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にゃんにゃん大作戦! 1

フラワーフェスティバルが始まり、空中散歩も稼働し始めました。

しかしその前に、マーガレット率いる妹キャラ軍団が歩き回ります。

彼女たちは空中散歩の宣伝をするため、オリジナルの衣装を着て街じゅうを歩き回り、祭りを楽しみながら宣伝をしていきます。

その最中で出会った白い小鳥を追いかけて、彼女たちはバストの能力で呼び寄せられた猫と共に大行進。幸せの白い鳥を追いかけるのです。




以下、主観【マーガレット・バディラン】

 空は青く、浮かぶ雲は綿菓子のよう。

 路面電車から臨む街並みはカラフルに彩られ、いつにも増して楽しげな雰囲気が伝わってくる。

 カラッと乾いた空気に優しい春風が心を撫でるたび、わくわくとどきどきが膨らんだ。


 今日は年に一度のフラワーフェスティバル。待ちに待ったお花の祭典。

 祭りの合図を報せる花火がパンパンと鳴り響くと、どこもかしこもパレードのように踊り出す。

 ひしめき合う人、喜びに満ちた笑顔、ここには何があるのだろうと期待に胸躍るグレンツェンはパラダイス。

 生まれてずっとグレンツェンで育ち、毎年違う姿を見せてくれるお花たちは、いつもわたしたちに笑顔を咲かせてくれる。


 今日は空中散歩の宣伝をするためにみんなで作ったあわあわファッションで街を練り歩きながら宣伝と、それから純粋にお祭りを楽しむために全力を尽くします。

 シャボン玉を模した虹色のまぁるい帽子。泡をイメージしたふわふわの丸いぽんぽんをワンピースにくっつけた。お腹のポケットには空中散歩のチラシが入っている。

 これでいつでもどこでも宣伝ができるというわけです。


 わたしはマーガレット・バディラン。カントリーロードでお花屋さんをする母と、グレンツェンを拠点にガーデニングデザイナーをしている父を両親に持つ次女。

 いつもはお姉ちゃんに甘えるけれど、本日はわたしがお姉さんなのです。


 グレンツェンに来て間もなく、フラワーフェスティバルには初参加のキキちゃんとヤヤちゃん。

 そしてベルンから来ているバストさんの案内係を仰せつかまつりましたでございます。


 キキちゃんとヤヤちゃんはわたしのひとつ歳が下。なのでわたしは年上、といってもひとつだけだけど、お姉さんとしてしっかり面倒をみてみせます。

 バストさんはわたしが尊敬してやまないシェリーお姉様のご家族であらせられる。

 彼女のほうが年上だけれども、グレンツェンに不慣れなバストさんを頼むと、シェリーお姉様に言われたからには気合いが入るというものです。ふんふんっ!


 待ち合わせをしているセントラルステーションのベンチでお出迎え。時間的に次の便で到着すると思われるので、しっかり目を凝らして見つけます。

 なにせ人が多すぎて瞬きしている間に見逃してしまう。それはいけません。お姉さんとしてきちんとかっこいいところを見せなくてはっ!


 路面電車が到着するなり椅子から腰が浮いた。待ち人を見つけました。

 すぐに分かりました。窓にべったりと顔をつけて、外の景色を楽しんでいる双子がいます。

 ガラスが曇るほど顔を近づけて、今にも飛び出してしまいしそう。


 なんか……わたしも小さい頃はあんなふうにしてべったりとガラスを曇らせた気がする。

 わたしも昔はあんなだったのかな。くすっと笑って駆けだした。


「おはよう、キキちゃんヤヤちゃん。昨日はよく眠れた?」

「うん! もうばっちり!」

「はい。体調は万全です。今日もよろしくお願いします」


 よかった。ぐっすり眠れたようだ。

 お祭りを楽しむには睡眠と朝食が大事ってヘラさんが言ってた。

 2人とハイタッチして、アルマさんが楽しそうに笑顔を向けてくれる。


「おはよう、マーガレット。それじゃあ2人をよろしくね。お昼前にお昼ご飯の配達も忘れないでね」

「お任せ下さいっ! ところで、バストさんをご存じありませんか? プリマという小さな猫ちゃんと一緒にいる、褐色の肌と金色の眼を持つお姉さんなのですが……」


 シェリーお姉様の話しによると、この時間にセントラルステーションに到着するとのこと。

 しかし辺りを見渡してもそれらしい女性は見当たらない。アルマさんも詳しくは聞いてないらしい。

 褐色の肌はともかく、金色の眼をした人なんてそうはいない。小さな子猫も一緒となればなおさらだ。


 こちらの衣装の特徴は伝えてあるから、よっぽどでなければ見つけられないだなんてことはないはずなのだけど。

 もしかしたらまだ着いていないとか。ベルンからやってくると言ってたから、その可能性は十分にある。

 連絡先を聞くのも忘れた。直接の連絡手段がない。どうしたものか……。


 3人と1匹で首を横に傾ける。もちろん何も思い浮かばない。

 ゆきぽんは鼻が良いらしいけど、嗅いだことのない人の匂いを探し当てることは不可能だと言う。

 困ったな。これではどこへも行けないではないか。初手からつまずいてしまった。


 とりあえずベンチに座ろうかと足を動かした途端、何かが足元で揺らいだ。もふもふのなにかな気がする。

 目を落とした先には、暗い茶色と黒色の立派な毛並みを持った大人の猫。背中には小さな子猫を背負っている。

 なんと珍しい猫の親子でしょう。子猫は咥えて運ぶものだと思っていたけど、背中に乗せて移動する猫とは見たことがない。

 せっかくなのでにゃんにゃんしよう。

 そぉ~れそれそれ、にゃんにゃんにゃんにゃ……ん…………んんッ!?


