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ノブレス・オブリージュ 3

 フラワーフェスティバルには他の妹さんもいらっしゃった。

 綺麗な長髪の赤毛を2つにまとめた姉御肌のフィーアさん。

 褐色の肌を持ち、優しそうな目元が印象的なデーシィさんも彼女の妹。

 フィーアさんはベルン第二騎士団員でムードメーカー。誰からも愛され頼りにされるスーパーレディとの噂。

 デーシィさんは占い師。その地域では知らぬ人がいないというほどの実力者。

 マジでみんな凄すぎるんですけど。よっぽど立派な両親に違いない。うちの両親に爪の垢を煎じて飲ませたい。


「なんだかみなさん凄いですね。他の姉妹の方は何をされてらっしゃるのですか?」

「アーディアはエクスプレス国の高級住宅街のオーナー兼保育園の園長をしてるって言ってたっけ。あの子は子供好きだから。ティアは世界中を放浪してる、はず。なにせ最後に会ったっきり連絡がつかないし。でもまぁ元気にやってるでしょう。パティは…………ノーコメントで」

「子供好きなアーディアって子は親近感が湧くな。ぜひとも会ってみたい」

「それは難しいと思うわ。彼女、超が付くほどの人見知りだから。子供好きって言っても、保育園を開いてる階層の下に居を構えていて、天井越しに響いてくる子供たちの足音を聞いて満足するような姉だから」

「それ……大丈夫なんですか?」

「否定したいけど……はっきり言葉にできないのが心苦しい……」

「フィーアお姉ちゃんはどんな人なの? ソフィアお姉ちゃんの家族の話し、もっと聞きたいな♪」


 いつのまにやらキキちゃんが暁さんのお膝元に鎮座ましましていらっしゃる。

 キキちゃんはフラワーフェスティバルの際、ソフィアさんのペット、シマエナガのゆきぽんとの出会いがきっかけでソフィアさんと友達になったという。

 その姿はあたしも見た。キッチン・グレンツェッタのテーブルで随分と派手なこと、机の上に長細い紙をばらまいて占いをしている姿を目撃したからだ。


 他の客も何をしてるのか興味津々で見ていて、視線がそちらに向いていたものだから何事かと思ってあたしも眺めた。

 物珍しさと占いというパワーワードもあり、彼女がお祭りの参加者でなく運営側だったら占いをして欲しいと殺到されたに違いない。

 あと、民族衣装なのか、殆ど水着みたいな服を着ていたことも関係してるだろう。

 しかもスタイルがいいんだから二度見もするというもの。闇夜に襲われても知りませんよ?


 フィーアの名前を聞いてライラさんが漂着。フィーアさんのことは私生活ではソフィアさんが、騎士団員としてはライラさんからお褒めの言葉が飛び出す。

 それを自分のことのように楽し気に聞いてはしゃぐキキちゃんのなんと愛らしいことか。

 リリスさんがキキちゃんとヤヤちゃんを妹にしたいと抱き着く気持ちがよくわかる。

 こんな純粋無垢な子が妹だったら毎日が楽しいだろうなぁ。

 うちの愚弟と交換してください。


「彼女は騎士団員からも寄宿生からも人気者だよ。あの若さで教鞭もとってる優秀な人材だ。寄宿生からの評判もいい。第二騎士団は主に剣を主軸にした物理的な集団戦が主だからか、魔法主軸の第三、第四騎士団とは少し壁みたいなもんがある。だけど彼女はそっち方面にも顔が広くて助かってる。なんでも、剣だけでなく、魔法の修練にも余念がないと聞く。彼女は本当に稀有な存在だ」

