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水玉のようにカラフルな 1

グレンツェンで居酒屋を営むラム・ラプラス。彼女は危機に直面していた。それはヘラ市長が推進するヘルシー文化。高たんぱく低カロリーの世界とは正反対の世界で生きていたラム・ラプラス。このままでは濃い味大好きな自分の好みを否定されて店が潰れてしまうかもしれない。

一縷の望みをかけ、彼女はヘルシー文化を肌で感じて育ってきたであろう、小鳥遊すみれのホームパーティーへいざ出陣!

バルの経営者は自分の店を守ることができるのだろうかっ!



以下、主観【ラム・ラプラス】

 店休日を利用して友人に連れられるまま、買い物客がひしめくフュトゥール・パーリーへ赴いた。

 住宅街のど真ん中に建つスーパーマーケット。人々の生活を根底から支える施設のひとつ。

 新鮮な野菜から始まり、鮮魚、肉、加工食品、冷凍食品、お菓子、総菜、日用品。なんでも揃う日常に、今日は非日常が広がっている。


 主役は小柄な女の子。身の丈よりも巨大な包丁を、それよりも大きな魚にあてて捌き切る。

 小柄な体を全力で使い、全長3mはあろうかという魚を見事に解体してしまった。


 グレンツェンでは珍しい、いや、きっと史上初めて開催されるマグロの解体ショー。

 動画で見たことはあったけど、目の前で見たのは初めて。

 小気味良く元気な掛け声と観衆の目を意識した体捌きで集まった人々の心を掴む。

 その様を見る隣人は彼女と知り合いらしく、三色髪の少女と楽しくマグロトークを繰り広げた。

 一緒に来たのに全然話しについていけないので他人のような感覚だ。

 魚よりお肉派の私にはまだまだ先の境地。しかしそうも言ってられない。私と妹で経営している【炙り(グリレ・)()燻製(・フューマージュ)】に危機的な兆候が見え隠れしているからだ。


 我が愛しの【炙り(グリレ・)()燻製(・フューマージュ)】。グリルバルの一種で料理とお酒を楽しむ居酒屋。

 開店当初は大人の社交場というコンセプトのもと、カウンターバーがあるだけだった。

 人気に後押しされてファミリー向けのスペースも開業。ありがたいことに経営は順風満帆。黒字経営が続いている。

 じゃあ何に頭を悩ませているかって?

 世の中の雰囲気っていうか、人々の嗜好の変化ってやつですよ。


 ヘラさんを筆頭に、ヘルシー文化が根付きつつあるグレンツェン。

 カロリー激高のグリル料理にとっては向かい風なのです。おいしい=高カロリー。そこにお酒が加わるのだから火の車。アルコールに引火して火の車。

 引火してくれるならまだしも、近年の傾向でいくと、そのアルコールにすら引火しない場合がある。若者のアルコール離れってやつですよ。


 歴史的にワインやビールの生産が盛んな欧州においてもワイン離れが進みつつある。

 それを根拠に、ワインの国内消費量が右肩下がり。このままではグリルバルの存続が危うい。

 単純にソフトドリンクに移行すればいいじゃんって話題も上がるけど、それじゃあバルじゃないでしょって話しでしょ!


 そんなわけで、頼れる友人たるマーリンさんの紹介で、ヘルシー文化最前線に生まれた小鳥遊すみれ率いる、かわいいちびっこ軍団ホームパーティーにお邪魔した次第です。


「彼女が姉のラム・ラプラス。隣が妹のプラム・ラプラス。【炙り(グリレ・)()燻製(・フューマージュ)】の経営者。最近のヘルシーブームに合わせて、味がしっかりしていてヘルシーな料理を探求しているの。そこでアジアンテイストな料理を知りたいってわけ」


 マーリンさんに紹介され、一礼。


「初めまして、【炙り(グリレ・)()燻製(・フューマージュ)】で店長をしています。ラム・ラプラスです。素晴らしいホームパーティーに参加させていただき、誠にありがとうございます」