 手を顎に向けてにゃんにゃんしようとしたのも束の間、お尻を突き上げて大きく背伸びをした彼女は、瞬く間に人間の姿へと変身してしまった。

 夜のようにしっとりと濡れた黒髪。黄金の瞳。褐色の肌。

 ぴったりと張り付いたタイトなダメージジーンズを履きこなし、へそ出しルックがアグレッシブな姉御肌。

 わたしは夢でも見ているのだろうか。

 猫耳猫尻尾を備えた人間。いや、獣人……?


 獣人が動物に変身するだなんて聞いたことがない。

 目を回してしどろもどろのわたしを見下ろし、ひとつ笑って挨拶が送られる。

 彼女の名はバスト。ウルタールの猫の神。神様……なの…………?

 真実は分からない。真実はわからないが彼女こそ、シェリーお姉様の家族であり、本日お越しになったバストさん。

 胸元のスカーフの中には小さな子猫のプリマが鎮座ましましていらっしゃる。


「驚かせてしまってすまない。久しぶりだね、マーガレット。それからキキとヤヤ。今日はどうかよろしく頼むよ」

「こちらこそよろしくお願いします。それではさっそくですが移動しましょう。ここは人通りが多いので、滞留していると迷惑になってしまいますから」


 よし、お姉さんっぽい対応ができた。

 キキちゃんたちの反応はどうかな。


「今日は最初にマーガレットさんのお母さんが開いてる押し花講座に行くんだよ♪ れっつれっつごーごー!」


 うむ、好感触である!


 大図書館を挟んで裏庭の東エリア。ワークショップ講座が点在している場所である。

 例年を通して東エリアは体験型の企画。西側は疲れたお祭り参加者がひと休みできる休憩スペースとして確保されていた。


 今年もママは押し花講座を開いており、沢山の人の笑顔を咲かせるのです。

 他に花占いをする人もいれば、大道芸の一団。プリザーブドフラワー作り。レース編み体験。などなど、見て触れて作って楽しい時間が味わえる素敵イベントのウェディングブーケ。


 ママは押し花作りと並行して、観賞用のポットを販売しています。

 グレンツェンでは有名なフラワーデザイナー。『一人暮らしの男性でも手軽に飾って長く楽しめる』を命題に、手のひらサイズから両手サイズのインテリアを手掛けています。


 ママが扱うポットの特徴は苔。通常のポットの水受けに苔を並べてしまうのです。

 そうすることによって、土から漏れた余分な水分を苔が吸ってくれるので手間いらず。

 1日に2回程度の水やりで良いので敷居が低くて楽ちん管理。病気になったり苔が崩れた時のメンテナンスも受け付けていて、長く楽しめる工夫を用意している。


 近年では(モス)ポットを使ったインテリアがスタンダードになってきていて、どこの家にも1つはあるという人気商品。

 通信販売も始めるようになって大忙し。わたしもお姉ちゃんも時々、ポット作りのお手伝いをしています。

 だからママはわたしの自慢のママです。今日はそんなママをみんなにちょっぴり自慢しようという下心を携えて、いざ東側エリアへゆかんっ!


 晴れやかな表通りとは違う裏庭庭園。落ち着いた雰囲気でゆったりとした時間が楽しめると評判。

 そんな裏庭もフラワーフェスティバルの日だけはとても賑やか。いつも以上にお花さんたちも生き生きしているように見えるのは気のせいではない。


 ――――そう、お花さんたちも………………わたしには見える。

 見えてしまう。

 楽しそうに踊り回る幽霊の姿が。


 数百年前の貴族の姿をしたジェントルマン。

 膨らんだスカートをくるくると回して飛び回るお嬢さん。

 きっと一緒に連れ添ったであろうペットの子犬。

 毎年毎年、この時期は混沌(カオス)極まる狂気の饗宴。

 視界も塞がろうかというほど乱舞する半透明の存在が行き交う裏庭はまさに舞踏会。

 目を凝らして歩かないと、実体のある人間にぶつかってしまいそうになるので大変です。


 でもなんていうか、幽霊さんたちも楽しみにしているお祭りだなんて、なんだかとっても鼻が高い。

 誰に言っても信じてはもらえまい。

 だからこの感情はわたしだけのもの。

 そう思うとなんだかちょっぴりだけ優越感かも?

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