表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/1087

一期一会の白昼夢 1

お祭りを楽しむため、空中散歩を午前中で終えて街を練り歩くアルマ一行。

道中に暁率いる異世界組と合流して買い物にアトラクションに大忙し。

リリスの提案でスイーツを提案されるも、繁忙期のショコラは人でいっぱい。仕方がないので時間をずらそうと入った先は隠れ家的アンティークカフェ。落ち着いた雰囲気とともに佇む荘厳なアンティークたち。その中の1つに目をつけたアルマ。珍しくマジックアイテム以外に興味を持ったものの、そのアイテムには値段がない。アルマはお目当ての品を手に入れることができるのでしょうか。




以下、主観【アルマ・クローディアン】

 2日目の空中散歩も大成功。訪れる人たちをみーんな笑顔にできました。

 ベレッタさんも楽しそうに参加してくれた。また来ると約束したシャルロッテ姫様一行は開演時間より早くに到着して一番に待機していた。

 よっぽど気に入ってくれたみたいで、国王様なんて地上に降りてすぐに並びなおそうとするほど。

 さすがに次の予定のために渋々立ち去ってしまう。あの様子だと、ベルンで行われるお祭りで出展させてくれそうな予感。

 期待に胸が膨らみますっ!


 キッチン・グレンツェッタの倉庫に空中散歩の道具を片付けて、空いている席へ着地。ここからはベレッタさんとシェリーさんと一緒にお祭りを見て回る時間なのです。そのために2日目だけは空中散歩の開始時間を早め、閉幕を午後の2時に繰り上げました。

 時間設定を自由にできるのは、参加側としてお祭りを楽しみたいというアルマにとっては助かります。

 せっかくのフラワーフェスティバル。運営側という立場だけで楽しむのはもったいない。アルマだって客として参加したい。特にずっと気になっているマジカルウェザーショーにはどうしても行きたい。キキちゃんたちの話しを聞いて俄然見てみたい欲望がかき立てられてしまった。

 欲望に忠実なのが人間。誰にも迷惑をかけない範囲で叶えちゃいましょう。


「やぁ、お待たせ。お昼ご飯はここでいいんだよね?」


 お待ちかねのシェリーさんがご登場。輝く艶髪が神々しい。


「お疲れ様です、シェリーさん。お昼ご飯をキッチンで済ませたあと、マジカルウェザーショーに行く予定です。その後は適宜考えていきましょう」


 アルマは立ち上がり、ベレッタさんは尊敬する義姉のために椅子を引いて着席を促す。


「それじゃあ3人分のお食事を買ってきますので、ここで待っていてください」


 そう言うと、シェリーさんはベレッタさんの手に手を重ねて苦笑い。


「そう水臭いことを言うな。せっかくなんだ、みんなで並べばいいじゃないか。この時間帯は空いてるみたいだし、一度席を離れても問題ないだろう」


 昼過ぎの2時。昨日は常に満員だったらしい。その反動なのか今日は少なめな客入りのようだ。みんなお昼ご飯を済ませて他へ行ってるみたい。

 アルマたちとしてはとても助かる状況です。特にシェリーさんみたいな有名人が1人で歩いていたらもみくちゃになるに違いない。今だって周囲の人たちはそわそわとして彼女を見ている。

 シェリーさんがプライベートだと分かっているから、真のファンは崇めるだけに留めていた。視線を感じるなり彼女は笑みを浮かべて手を振る。手慣れたものだ。黄色い声が立ち上がった。

 やっぱりシェリーさんは人気者なんだなぁ。キリッとしていてカッコイイし、知的で女性的な魅力も備えている。羨ましい限りです。

 やっぱり身長かな。顔なのかな。背が低めで童顔のアルマはかなり幼く見えるようで、成人していることを告げるとみんなこぞって驚くのだ。困ったものです。ぐぬぬっ。


 列に並ぶなりペーシェさんとハイタッチ。聞くとキッチン・グレンツェッタは大繁盛。売り上げも予想を上回っているところから、売り上げ勝負で上位を狙えるかもしれないとわくわくしていた。顔には出してないけど、お酒好きなエマさんは入賞した時のお酒のことで頭がいっぱいらしい。

 たしかグレンツェン原産の蜂蜜酒だったか。とっても甘くてフルーティーな味と香りが魅力的なのだとか。せっかくなのでアルマも一度はお目にかかりたいものです。もしも優勝したなら樽1個。後夜祭で拝めるかも♪


 ヴィルヘルミナも健壮そうな笑顔でハイタッチ。今朝、動画で見た光のお絵描きの話題に触れた。空中散歩もそうだけど、ショコラで光のお絵描きもやってみたい。ハロウィンのナイトイベントで開催したいと前のめり。ハロウィンは夜のお祭り。光を扱う催し物なら夜空が最適。きらきらな夜とあまぁ~いスイーツ。マーベラスでエクセレントな組み合わせです!

