静寂に依りて、心躍る 4
以前に見せてもらった、スパルタコさんのズボンを真っ二つに割った魔法【理不尽世界】。これが魔法として確立された理論なのか。はたまた固有魔法由来のものなのかは分からない。
もしも前者なのだとしたら、アルマのユニークスキルで複写できるかも。
ペーシェさんと同じ魔法を使えるかもしれない。
とにかく魔法が使いたいアルマ。なんとかしてもう1度、じっくりともう1度見せていただきたい。
そこで【パレス&ミステリー(仮)】。『理不尽』ということは、ミステリーの何かしらに応用できるかも。
応用可能ならば、きっと魔法を使ってくれるに違いない。
魔法を使ったなら、アルマのユニークスキルで複写できるかもしれない。
複写できれば、ペーシェさんの魔法を使えるようになるかもしれない。
ふふふ…………我ながら恐ろしくクレバーな計画ですな。ふふふのふ♪
日も暮れ始めて茜空。
アラヴァミンマイはおねむの時間ということで、我々も解散とあいなりました。
いやぁ、実に濃密な時間でした。新企画の相談は、こういう感じの内容をやりたいな~、といった具合だったのに、妄想に妄想が膨らんで、かなり具体的な形が出来上がったのではないでしょうか。
エリザベスさんもノリノリで対応してくれた。グレンツェンにはハイラックスで開催されるクリスタルパレス国際芸術祭に出店する建築家チームがいない。
その代わり、ベルン支社に仲のいい同僚がいるということで、さっそく連絡をとってもらった。
話しを聞くなりアルマの連絡先を渡すことに。これは相当な手ごたえです。
後日、企画書を渡して精査してくれるとのことです。やったね♪
〜おまけ小話『嘘のようなほんと』〜
アルマ「ペーシェさんは選ばれたる人なんですよ。もっと自信を持って下さいっ!」
ペーシェ「ぶっちゃけ、自分の魔法が他の人と違うって分かった時から魔法から離れたんだよね。お父さんもさ、あたしの魔法に合わせた教育ができない、って。バティックの英雄がだよ? そんなの、自分じゃどうしようもないじゃん?」
すみれ「はわわわ…………ペーシェさんが落ち込んでる。なんとかしなくちゃ!」
アルマ「とりあえず、すみれさんはペーシェさんをハグして安心させてあげてください」
すみれ「分かったっ! はぎゅっ!」
ペーシェ「ふわぁ~~~。おちちゅきゅ~~~♪」
アルマ「さっきも言いましたが、ペーシェさんは本当に素敵な女性です。困った時はいつも助けてくれます。博識で、優しくて、ユーモアに溢れる素晴らしい人です。人生は魔法だけじゃありません。ペーシェさんが作ったフライヤーだって最高でした。実際、それがきっかけでお仕事の依頼が来たんでしょう?」
ペーシェ「そうっ! あれね、めっちゃ自信作だよ。あっ、そういえば。前にグリレで働かないかって、お母さんから電話来たやつ。後から聞いたんだけど、あたしが働くならすみれも働くって話しだった?」
すみれ「うん、そうだけど、ペーシェさんが断ったから私も断った。パーリーもあるし、講義もたくさんとったから」
ペーシェ「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁッ! やられたッ! 電話の時はすみれが働くって聞いてねぇッ!」
アルマ「えっ!? そうなんですか? これはラムさんが聞いたら怒りそうなやつですね。きっとわざと隠したのでしょう……策士です」
ペーシェ「せっかくすみれと一緒にいられるかもしれない時間を…………ッ! 今度会ったら闇魔法をお見舞いしてやる。訓練してないから、何ができるか分からんけどっ!」
ハティ「それはダメ。ペーシェが本気で魔法を使ったら、世界が滅ぶ」
アルマ/ペーシェ「「えっ!?」」
ハティ「?」
アルマ「世界が滅ぶって……本当ですか?」
ハティ「ほんと」
ペーシェ「驚愕の事実なんだけど」
ハティ「魔法を使うなら訓練しよう。あーちゃんが闇魔法を使える」
ペーシェ「あーちゃん――――黝って人ですよね。ご教授いただけるものなのでしょうか」
ハティ「大丈夫。あーちゃんはとっても優しい」
黝「はぁ~い。呼ばれたのでやってきました~☆」
アルマ「あ、黝さんだ。お久しぶりです」
ペーシェ「なんかしれっと登場した。闇魔法の使い手って、本当なんですか?」
黝「それは本当です。ちなみに、近接戦も遠距離戦もこなせます。どちらが良いでしょうか。貴女は才能に恵まれているようですから、近接戦も遠距離戦も大丈夫そうですね」
ペーシェ「才能があるって、まじすか。どっちかっていうと、自分の魔法と上手に付き合っていく方法を知りたいです」
黝「それならもう大丈夫ですよ。闇魔法を行使できて、なおかつ、理性を保っているなら、それは自分のマナを制御しているという証拠です」
ペーシェ「ま、まじすか…………嬉しいけど、実感がない」
黝「まぁそういうものですよ。だから安心してください♪ でもいざという時のために、戦う力は身に着けておいたほうがいいかもしれませんね。闇魔法に限らず、力在る所に問題や障害はつきものですから」
ペーシェ「それは、たしかにそうかも……」
すみれ「魔法の特訓ですか? それならぜひとも、私にもお願いします。もっと魔法が使いたいんです。主に料理関係で。特に、マーリンさんのような炎の芸術家になりたいですっ!」
ハティ「炎の芸術――――野菜炒め! 頑張ろうっ!」
ペーシェ「すみれと一緒なら――――もう何も怖くないっ!」
アルマ「なんか、とりあえず元気になったみたいでよかったです」
妄想に妄想が膨らんで想像以上に進展したアルマの企画。強力なエンジンを獲得したので走り出すだけ。あとはブレーキとペダルとハンドルをとりつけて、きっちり操作するだけです。これがなかなか難しい。頑張れアルマ!
次回は、ベレッタ主観のストーリーです。
ベルンにある研究機関レナトゥスのユノの研究所に助手として赴く彼女。グレンツェンを離れる前に親愛する義兄の恋のキューピッドになるため粉骨砕身します。
しかし、恋愛に疎い義兄。ぽんこつなペーシェ。かみ合わない2人をなんとか引き合わせようと頑張るベレッタ。2人の距離は縮まるのでしょうか?




