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異世界旅行1-4 晴天穿つは人の業 1

魔剣。ヘラへのプレゼント。詩織の奇行。エルドラドの調査。しじまの大号泣、と色々場面が展開します。

前半はライラが暁に怒られます。

後半はシェリー主観で進み、仕事を終わらせていく回です。


異世界に来てカルチャーショックを受け続けてつっこむ元気がなくなっていくシェリー。

旅行はまだまだ続くのにこれから先は大丈夫なのか。




以下、主観【ライラ・ペルンノート】

 薄橙色の大地。

 雲ひとつない真っ青な空。

 遠近感がバグってしまう景色は凪の天候。

 見渡す限りなにもない。

 命の蠢きも、風の囁きも、空の自由を知る天井も。

 ここにはなにひとつとして見つからない。


 34層【なれの果て】。

 機械文明と魔法文明が高度に発達した末期の世界。

 自分の利権のためだけに、世界中を巻き込んで共倒れ。

 遍く願いを叶える黄金のランプが原因か。

 文明の発展をよしとしなかった神々の怒りか。

 進化と停滞の間で世界は押し潰されたのか。


 否。


 全ては人の欲のせい。

 人の身でありながら、神に成ろうとした強欲がもたらした災厄。

 ありもしない、きっと誰も見たことのないような超常を追いかけた末路。

 反面教師にもなりゃしない。


「マジでなんにもないな。本当に星の表面はこんな感じなのか。ここ一帯だけじゃなくて?」


 日除け布に身を包んだ雪子が空を見上げ、遠い遠い世界を思い出す。


「ドローンを飛ばして確認したところ、どこもかしこも砂漠と青い空。海もなく、川もなく、山や森も、木々もほとんどありません。ちょいちょいオアシスがあります」

「ドローンはあるのか。それってこの世界の技術?」

「浮遊要塞アルカンレティアの設計図から技術を拝借しました。遠隔操作できて、視覚を共有できる優れものです。おかげで危険な場所や数による面での探索が容易になりました。ドローンの考え方自体は私が元居た世界のものです。あぁそれと、地下に閉じ込めた水資源は世界中を循環していて、ところどころ経年劣化で穴が開いて地上に水が沁みだしてるんです。幸い、そのおかげで、オアシスが点在する状況になってます」


 我々が現れたスタート地点もそのひとつ。

 絵に描いたようなオアシスと、背の高いヤシ科の植物。サボテンなどなど、砂漠地帯に見られる草花が少しある。


「そういった理由で湧き出た水と、わずかとはいえ生き残った木々のある場所から再生を試みるわけだな。しかし暑い。遮蔽物がないとこんなことになるのか」


 さすがの騎士団長も根を上げる。私もできるだけ早く帰りたいと思う。


「そうです。少しずつ広げて、点と点を線で繋いで、ゆくゆくは面にしていく予定です。ロストテクノロジーのコンピューターが自動演算してくれるらしいので、そのへんは人間が考える必要はないみたいです」

「そんなウルトラスーパーコンピューターを開発できる技術と能力があってどうして…………世のため人のために使わなかったのか。巻き込まれた無辜の民の命が悔やまれるな」

「ええ、落ち着いたら石碑を建てたいと思ってます。見ず知らずの人々とはいえ、きっと誰にも供養されることはなかったでしょうから」


 それはぜひとも我々にも協力させてほしい。

 将来的に作物が育ち、メリアローザに供給されるなら、異世界間交流をしようとする我々にも無関係ではない。なにより、事情を知ってしまったら何かしてやりたくなる。

 あまりにも惨い最期。悲しい気持ちにならないなら、そいつは人間じゃない。


 手を合わせ、大地と空に拝。

 鎮魂の祝詞を心の中で唱え終えたら、本題に入るといたしましょう。

 ここに来たのは大地の状況を確認し、雪子が望むオフロードカーや、プロペラ機が稼働可能そうかを確認するためでもある。

 そしてもう1つ、アルマと頑鉄親方が情熱とノリで造り上げた最高傑作。【赫爍燦煌(かくしゃくさんこう)ストタラス・イグニス】と変異種(ドラゴノイド)であるエディネイの相性を確認すること。


 アルマの仮説によれば、火の単一のマナしか持たないエディネイは、自然のマナを内包した火属性一辺倒の赤炎剣と相性抜群のはず。

 もしもエディネイが魔剣に認められ、魔剣持ちと同様に自分の手足のように魔剣を扱えるようになるのなら、彼女の特異体質は天からの恩恵(ギフト)だと証明できる。

 なにより魔剣と人間の可能性が広がる。

 エディネイ専用のマジックアイテムも開発して、魔法的知的好奇心を満たすことができる。


「エディネイ、新しい魔法の可能性とやらを見せてもらおうかっ!」

「相変わらず、自分の欲望に忠実なんだから」


 ため息をついて呆れ、小首をかしげて感心する雪子の隣で、ふりふりフリルがはためいた。


「そりゃそうですよ。アルマの道は魔法の道。魔法の道は人々の幸福に繋がってます。ありとあらゆる可能性を模索し、検証し、実践しなくてはならないのですっ!」

「うん、まぁ、実際、マジックアイテムの類は俺と相性悪いから、手札と可能性が増えるのは願ったり叶ったりではある、が」


 が、と言葉を呑んでエディネイの怪訝な顔を見たアルマが喰らいつく。


「が? そのあとはなに? もしかして、アルマのモルモットとして利用されるようでなんか嫌とか言わないよね? エディネイはドラゴノイドの希望の星になるんでしょ。その礎になれるなら、命の1つや2つ、労力の億や兆くらい、へのかっぱでしょ!」

