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ノブレス・オブリージュ 4

 話題は占いの話しに移る。女子ならみんな大好き占い話し。

 なんでこうも占いという単語に魅力を感じてしまうのか。

 未知の不安を取り除いてくれるからか。

 覚悟が幸福をもたらしてくれるからだろうか。

 当たるのか外れるのかドキドキしちゃうからでしょうか。

 具体的に考えると、特にこれといった理由は思い当たらない。

 思い当たらないけど、占いってなんかいいよね。


 暁さんの知り合いにも優秀な占い師がいるらしく、ダンジョンに出かける際にはどんな荒くれ冒険者も彼女の助言を聞いてから旅に出かけると言う。

 その的中率たるや百発百中。生ける守護神のような存在として尊敬されている。

 しかも占い師の隣には、悪い結果を緩和してくれるアイテムをその場で作ってくれる人材までいるというのだからすさまじい。

 会ってみたい。たいていの開運グッズ的なものは眉唾物ばかり。

 だけど本物の占い師が認める本物のアイテムメーカーなら信憑性は高い。


 彼女はそればかりにとどまらず、宝飾デザイナーとしても名を馳せているという。

 努力家で謙虚な振る舞い。こうしたいという願望を貫くために、宝石のカッティングを請け負う職人を死地に追いやるほどの無茶振りを繰り出す。

 そこがまたギャップ萌え。と、暁さん。無茶振りクイーンの愛称で親しまれているのだとか。


「装飾品ですか。下品な話しかもしれないんですけど、1つおいくら万ピノくらいするんですか? (ペーシェ)」

「あたしが今してるヘアゴムで3000シエル程度だったかな。て言っても、これは華恋から貰ったものなんだが (暁)」

「基本的に石の個数やサイズ、組紐の種類、等級、カッティングの技術料、華恋さんの気分、諸々の事情を考慮して値段を決めているそうです。私のヘアゴムはオーダーメイドしてもらって6000シエルでした。スカサハさんとお揃いで作ってもらったので、実際は倍以上の値段だそうです (桜)」

「最後の気分次第っていうのは? (ペーシェ)」

「体感ですが、誰かの為とか恋人との関係がうまくいきますようにとか、華恋さんの琴線に触れた時はお安くしてくれるみたいです (桜)」

「安産祈願のお守りとかだと、めっちゃ気合い入れてくれる上に激安で効力も抜群で助かってるって評判だな。誕生月の石を基本に、親が子に最も願う想いに応える石を選んで、って。オーダーメイドで作ってくれるの。そういう時の華恋はめっちゃ生き生きしてる (暁)」

「それは凄い。でも中には嘘をついてる人とかいるんじゃ…… (ペーシェ)」


 転売とかされたらたまらんのでは?

 そういうことを先に考えてしまうあたしは女子力が低いのでしょうか。

 あたしの言葉を桜が否定してくれる。


「そういう人はウララさん、占い師が看破するので大丈夫です。そうでなくても、嘘をついて手に入れたアイテムに力は宿りません。それどころか、持ち主をのっぴきならない状況に追いやる可能性があるから、絶対に嘘をついてはいけないとウララさんもおっしゃっていました。そうなるとある意味、力ある物に頼らなくてもよい生活というのが、最も幸福なのかもしれませんね。まぁそんな人は稀有なので、人はみな何かしらに縋らざるをえないのでしょうが」

「ずいぶんとまた大人びたことを言う。ところで、石と言っていたが、それは本物の宝石なのか。暁が宝石の採掘権を持ってるから、それを買い取ってるのかな?」


 ライラさんが桜のポニテの付け根にきらりと輝く黒い石を見て疑問を投げた。

 黒と黒と白紫。同系色でのコントラスト。ワンポイントで変化をくわえた逸品。あたし好みの色合いですな。


「お察しの通り、エルドラドで採掘された宝石を使っています。例えば、私のものは黒曜石(オブシディアン)とオニキスを交互に入れてもらった特注品です。1点だけ幻影紫水晶(ファントムアメジスト)を入れてもらいました」

「ガラス質の黒曜石と鉱石のオニキス。よく見ると同じ黒でも見え方が違って、なかなかどうして面白いな。ワンポイントで白と紫のアメジストが入っているところもセンスを感じる。しかしこれが約5000ピノ。宝石にはあまり詳しくないが、かなり安いのでは?」