「こちらこそ、わざわざのお運び、ありがとうございます。おいしい料理をいっぱい用意してますので、ぜひとも楽しんでいって下さい。アジアンテイストの料理ということで、参考になるかわかりませんが、いくつか用意させていただきました。お力添えできればと思います」


 三色髪の女の子。この子たちはうちの店で何度か見たことがある。

 一度見たら忘れられない。ロック&キュートな容姿を2度見もした。地毛だと知って驚いた。

 隣のふりふりフリルのツインテ美少女も記憶に新しい。


「グリレ・エ・フューマージュは何度か利用させていただきました。おしゃれな雰囲気とお肉とチーズがとってもおいしいです。燻製のお野菜も大好きです」

「チーズっ!?」


 遠くで巻角の女性が振り返る。チーズが好きなのかな?


「うちの店に来てくれてありがとう。今日はお店でも人気の料理を持ってきたから、楽しみにしていてね」

「やった~♪」

「わっしょいっ! あのねあのね、みんなですっごく頑張って作った料理があるの。絶対おいしいからっ! 楽しんでいってねっ♪」


 かわいらしい双子がぴょんぴょん飛び跳ねる。

 かわいい。なんて愛らしさだろう。

 我が妹も負けてはないぞ?


「わぁ~、それはとっても楽しみです。どんな料理なのですか?」

「それはね~~…………まだ内緒なの♪」

「わぁ~気になるぅ~~♪」


 本日の参加はグリレ・エ・フューマージュからわたくしこと、ラム・ラプラス。

 親愛なる妹のプラム。

 常連客であり、とある学園で料理講師をしているマーリンさん。

 フュトゥール・パーリーで総菜コーナーを担当するレーレィさんとグリム。

 シェアハウスをしているすみれ、キキちゃん、ヤヤちゃん、アルマ、ハティさん。

 お隣さんですみれたちと仲良しのヘイズマン一家。

 ティレット嬢の幼馴染のレレッチ。

 ハティさんの家族のエリストリア、ラクシュミーちゃん、双子の孕子(ようこ)ちゃん、孕伽(ようか)ちゃん。

 キキちゃんとヤヤちゃんが双子なことから、双子が2組というレアケース。

 これは滅多にお目にかかれませんな。


 どうやらキキちゃんの言う『みんなで頑張って作った料理』というのは、ちびっこ軍団全員の総力を結集して作られた兵器のようだ。

 その証拠に、早く表舞台に出したいとそわそわしてるではありませんか。くっかわっ!


 まず最初に出てきましたのはヘイズマン一家がみんなで作ったというツナサラダ。

 ガレットとアルマが漁師町にお邪魔した際、マグロが大漁だったのでお土産にいっぱい貰ってきたものをオイルサーディンに加工。サラダに和えて大粒の天然塩を振りかけたひと皿。

 フレッシュサラダの緑、オイルサーディンの白、パプリカとトマトの赤。キラキラと輝くダイヤモンドソルトとオリーブオイルのコントラストが見事。

 見た目は百点満点。きっと味も百点満点。のっけから期待させてくれるじゃありませんか。


 次に出てくるのはちびっこ軍団の合体料理――――と思ったけど、スープ料理なので乾杯が終わったあとに用意してくれるということ。

 あつあつの状態でテーブルに並べたいというプロ意識。

 ちびっこ軍団と侮っていたらとんでもない目に合いそうだわ。


 乾杯の合図は伝統の白ワイン。我が家自慢の、というか、父が経営しているワイナリーで作られた物。

 いつものことなのだけれど、実家で作った物を他人に持ち出されると、なんだかモヤっとした気持ちになる。

 だってそれってうちで作ってるやつで、それを他人に出されたらなんか虎の威を借りる狐された気がするんだよね。

 仕方ないことなんだけど。

 まぁそれだけ自慢の白ワインということで、それだけ多くの人に愛されてるということで、少し誇らしい気持ちにならないこともないですが。


 未成年とお酒がダメな人にはノンアルコール。つまり私の敵!