「桁ッ!」

「だがそこがいい!」


 シェリーはつっこみ、私は賛美した。アルマの前向きな思考は大好きです。

 調子に乗らないように諭す雪子は苦労人かもしれない。主に調子に乗らせようとする私のせいなんだが。


「そもそもアルマの言い方ね。安心して。アルマの言い方は問題有りだけど、魔法に関しての情熱と正義は本物だから。ちょっと無茶な実験に付き合わされるとかはあるかもだけど」

「ちょっとで済めばいいんすけどね」


 それはなんかそんな気がする。


「安心せぇえいい! 魔剣に触れたくらいじゃ死にゃせんわぃい! 魔剣のマナにそぐわぬ者が持ったら火傷したみたいな感覚になるだけじゃけぇよぉお!」


 頑鉄さん、朝っぱらから元気ですな。


「それ普通に嫌なんだけど。試しに私に持たせてみてちょ♪」


 というわけで、火のマナの適正がほとんどないわたくしこと、ライラ・ペルンノートが鞘から剣を引き抜いてみた。

 真っ赤に燃えるような煌めく刀身。

 魔力を帯びた剣は鞘から引き抜こうとすると熱風が零れだし、まるで溶鉱炉の前にでも立たされてるような圧力を放った。

 これが魔剣。しかも大自然のマナを極限まで叩き込まれた特注品。人間が持ちえる威力の魔力の練度を遥かに超えてしまっている。


 あ、これヤバいわ。


 全身を拝む前に反射的に鞘へ戻した。

 これ、下手したら持ち主が焼き殺される。

 比喩とかそんなんじゃなくて、マジでウェルダン。

 その証拠に体からは汗が吹き出し、柄を握った右手は水ぶくれになったときのような激痛が走った。

 見た目は何も起きてない。いつもの綺麗な手をしてる。外傷はない。魔力と神経にダメージが及んだ証拠だ。


 なるほど、結界と札で封印されるわけだ。

 魔力抵抗力の高い私の魔力を直に焼きにくるとは思わなかった。完全に油断した。

 魔力症を見たアルマが慌てふためく。


「大丈夫ですか!? こ、これはひどい魔力症です。ライラさんは撤退して病院に行きますか。まったくおすすめしませんが」

「なぜ病院がおすすめできないのかはともかく、安心してくれ。魔力症の応急処置は心得てる。これでも伊達に剣闘士や騎士団長はしてないからな」


 とはいえ、これはなかなかの重症。魔力症を中和するにも時間がかかりそう。仕方がないのでアルマには外から、自分は内側から魔力の中和作業を行うとしよう。

 いやしかしこれマジでクソ痛ぇわ。

 久しぶりに痛みで涙出たわ。

 こんなのは黒い魔力の流れる龍穴の調査に出向いて、魔法を放つ魔獣の攻撃を食らった時以来かもしれん。


 申し訳ないことにしばらく動けそうにない。

 動けそうにないので、私の近くで実験を行ってもらうことにしよう。


「それはいいんですけど、下手したら俺の手もライラさんみたいに火傷しかねないんすよね」

「やってみてから考えろ」


 アルマって意外と体育会系だよな。


「お前、本気で俺のことをモルモットとしか見てないだろ。えぇと、それで、念には念を入れてみんなから離れたところで剣を抜くんですよね。どのくらい離れればいいんすか?」

「儂が合図した時に止まってくれりゃあええけえのぉお! 間違って近くで抜くんじゃあねえぞぉお!」


 とりあえず、頑鉄さんからも少し離れたほうがいいかも。というか離れたい。声でけえよ。

 大声が終わったところでシェリーが私たちの常識を親方に確認した。


「魔剣って引き抜くときに周囲に影響を与えるんですか? 我々の世界の魔力の染色理論が正しければ、魔力の余波は術者の周囲にわずかに顕れると記憶してるが」

「それはのぉお! 儂の直感じゃぁあ!」


 まさかの直感。

 声の圧で後退りするシェリーは不意に耳を塞いだ。

 そしてご登場するは魔法好き好きアルマ・クローディアン。ここぞとばかりに饒舌になる。


「通常の魔剣はマナの脱色化をしたのち、その人のマナで染色します。しかし、エディネイの場合は既に魔剣のマナに色が付いてるので染色とは別物です。仮説が正しければ、マナの共鳴現象を起こすはずです。エディネイのマナを魔剣に吸わせて相性を確認します。その結果、相性が良い場合はマナの共鳴現象が発生する可能性があります。一般的にはマナの共鳴現象が発生した場合、今回の場合は純粋な火のマナがエディネイを爆心地としてドーム状に放出されます。そうなると、威力にもよりますが周囲一帯が焼け野原です。自然から得た超威力の練度のマナを持つ魔剣なので何が起こるかわかりません。というわけで我々は退避です。楽しみですね♪」

「儂も魔剣でのマナの共鳴現象を見るのは初めてじゃぁあ! 楽しみじゃのぉお!」


 楽しみなの?

 楽しみではあるが、危険が伴う楽しみにわくわくするとは、分かってらっしゃる!

 保守的なシェリーと雪子は違うみたいだけど。

 シェリーは持ち前の社交性で自らの感情を殺す。


「ほんと、生きがいのある職人を見るのは胸が躍りますね」


 雪子はシェリーの顔を見てすかさずつっこむ。


「そのわりには顔が引きつってますけど」


 自分たちで行う楽しい実験ならともかく、今回は他人のエディネイにやらせようっていうんだから気が気じゃない。何が起こるかわかりゃしない。ってか、よくこんな案件を受けてくれたな。

 原因は仕事をしろと迫った私だから口には出さないけどね。

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