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アルマの夢、その第一歩! 2

 陽も傾いて午後5時過ぎ。ようやくというか、あっという間にというか、気付けば時間も過ぎ去って、空中散歩初日は無事に幕を閉じた。

 訪れる人々は期待に胸を膨らませ、散歩が終わったあとはみんな笑顔で手を振ってくれる。

 そして……遊び足りない子供を中心に、裏庭庭園にまで伸びた光のお絵描きをするために人だかりができた。


 お絵描きに夢中になりすぎて、空中散歩を待っていることすら忘れ、列と列の間に隙間ができたりして副次的に問題も起こったけど、まぁなんにせよ大きなトラブルも起きず、良いスタートが切れたのではないでしょうか。

 はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~疲れた!


「って言うわりには楽しそうだけど」


 フルマラソンを走り切ったような清々しさと疲労感。疲れていても、心が充実してる。そんな笑顔を浮かべていた。

 ライラックも、アルマも。


「そりゃそうだよ。アルマの夢の第一歩が無事に踏み出せたんだから。みんなもお疲れ様。思ったより人が来てくれたね。ステラのみなさん、おかげ様で無事に終わりました。明日は朝がちょー早いから今日は颯爽帰りましょう」

「おっと、その前にいくつか相談したいことがあるんだけど」

「「「「「わっ、びっくりした!」」」」」


 背後からの声に驚いた一同。声の主は監査の時に出会った女性。風の魔法が得意なオフィスレディ。

 今日ここに来た目的は、ヤヤちゃんの作った光のお絵描きについて。


 それを聞いてアルマは身構える。なにせ突然に開催した企画。しかも単体としては結構な規模で展開してしまったのだから、事前の届け出も必要になる。

 なのに、運営本部に報せもせずに勝手をしてしまったのだ。これは怒られるやつ。しかして怒られるのはアルマの仕事です。南無三っ!


 と思っていたのに、そんなことはなかった。むしろよくやってくれたと褒められる。

 申請のないイベントには驚いたけど、それはあくまで空中散歩に並ぶストレスを緩和するためのもの。突発的に問題解決案を考えて実行する行動力は素晴らしい。

 通常の思考であれば、物理的なロープを使ったりするところを魔法で代用した。さらに付加価値を付けて、祭りを盛り上げる手伝いもしてくれた。

 まさにフラワーフェスティバルにふさわしい行いだ、と大絶賛。


 ほっと安堵のため息。リナさんは当然アルマの発案だろうと褒め称えてくれた。

 すかさずヤヤちゃんを前に出して、誉め言葉のシャワーは彼女にお願いしますと差し出す。リナさんは驚いた表情を見せ、ヤヤちゃんは誇らしくドヤ顔。

 褒められるべきは頑張ってくれた人にあるべきです。


 それから本題に入ります。結論から言うと、明日も光のお絵描きをやって欲しいとのこと。

 理由は人気が出たから。本部にも問い合わせがあり、事前に知らされていた情報にはない企画が用意されているけれど、明日も開催されるのだろうかと、期待を寄せる声が電話越しに聞こえていたそう。

 そういうわけで、連日決行してもらえないかと相談に来られた次第でございます。

 なんと素晴らしいことでしょう!


「で、提案なんだけど。今日の様子だと明日も大繁盛しそうでしょ。でも並んでる人とお絵描きをする人でごちゃまぜになっちゃいそう。だから別の場所に絵具だけおいてもらって、お絵描きだけを楽しむ人と、空中散歩の列に並ぶ人で差別化して欲しいの。そうしないとトラブルとかクレームになるのは目に見えてるから。ごちゃごちゃだと列を整列するスタッフの負担も大きくなるし。問題は魔力量とかそのへんも。見たことのない魔法で程度が分からないんだけど、大丈夫そうかな?」

「ちょっと待って下さいね――――そうですね、はい、大丈夫です。ただし魔力の充填の際に加速術式を使います。アルマたちが住む地区一帯の魔力が異常に減衰しているように見えるかもしれないので、警備の方にその旨、伝えておいていただいてよろしいでしょうか?」


 マギ・ストッカーの魔力補充は周辺の魔素を集めて凝集する。

 通常なら時間をかけてゆっくり蓄えるのだが、加速術式を使うと局所的に、かつ、短時間で魔力を吸い寄せるから、魔素の流れが見える人にとっては異常事態にしか見えないのだ。


「オッケー了解。絵具を置いておいて欲しいのは、ここを出てすぐ出入口左側の花壇から100メートルほど。今日追加で列を伸ばしたのが右側だからその反対方向ね。それじゃあよろしく。事務的な話しはこれで終わりなんだけど、この光のお絵描きってずっと置いておくわけじゃないんでしょ? でも日が暮れてくるとキラキラ感が浮き彫りになって綺麗だよね。いつ頃に解除する予定とかは決めてる?」


 そう、実はそれについて少し悩んでいた。マギ・ストッカーに魔力の充填をするためには一度、固定化した魔力を解除しなくてはならない。

 つまりみんなで描いた物語を終わらせなければならないのだ。


 固定化の解除は遠距離からでも行える。つまり消そうと思えばいつでも消せる。アルマとしては魔力の充填を早くしたいから今すぐ消したい。

 だけどまだ、お絵描きを楽しんでいる人が結構残っていた。

 耳を澄ますと陽が落ちて夜になり、光のアートを楽しみたいと心待ちにしている人も大勢いる。


 困った……タイミングが分からない。かと言って、ずっと残しておくわけにもいかない。

 万が一のために持ってきたマギ・ストッカー。それが万が一の時に使えないのではどうしようもない。

 魔力量だけなら残り2日、マギ・ストッカーを使わなくても乗り越えられる算段ではある。

 あるがしかして……う~ん、どうしよう。


「――――っは! これはあれだよ。シンデレラだよっ!」


 マーベラスなアイデアがヘブンからフォールンダウンしてきたキキちゃん。シンデレラとはこれいかに。


「シンデレラ…………午前0時に魔法が解けるっ!」

「「「「「それだっ!」」」」」


 満場一致で大喝采。

 シンデレラ。『時刻指定で魔法が解ける』の代名詞。

 素敵な時間は有限だからこそ、夜空の星も夢を見る。

 想いも深けて窓の外。陽はまた昇りて鳥の声。

 明日への希望が灯る朝。『おやすみなさい』と『おはよう』が、繰り返される春の風!


 善は急げとリナさんはスマホを取り出して広報を打った。

 アルマもすかさずマギ・ストッカーのタイマーをセット。

 みんなはキキちゃんのグレイトなアイデアに脱帽する。


 褒められて、まんざらでもなく照れるキキちゃんも嬉しそう。

 だからぎゅっと抱きしめて、むぎゅっとほっぺをぷっにぷに。

 ヤヤちゃんにもむぎゅっとほっぺをぷっにぷに。

 ライラックとマーガレットもはぎゅっと抱きしめて喜びを分かち合う。

 イッシュとネーディアには……頭なでなでで十分でしょう。そう照れんなよ♪


 ミレナさんには固い握手と満面の笑みで感謝を伝え、ミレナさんからも感謝の言葉をいただきました。

 周りにいた人たちからも、明日も楽しみにしていると喜びの声をいただきました。

 アルマにとってそれが何よりのご褒美で、今日の疲れも何もかも全部吹っ飛んでいっちゃいます!

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