 ヤヤちゃんが聞いたら大喜びして飛び跳ねそう。


「そうなった時はヤヤちゃんとベレッタさんも一緒に呼んでね。お絵描きの発起人はヤヤちゃんだし、きらきら魔法の開発者はベレッタさんだから」


 商売人の顔――物理的な意味で――のヴィルヘルミナが商売人の顔――商人的な意味で――になる。


「もちろんなの。2人とも絶対招待するから。もちろんシェリーさんも、空中散歩のメンバー全員です!」


 シェリーさんは呼び水って意味もありそうだな。

 腹黒商売人の裏の顔など知らないシェリーさんは純粋な善意を捉えて笑顔を向けた。


「私も呼んでくれるとは、それはとても光栄だな」


 ベレッタさんも嬉しそうに感謝を伝える。


「わ、わたしもいいんですか? なんだか自分の手から完全に離れちゃった気がして、自分の作った物ではないような気さえしているし……」

「人を介してどんどん成長していってるんです。全ては生みの親たるベレッタさんのおかげなんです。それにきらきらなお庭ですい~つですよ。乙女ならば参加せざるをえませんっ!」


 へっぴり腰のベレッタさんを逃がしてはならぬ。


「そ、それは……すごく素敵かも……」


 やっぱり乙女なベレッタさん。想像しただけで顔を真っ赤にして楽しそうにするだなんて本当にもう素直なんだから。そんな風にされたらこっちまでドキドキしちゃうじゃないですか。

 誇らしくも照れくさそうにするベレッタさん。ぐぅかわです!


 おいしいランチを済ませたあとはお待ちかねのお祭りタイム。

 まずはアルマの一番行きたい場所。マジカルウェザーショー!

 世界中の気象現象が一同に会した展覧会。箱の中に気象条件を整えるための魔方陣を敷き、VRゴーグルなる物を使ってあたかもその場にいるかのように疑似体験ができるというではありませんか。映像で観るのと違う空気感と実在感が味わえると評判も上々。

 楽しみだ。楽しみすぎて夢に見た。目まぐるしく激変する空の色。豪雨、落雷、強風に豪雪。最後には雲間から(きざはし)が伸びて晴れやかな気持ちになるのだ。最高に刺激的で最高にハザードな体験でした。


 アルマ的価値観ではきらきら女子トークだったのだが、シェリーさんの表情を見るとそうではないらしい。


「とんでもない夢を見たものだな。アルマらしいと言えばらしいが。たしかマジカルウェザーショーはユノ監修のもと、気象予報士のOBが手伝ってるんだったな。発起人は今年寄宿生を卒業して第三騎士団入団予定の子だったはずだ」

「第三騎士団というと攻撃魔法を主体にした構成の騎士団ですよね。てっきり魔法の研究職の人が立ち上げたのかと思いました」

「攻撃職と言ってもみんな研究には熱心だからな。鉄砲玉のような少女だ。立案したあとは人材をかき集めて四苦八苦していたぞ。彼女自身もかなりの勉強家でな。龍脈と魔導災害の研究を熱心に行ってる。これはその延長だそうだ。アルマとは気が合うだろう」

「それは是非ともお話しがしてみたいですね。アルマもマギ・ストッカーを作った時は技術者を集めて、あーだこーだしたものです。1人で出来る時もありますが、いろんな人と意見を交わして1つの物を作り出すのは楽しいです」

「それも物作りの醍醐味だな。自分にできることを全力でやることでチームに貢献する。それが最上だ…………という話しをベレッタの前でするのも気が引けてくるな」

「わたし、ですか?」


 シェリーさんはベレッタさんを愛でると同時に、心配と期待の眼差しを向ける。


「1人でなんでもかんでもやろうとする人の助手になるんだから。ベレッタには是非、キッチン・グレンツェッタで培った経験をもってユノに、『チームで活動することの素晴らしさ』を教えてあげて欲しい」

「は、はぁ……」

「これは……相当なんですね……」


 ベレッタさんもアルマもため息が漏れた。

 シェリーさんは頭痛が痛い思いをしてるみたい。


「あぁ、残念だが相当だ」


 きょとんとして目を丸くするベレッタさん。温和で社交的な側面のユノさんしか知らないベレッタさんは半信半疑で生返事。

 かくいうアルマも優しく微笑むユノさんしか知らないので疑いの念が晴れない。しかしシェリーさんのため息しかり、以前にユノさんと共に現れたマルタさんしかり、仕事となると相当な変人へと変貌してしまうようだ。

 変人と聞くと真っ先に浮かぶのは暁さん。普段は快活な笑顔で場の空気を和ませるが、仕事となると目の色が変わる。

 真剣に悩む時はいい。過去の記憶を辿ると、必要なことだったと言って大嘘をついたこともある。相手の本音を抉り出すために号泣し、虚を突いて踵を返すなんて離れ業をやってみせたこともあったっけ。大の大人も、こんな処世術があるのかと毎度度肝を抜かれっぱなし。

 ユノさんと暁さん。似た者同士だとすると中身は曲者。

 ベレッタさんの将来が心配になってくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