「フィーアの姐さんは本当に頼りになりますよ。努力家で義理に厚く情熱的。赤毛の女に悪いやつはいないっ!」


 フィーアさんを尊敬するエディネイも漂着。

 ついでに自画自賛する肝の強さを見せつける。


「おっとぉ、それはあたしのことも言ってるのかな?」

「いえ~い♪」

「いえ~い♪」

「いえ〜い♪」


 赤毛の暁さんとエディネイがハイタッチ。楽しくなってキキちゃんもハイタッチ。


「すっと入ってきたな。しかし雰囲気が似てると思ってたが、ソフィアとは本物の姉妹だったとは。てかエディネイ。自画自賛したよな?」


 聞いてないふりをして、自画自賛の部分をスルー。結構いい性格をしてやがる。

 ちなみにキキちゃんは赤毛ではないが、勢いで2人とハイタッチ。こういう愛嬌があるところも羨ましくかわいらしい。


 だけど、と切り返してソフィアさん。よっぽどのことでは怒らないけど、フィーアを怒らせると手が付けられないとのことなので注意して欲しいとのこと。

 その言葉を受け止めてライラさん。いつもニコニコとしていて怒ったところなんて見たことがない。どんなことでも受け止めて華麗に受け流してしまう性格をしているとの評価。

 いったいどんなことをすれば怒るのかと質問を繰り出す。


 答えはただ1つ、【正義に悖る行い】。


 正義の定義には個人差はあれど、とかく彼女が悪だと思うことを彼女の目の前でするとキレるという。

 しかしそれは普通のことなのではないだろうか。よっぽどねじ曲がった正義ならともかく、ライラさんがべた褒めするような女性が変な正義感を持っているとは思えない。

 そもそも誠実な人の前で不遜なことをするだなんて論外もいいところ。

 そういう輩は天誅あるのみ。


 補足するように語るルクスアキナさんは、眉をハの字にして身を縮めた。


「フィーアは怒りに達するまでの時間が短いんです。怒るを通り越して、いきなり憤怒怒涛の勢いで殴りかかってきますから。最近はだいぶん成長したとかで、反省の言葉を促す時間くらいは自制できるようになったとか。なっていないとか」

「なってないならヤバい人じゃないですか。しかしまぁ普段怒らない人が怒ると手が付けられないやつですね。でもそういう人って好感が持てます。あたしも会ってみたくなっちゃったな」

「怒ったところはまだ見たことはないが、もしかして感情が昂ると、後ろに結んだ長いおさげが百合の花のように開いて髪がわずかに光ったりしない?」

「えっ!? 見たんですか?」

「なにそれめっちゃ見てみたい」


 髪が光るとは珍しい。ソフィアさんの反応を見る限り、フィーアさんを怒らせたのか。


「怒らせるようなことはしてないよ。以前、彼女の実力を見てみようと思って手合わせしたんだが、追い込むごとに力が増していって、髪もそのように変化していったんだ。変わった体質をしてるなぁ、と思ってな。もしかして手加減しながら戦ったから怒ったのだろうか……」

「いえ、本気で怒っていたら瞬間的に爆裂してると思います。それはもう火山の如く。秒で着火するので。ちなみに嬉しい時にも発光しますよ。誕生日にみなさんから沢山のプレゼントをもらって帰ってきた時なんか、もうずっと光りっぱなしでしたから」


 素直でかわいいな。

 姉御肌の女性が照れ隠ししながらみせる笑顔とか胸キュンなんですけど。


「女性からのプレゼントが大半だったらしいっすね」

「同性に好かれるって本当にいい人の証だね」

「男からはなかったの?」

「そこは聞かないであげてください」

「未婚の相手にもプレゼントを贈るものでは? 1人に渡すと全員に渡さないといけない同調圧力がかかるから渡せない的な?」

「なんでも、好きな人がいるって公言してるらしいっす。つまり失恋した男が沢山いるということ。渡したくても渡せないそうな」

「哀れな男どもよ……」

「罪作りなやつよ。ところでキキちゃんの髪が光ってるんだけど、フィーアと同じ体質?」


 なんか視界の端が眩しいと思ったら、キキちゃんの髪が発光してる!?

 でもそれは体質なわけじゃなくて、


「ううん。フィーアお姉ちゃんの髪が光るって言ってたから、きらきら魔法でキキの髪もきらきらさせてみた。どうかな?」

「「「「「器用っ!」」」」」


 かわいい、と素直に叫べばいいところを、ついつい本音が出てしまった。

 キキちゃんは思ってた反応と違ったらしく、露骨にショックを受ける。

 ごめん、かわいいよキキちゃん!

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