマーバケーションに力を入れてたのね」

「ですね。ランチもディナーも最高でした! イチジクと八朔のタルトも絶品!」

「え、ちょっと待って。それ私はなにも知らないんだけど」


 イチジクと八朔のタルトだと?

 想像しただけでお腹がすいてくるんですけど。


「ちなみに、こちらがイチジクと八朔のタルトを景色染めしたタペストリーです。超かわいいでしょ?」

「なにこれちょーかわいい! めっちゃ欲しい!」


 水玉模様のように配されたイチジクと八朔のタルト。背景の木製のテーブルの赴きが牧歌的な心情を誘う。

 綺麗、だし、めっちゃおいしそう!


「イチジクと八朔のタルトって残ってる?」

「すみません。あまりにおいしいので、全部食べちゃいました」

「くっ…………!」


 あと3時間早く到着していれば!

 久しぶりにこんなにも悔しい思いを抱いた。


 閑話休題。明日はすみれちゃんの誕生日。となれば、お祝いしてあげなくてはバチが当たるというもの。

 その想いは私だけじゃないみたい。


「すみれさんの誕生日! みんなでお祝いしよう。サマーバケーションのグルメメニューはすみれさんがホストなんですよね。だったら私たちがやらなくちゃ! みんなもいいよね?」


 フィティちゃんの提案に賛成の大合唱。

 当の本人は実に謙虚。嬉しいけれど、みんなは合宿で来てるのだからと遠慮する。


「でもでも、私はあくまでライラさんから依頼されて料理を作ってるわけで。なのでお礼だなんてそんな。気持ちだけで十分嬉しいです」


 そんな謙虚な姿がまた、彼女たちの好感を上げ、情熱に火を点ける。


「すみれは本当に謙虚なんだな。でも、少なくとも私はすみれの誕生日を祝うつもりでいる。私たちのために激辛料理を作ってくれた。それに、明日の朝食は私の故郷の料理を出してくれるんだろう? 今から楽しみで仕方ないよ」


 アナスタシアちゃんの心の鐘の音がみなの心に響いてく。

 あれ、でも朝食は点心じゃなかったっけ。あぁそうか。点心の中身にボルティーニ料理のエッセンスを加えてるということか。それはとても楽しみだ。


「ティカもです。サテソース、ちょーおいしかった! ティカたちのために、故郷の味を作ってくれたことに感動してます。懐かしい故郷の味。チキンステーキにもステーキにも絶品!」

「あ、ちなみに明日のお昼ごはんは夏野菜をたっぷり使った冷や汁。中身はお米ではなく、米粉を使ったフォーを予定してます。ハイジさんリクエストです」

「フォーッ!」


 フォー。米粉で作るもちもちつるつるの麺。バティック北部出身のカルティカちゃんのソウルフード。同郷のものがいると知り、フォーを提案したハイジちゃんのファインプレーである。

 それに加えて夏野菜を使った冷や汁。明日の楽しみがひとつ増えた。


「冷や汁は食物繊維、炭水化物、ビタミン、ミネラル、水分、塩分などなど、夏空で訓練するみなさんに嬉しい栄養満載です。それにお魚さんのおいしくて栄養満点の出汁を使うので、きっと初めて食べる人にも喜んでもらえると思います」

「もぉ~、そういうところなんですよっ! 私たちの体調のことまで考えて料理を作ってくれる。その真心が嬉しいんですっ! ので、明日のティーパーティーはすみれさんの誕生日パーティーです。みんなもいいよね?」


 フィティちゃんの言葉にみな大喝采!

 またまた明日の楽しみが増えてしまった!


 すみれちゃんはたじろぎながらも、自分の情熱がみなの心に響き、ありがとうと言ってもらえたことに感動する。

 抱いた気持ちが伝わって、感謝になって、ありがとうを返してもらえるだけで幸せ。お返しにと、感謝の気持ちを伝えようとしてくれる景色に打ち震えた。


 そうと決まれば明日のプランを練ろうと盛り上がる。

 しかし、そこに鬼が現れた。


「お前らさっさと寝ろ! 明日の教練で居眠りしたら許さんぞッ!」


 一度ベッドに入ったシェリーが鬼の形相でやってきた。そりゃそうだ。明日の朝から昼にかけて、寄宿生諸君は教練があるのだから。教官の眉尻が上がらないわけがない。

 ちなみに、グレンツェン組の子らのほとんどは既に就寝。早寝早起きが常の彼女たちは夜更かしするという習慣がない。

 ヘラさんとすみれちゃんだけは明日の朝の仕込みのために起きてただけ。


 さぁ、さっさと寝て、明日の朝食を楽しみましょう♪

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