「値段だけなら超お買い得です。ということは、華恋様の琴線に触れる何かがあったのでは?」

「えっ、ぐっ……それは…………」


 鉱石が大好きな恋バナ大好き女子が乱入してきた。フィアナさんの鋭い感性が、桜の苦い記憶を呼び覚ます。

 ここぞとばかりに暁さんがほじくりかえした。


「これを揃いで作った相手も、桜と同じで綺麗な黒髪と黒い瞳なんだ。ちなみに黒曜石とオニキスは全部で24個。ファントムアメジストが1個だけってのも理由が

「それ以上は勘弁して下さいっ! もう昔の話しですからっ!」

「昔の話しって、つい数か月前のことじゃないか」

「強力な恋色の波動を感知っ!」

「なんか目覚めたっ!?」


 リリスさんが覚醒。

 桜が逃げる。

 追いかけるリリスさん。抱きしめて連れ帰ってきた。


 なんでも、想い人に贈った品だと言うことだが、想いを打ち明けるも彼女の胸には届かなかったそうな。

 成就した恋の話しならともかく、失恋話しを語らせるのはあまりにも酷。

 ここは無難な言葉だけを並べてお酒を注ぐといたしましょう。


 はてさて、人の振り見て我が振り直せと言いますか、あたしの恋にもなっていないような、ちょっと気になるレベルの私情は時々は彼を見つめるのですけれど、彼はあたしのことなど見る気もない。

 アプローチをかけてるわけではないから仕方がないのですけれどね。

 でもきっかけとかなんかあったらいいなと思ってます。

 特大イベントはサマーバケーション。

 それまでには気持ちの整理をしておかなくちゃ、ね。




~おまけ小話『ユニークなスキルの話し』~


暁「ずいぶんとベレッタとペーシェにアタックをかけてたな。2人は本当にいいやつだと思うけど、リリスが執拗に口説き回すあたり、友達になりたいとかそれ以外の事情があるのか?」


リリス「2人ともとってもいい人ですよ。建前ではただただ異世界のお友達が欲しいだけです。他の方々と分け隔てなくっ!」


暁「建前って言ってる時点で本音は別にあるということじゃないか」


リリス「みんな個性的な固有魔法(ユニークスキル)をお持ちですよね。その中でもベレッタさんとペーシェさんのものは次元が違います」


ヘラ「それって私も聞いていい話し?」


リリス「個人的には異世界の橋渡しをする予定のヘラさんと暁さんには知っておいて欲しい話しです」


暁「ッ!? リリスがユニークスキルの話しを切り出すなんて珍しいな。それほどのことなのか?」


リリス「はい。下手をすると世界が滅びます。どちらも勇者、あるいは魔王と呼ばれる存在になりうる素質十分です」


暁「さらっとヤバいことを言うな」


リリス「事実ですから」


ヘラ「もしかしてベレッタちゃんのは、魂に関する代物だったりする?」


リリス「ご明察です。ということは何かしらの現象に遭遇したということですね」


ヘラ「ええ、見ただけで、触れただけでキキちゃんの魔力の最大容量が分かったって言ってたわ。魂の色も視えるって。それって魂を直視できないと無理でしょ?」


暁「魂を直視できる? 本人は自覚があるんですか?」


ヘラ「無いみたい。だから他言無用にするよう釘を刺してる」


リリス「ご慧眼です。魂を直視できるということは、魂に直接語り掛けることができるということです。それは催眠術や洗脳なんて生ぬるいものとは別次元。自分の言の葉を相手の魂に直接、接触させることができるのですから。名付けるなら魂の(コンヴィー・ワ)語り部(ンズ・フィーリング)。想いを伝える。と言ったところでしょうか」


暁「素晴らしい名前だが、事実は驚嘆に値するな」


ヘラ「………………」


リリス「? 精神状態にもよりますが、魂に直接語り掛けることができるということは、たやすく相手の精神を変質させることができる可能性を秘めているということです。魂の防殻を無視して、魔力、精神の根源である魂に力が及ぶのですから。まぁベレッタさんが純粋で素晴らしい魂の持ち主であることは、彼女と関わって確信が持てたので安心と言ったところですね」


