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うさぎと酒 3

 ハティさんは夫婦雪うさぎの血も肉も骨すらも全て平らげ、感無量と言わんばかりの幸福のため息をついて手を合わせた。

 まるで神聖な儀式を見ているかのような心地にさせられる。

 ひと息ついて、当然の感嘆がハイジさんの口から漏れた。


「ハティさん…………本当によく食べるねぇ」

「おいしかった」

「あ、うん。それはよかった」


 言葉もない。真の感無量である。食べたほうも、見てるほうも。


「それでこの子どうするの? いまだ離れる気配がないんだな」


 ルーィヒさんはハティさんの肩に乗ったうさちゃんの背中をもふもふと撫でながら、うさちゃんの両親の恩人に言葉を投げる。


「えっと、できれば私たちと一緒に暮らしたいって」

「まじでっ! それじゃあ名前を決めなくっちゃ。かわいい名前にしなきゃね!」

「それじゃあ…………うさぎ」

「ハティさん、それ本気で言ってるの?」


 微動だにしなかった子うさぎは嫌そうなのを我慢してるのか、プルプルと震えて目をつむる。

 ハティさん以外の誰も彼女と会話はできないけれど、これはなんとなく分かった。

 すんごい嫌そう。


 各々が好きなようにかわいい名前を提案するも、雪うさぎの子供はいまいちしっくりくるものがないようだ。かと言って、本人もどれがいいかと言われると答えられない。

 人間に気に入られる名前がいいそうだが、自分では判断ができないのだ。

 ならどうするかという話し。つまるところ直感で判断するしかないのである。


 名前、名前かぁ。ペットって飼ったことないからどうやって名付けるものか分からないなぁ。

 自分の子供に名前を付けるってなると、何か願いを乗せるものだというけれど、それじゃあ自分の名前ってなんで【すみれ】なんだろう。

 花言葉が由来なのかな。

 どうなのかな。

 困った時はペーシェさんに相談だ。


「ねぇねぇ、ペーシェさんってなんでペーシェって名前なの?」

「は、ちょっ! なんでそこ気になっちゃうかなぁ~。え~っと、それはねぇ」


 言い淀むペーシェさん。酔って気分がよくなったローザさんが前に出た。


「ペーシェの名前は彼女のお父さんが

「はいはいローザはマジに黙っててね。黙ってて本当に!」


 悪戯な笑顔でペーシェさんを困らせるローザさん。

 2人は小さい頃から仲良しで気が合うらしく、よく一緒に遊びに出掛ける仲なのだ。

 なにやら言い争いをする2人の間を割って、ルーィヒさんがペーシェさんの名前の由来を教えてくれた。


【ペーシェ】とは【桃】の意味。桃みたいにかわいらしい子に育って欲しいという願いが込められているというのだ。

 感心すると同時になるほどとうなずいて、肩に乗った雪うさぎを両の掌に乗せて見つめてみる。

 それにしてももふもふだ。

 ちっちゃくてもふもふでうさうさでかわいい。

 ちっちゃな肉球の感触もぷにぷにしていてくすぐったい。

 見れば見るほどかわいさほとばしるつぶらな瞳。

 雪みたいに真っ白な体毛がふわふわしてる。

 今日から新しい家族になるのかぁ。

 わぁ~想像しただけで幸せになっちゃうな♪


 頭を撫でながらかわゆいもふもふで幸せになっていると、遠くで小気味よい破裂音が耳に触れた。それは新しいワインのコルク栓を抜いた音。

 ポンッ。

 と頭を撃つそれは私の脳に閃きをもたらしたのだ。


【ゆきぽん】


 ゆきぽん。

 ゆきぽん。

 ゆきぽん。

 脳内で連呼して言葉に出すと、それを聞いたみんなが波のように連鎖して合唱する。

 たくさんのサムズアップを集め、雪うさぎの子も響きがいいと太鼓判。

 この子の名前はゆきぽんで決定です!




~おまけ小話『国が違えば』~


アッチェ「マジで飼うのか?」


ハティ「うん。もふもふでかわいい。それにひとりぼっちにはできない」


アッチェ「ハティがそう言うならいいけど」


ティレット「ちっちゃくてもっふもふでかわいい~♪ アイザンロックでは雪うさぎは飼われていないのですか?」


アッチェ「とんでもない! そいつは人間を除けば、アイザンロックの生態系の頂点だ。飼いならすなんて考えたこともないよ」


ティレット「生態系の、頂点? うさぎが、ですか?」


アッチェ「他の国では違うらしいが、アイザンロックの雪うさぎは超強いんだ。狂暴ってわけじゃないし人を襲ったりしないけど、目を合わせないようにはしてるな」


ペーシェ「完全に害獣扱いじゃないですか。こんなにかわいいのに」


アッチェ「見た目に騙されるな。こんなに小さいが、かなり賢い。特に脚力が尋常じゃない」


ガレット「かわいくて賢いなんてとってもキュートじゃないですか。よしよぉ~し。もっふもふもふ~♪ ひゃあ~かわいい~♪」


ルーィヒ「ちょ~! ボクにも触らせて欲しいんだな~♪」


アッチェ「信じられんくらい大人気だな。ゆきぽんもまんざらでもない様子。まぁ共存できるならそれでいいのかもな」


スパルタコ「はっ! かわいいうさぎを抱いてれば、女の子に大人気!」


マーリン「人気になるのは貴方じゃなくて、うさちゃんだけだと思うけど?」

手の平サイズの小動物ってなんであんなに可愛いんでしょう。

ハムスターしかり、猫しかり。作中に出て来た5cmくらいのうさぎなんぞ存在したらマジヤバいですね。

一生もふもふしていたいです。癒されたいです。


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