 という意識は隅に置いておいて……ノンアルコールの提供はレレッチ。

 2Lのガラス容器に入ったそれは、宝石箱と呼ぶ以外に言葉がない。

 輪切りにされたキウイフルーツ。

 紫色に輝くブルーベリー。

 ルビーのようなストロベリー。

 太陽のようなアップルマンゴー。

 疲れた体に嬉しいオレンジ。

 緑、紫、赤、オレンジ、黄色。ガラス瓶を揺らすと、スノードームの雪のようにゆらゆらと落下していく。

 太陽の光を受けてキラキラと煌めく姿にうっとりとしてしまう。


 果物の芸術に魅入られたラクシュミーちゃん。レレッチから容器を奪いとって自分で万華鏡を動かそうと頑張る。

 しかし5歳の少女に2Lの容器は重すぎた。落とさないように必死に両腕で支えるも、これでは万華鏡が楽しめない。


 困っている少女の後ろから金色の巨人が手を差し伸べる。

 落とさないように支えてあげて、少女の心を尊重するように少しだけ手を貸した。

 落とさないように支えるだけ。操縦席のハンドルは少女に握らせる。

 これってすっごい大事なことだと思います。

 こういう時って、ついうっかり大人が主導してしまいそうなこと。ないしは場の空気を優先させて大人の都合を押し付けてしまいがち。

 だがここはグレンツェン。学術都市。子供を自由に生き生きと育てる学びの場。

 それは講義に限ったことではない。日常の生活全てに於いて行われる共通言語なのだ。


 右にゆらゆら。左にきらきら。

 新しい発見と感動に打ち震える少女のなんと希望に満ちた瞳だろう。

 フルーツティーの容器を光にかざして見てるだけ。それだけで喜びを覚える。感動できる。なんて素敵な世界なのだろう。

 こんな世界を私も作っていきたいです。

 あぁ、彼女の将来が楽しみです♪


 癒される。夢中になる少女の姿に癒される〜♪

 うっとりしてると隣から巻角の魔族の女性が現れた。


「ごめんなさい。ラクシュミーはひとつのことに集中すると没頭してしまう子なんです」

「いえいえ、ケースバイケースとはいえ、大人の都合を子供に強制することはよろしくない教育ですから。むしろ眼福です。ねぇ?」


 全員、満面の笑みで首を縦に振った。そりゃそうでしょ。子供が意欲的に集中する姿というのは生き生きしているもの。

 その姿は純粋な本心から出る。本当に好きなことに没頭する時間っていうのは幸せなのです。それは私にもよくわかります。


 かわいすぎていつまででも見てられるわぁ~。

 それに、パーティーを進めたいだけならいくらでも方法はある。それを私が見せてあげましょう。

 私の中に渦巻く欲望も同時に叶えられる。

 なんという一石二鳥。

 レレッチのフルーツティーさまさまですわ。


「ラクシュミーちゃん、すっごくキラキラしていて綺麗だね」

「うんっ! みどりいろとー、きいろとー、あかいろがね、すっごくきれいっ! わたちね、みどりいろのがすきっ!」

「『わたち』ってかわいいッ! っとと……これね、果物がいっぱい入ってるんだけど、フルーツティーって言う飲み物なの。すっごくおいしいんだよ。それに果物も食べられるの。きっと甘酸っぱくてすっごくおいしいよ」

「えっ! おいしいの? たべたいっ!」

「よし、それじゃあコップに注いであげるね」


 そう、興味を持たせるようにして促すのです。これってすっごく大事なことだと思うんですよ。

 差し出された容器を手に取ってコップに注ぐ。最後にお玉で果物を添えてフルーツティーのできあがり。

 キウイフルーツが好きなそうなので3枚入れてあげました。

 そしたら弾けるような笑顔でありがとうって言ってもらえた。めっちゃかわいい。妹にしたいっ!

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