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~小話・恐怖!コカトリス~

以下、主観【ティレット・ヘイズマン】

 朝食はトーストとホットミルク。これが1日の始まり。

 シリアルの方がいいんじゃないかともいわれるけれど、私はこの取り合わせが気に入っている。

 バターを塗ってもよし。ジャムを塗ってもよし。カリカリふわふわのトーストこそ朝食の王様であると私は確信していた。


 今日もテレビのニュースを眺めながら、新品のトースターからパンが飛び上がるのを待つ。

 妹のガレットも同じテーブルについて、私と同じものがいいと言って毎朝トーストとホットミルクの生活を送っていた。小さい頃から姉である私の後ろをずっとついて歩くガレット。

 成長してもそのかわいさは曇ることなく、私の心を晴れやかにしてくれる。

 惜しむらくは心の成長。いつの頃からか、私の膝の上へやってくることはなくなってしまった。

 分かっているわ、そんなこと。彼女だって立派なレディになろうと一生懸命に自分を磨いてる。

 いつまでも姉に頼ってばかりではいけないと自覚しているということをっ!

 でも、姉としては…………寂しいのっ!


 せめて隣に座ってぎゅってさせて欲しい。

 いやダメよティレット。

 いくらガレットがかわいいからってそんなこと、こんな歳になってそんなことできないけどめっちゃしたい!


 日々、妹のかわいさをゼロ距離で堪能できないもどかしさを抱えながら時間が過ぎていく。

 あぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~…………はぁ~~…………………………。


「どうしたのですかお姉様? 何か悩み事でございますか?」

「えっ!? あ、あぁいいえ。悩み事というか、ウォルフとルージィがなかなか目を覚まさないと思って。昨日の今日で疲れているのだろうけど、普段、体力に自信がある2人なのにこれほどまでになってしまったから心配で」

「えぇ、あんなにも大きな鶏さんに追いかけまわされましたからね。仕方がありません。今日はしっかり看病をしましょう」


 体力自慢をしてしまったためにコカトリスに追いかけまわされてしまった2人。

 まさか囮役に手を挙げていただなんて誰が思うでしょう。でも自分の役目をしっかり終えて生還した2人のことを私は誇らしく思いました。

 ウォルフは友達としてだけど、ルージィは子供の頃に交わした恋人として。


 分かってる。きっと彼はもう忘れてしまっていることでしょう。

 小さい頃に交わした子供同士の約束なんて覚えているはずがない。だけど、あの言葉は私が少女ながらに勇気をだして伝えた言葉。大事な想い。

 彼は無邪気に指きりげんまんをした。そんな記憶はもうないだろう。


 でも一縷の望みにかけている。

 だからこうして、足腰の立たなくなってしまった片思いの人を看病と称して家に招いているのだから。招いているというか殆ど拉致に近い気もするけれど、かすれ声だったけど承諾はとってある。合法。

 そう、これは合法っ!


 さぁてこのあとはどうしようかしら。

 昨日は私たちも疲れていたからすぐに寝てしまった。彼はもっと疲れていて家に着く前に、担ぐエマの背中で夢の中。

 そうね、まずは体を拭いてあげましょうか。不衛生ではいけませんものね。服を脱がせて、それから………………それからうふふうふっふふふっふふふふ♪


 暴走する妄想を止めさせるかのようにトースターの甲高い音が鳴ったので、こんがりと焼けた朝食を皿に受ける。と同時に2階からウォルフの叫び声。

 椅子から飛び上がって階段を駆け上り、真っ青に干からびたウォルフの顔を覗き込む。


「どうしたのウォルフ。大丈夫!?」

「はぁっ! お気を付けくださいティレットお嬢様。ガレットお嬢様。すぐ近くにコカトリスがいます。あたしの背後にっっっっっ痛ッ!」

「お嬢様はおやめなさいと言ってるでしょう!」


 脊髄反射的にふんわりびんた。

 契約上は雇い主と召使。だけど彼女には友人でいてほしい。なので、少なくとも、仲間内の場で『お嬢様』は言わないように厳命したのです。


「お姉様。今はそんなことを言及している場合ではありません。大丈夫ですよウォルフさん。コカトリスなんていませんよ」

「しかし確かに、あれは鳥野郎の鳴き声でした。なき、ご……え…………」


 混乱するウォルフ。

 想像していた以上に心に傷を負ってしまったのかもしれない。


「もしかして、夢の中に出て来たコカトリスの鳴き声で目が覚めたと?」

「くっ……あぁ~…………史上最悪の目覚め方だぁ…………」


 絶望と言いしれぬ悔しさで涙するウォルフの頭をなでると、次は1階から叫び声が聞こえる。

 間違いなくルージィの声。彼がこんなみっともなく大声を上げるだなんてただごとではない。すぐさま駆け下りて事情を聞くと、不思議なことに既視感のある言葉が飛び出した。


「くそっ! あの鳥野郎まだどこかにいるのか。ティレット、ガレット、ここは危ない。まだ近くにコカトリスがいるッ!」


 臨戦態勢になる愛しい人を落ち着かせ、現実を話すと、彼もウォルフ同様、絶望と言いしれぬ悔しさで涙が頬を伝う。

 これほどまでにトラウマを植え付けるコカトリス。怪物の名にふさわしい。


 でも私を守ろうとしてくれた彼の姿はむねきゅんでした♪

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