暁「さすが学術都市グレンツェン。そしてさすがヘラさん」


ヘラ「直接的に教育したのは優秀なシスターたちと神父様。それから子供たちを始めとした周囲の人間によるものだから。私はその1人に過ぎないわ」


暁「それでも凄いですよ。尊敬します。さて、ベレッタは分かった。ペーシェのは?」


リリス「アルマちゃんの話しでは、ユニークスキルのことを特異な魔法、理不尽(コメディック・)世界(ホラー・ワールド)と言ったそうです。あらゆる対象や空間に対して行うユニークスキルで、あらゆる動作や現象を理不尽に、自分の思うがままに変質させることができる激ヤバ☆ユニークスキルです。ちなみにその魔法でスパルタコさんのズボンを真っ二つにしてパンツ一丁にしたとか」


暁「――――――自分の思うがままに……って、魔王も裸足で逃げ出しそうだな」


ヘラ「それで彼女は魔法の話しになるといつも話しを逸らそうとするのね。バレないように」


暁「なるほど、その様子だと、自分の魔法がヤバいものだと言うことは自覚しているようですね」


リリス「アルマちゃんも彼女の魔法を自分のユニークスキルで習得できないか試そうと、なにかとけしかけようとしているみたいです」


ヘラ「ユニークスキルって、魔法を、魔術回路を解析できるようになると使えるものなの?」


アルマ「モノにもよりますね。魔法は属性の相性や本人の性格、魔術師自体の練度などなど、先天的なものから後天的な理由で向き不向き、使用可不可などありますが、ユニークスキルはその人の魂に刻まれた魔法、つまり魂と同義です。魔術回路が成されているとはいえ、使えるかどうかはやってみないと分かりません。ヤヤちゃんの見れば(ビューティフル)分かる(・ビュア)はヤヤちゃんにしか使えない魔法なので、アルマの魔法の祝福ブレス・オブ・マジックで転写することも使用することも不可能でした。しかし病院の院長さんの記憶の(リザレクション)蘇生(・オブ・メモリー)は、その魔法を教えてもらえれば誰でも使えます。この差異についても目下調査中でありますっ!」


ヘラ「なるほど。目下調査中なのね。ところでどこから聞いてた?」


アルマ「アルマがペーシェさんが魔法を使うのをけしかけているあたりからですが、聞いてたらまずかったでしょうか?」


リリス「そこからなら問題ないわ。でもこの話しは他言無用と言うことで。えいっ!」


アルマ「ひょーはいれふ。ごっくん。バターで炒めたリンゴってめっちゃおいしいですよね。ケビンさんに作ってもらって初めて食べたんですが、いろんな料理に応用できそうです」


ヘラ「ちなみに彼は毒を食べて体内で血清を作れるんだけど、あれもユニークスキル?」


リリス「それはユニークスキルですね」


暁「なにそれ、めっちゃ欲しい人材」


アルマ「そうなると、また病院に変人が増えますけど?」


暁「大丈夫。既に手遅れだからなっ!」






リリス「――――――う~ん、この様子だとペーシェさんの他の(・・)ユニークスキルについては誰も気付いてないみたい。不用意に教えるのもかえって逆効果かしら。ユニークスキルの2つや3つの複数持ちってだけで大騒ぎなのに、まさか10個も持ってる人がいるだなんて、想像だにしないものね」

なんだかんだで魔法の話しで間を繋いだペーシェ。得意でなくともきらきら魔法の話題でなんとか乗り切ることができました。

そしてベレッタとペーシェの固有魔法 (ユニークスキル)が暴露されました。魂の防殻をすり抜けて直接、魂に触れることのできるベレッタ。全てを理不尽に塗り替えることのできるペーシェ。しかもペーシェにいたってはユニークスキルが十個というチートキャラです。チートっぷりが発揮されるのはまだ少し先ですが、日常系物にあるまじきしょうもないバトル展開を予定しているので、こうご期待下さい。


ユニークスキルはそのキャラクターの性格 (魂)に依存するので、そのキャラクター独特の能力が発現します。ということにしているので、そのキャラクターの性格に合ったユニークスキルを付与しています。思考して、いざ使わせようとした時、なかなかどうしてみんな物凄いチートっぷりになるなぁ、と作者が感心しています。というのも、作者があんまりチートキャラが好きじゃないからです。

ハティのような例外的チートキャラもいますが、そういう場合は性格に癖がある人間性にしてうまいことバランスをとるようにしています。性格と能力にメリハリとギャップが生まれると面白いと信じているからです。

ちなみに暁、ハティ、黝の三人は前人未踏のチートキャラ設定です。暁に至っては不死身ですし。まぁ全員、種族的に人間じゃないし。でも人間味たっぷりに描きたいと思います。


次回はアポロンの恋心が炸裂します。破裂してバラバラになりそうになります。なぜならその相手は…………。

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