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フラワーフェスティバル開催! 5

以下、主観【エマ・ラーラライト】

 大爆笑して一件落着。すみれさんのおかげで元気が出た。それでは改めまして、本日の反省会といきましょう。

 たった3日のキッチン・グレンツェッタ。だけど、昨日よりも今日。今日より明日をよくしたい。リーダーである私、エマ・ラーラライトのお仕事です!

 そういうわけで、今日の問題点と改善策を考えるのです。というか問題がちらほらあるので、今日のままで行くと明日、明後日と地獄を見るのは明らか。

 問題を認識していながら改善もせず、しんどい思いを我慢するだなんてナンセンス。


 まずは最も忙しかったであろうドリンクバー、もといビールサーバーと格闘したクスタヴィさんとウォルフの売店事情。

 サンドイッチを売るかたわら、ジュースとビールの販売を担当してもらった。が、開店からビールの注文が殺到。それでも序盤は予備のタンクがあるからよかった。


 問題は在庫が切れたあと。業務用5ℓ缶なんて10回注ぐだけで中身がなくなる。空の缶を外して取り替えて外して取り替えてを延々とやっていたら、体力自慢のクスタヴィさんといえど、数時間で音を上げてしまった。

 貯蔵庫に置いてある分もなくなってしまい、途中でゲニーセンビーアに出向いて新しいタンクを補充しに行くはめにもなった。

 タンクを入れ替え、人込みをかき分けて進み、帰ってきてはビールを注ぐという激務。

 隣で働くウォルフもフォローに入り、彼女もあまりの忙しさに精魂尽き果てた様子。

 あと1日と半分。とても大丈夫とは思えない。


 厨房の力自慢も疲労困憊。想定していた人数の1.5倍の数が押し寄せてきて大忙し。まともに休憩も回せないまま1日が終わってしまった。

 本来なら最も重労働をしてくれた厨房の3人を労わらなくてはならないのに、彼らの厚意に甘えてホールから先に休憩を入れてしまう。

 リーダーとしてしっかりみんなを見てないといけなかったのに。

 スパルタコさんやヴィルヘルミナさんからも、厨房から休ませようと助言してくれたのに。

 疲れを悟らせないでいるけど明らかにげっそりしている3人を見ると、罪悪感で胸が痛い。


 問題はまだある。修道院の子供たちに販売をお願いしたカトラリーのコーナーだ。

 あまりに人気すぎて通行人の邪魔になっている様子だった。それは監督したシスターとベレッタさんの誘導でなんとかなったので事なきをえた。

 ただ、人気すぎて今日の販売分の商品が午前中で売り切れてしまう事態になる。


 通常の商売であればなんら問題はない。しかし今回のこれは、子供たちに物を売る楽しさを体験して欲しいというところが主目的。

 午後から売り子をする予定の子供たちが完全に手持無沙汰になってしまったのです。

 暇になったから大聖堂で売っているクッキーの売り子の手伝いに行くことで、とりあえずその場は収まった。

 だけど、こんなことなら午前分と午後分ではっきり分けておくんだった。

 楽しみにしていた子供たち、本当にごめんなさい。


 反省点を述べると、すかさずベレッタさんからフォローが入った。


「それはさすがに気にしすぎだと思うよ? まさか午前中にあれだけの数が全部完売しちゃうだなんて思わなかったもの。それに大聖堂でもクッキーを焼いて販売してるし。まぁ、ヘラさんと大聖堂側としては、自分で作ったものと人が作ったものを売る違いを体験してみて欲しいって思惑があったみたい。比較対象を作って、販売感覚の深堀りしてみる、みたいなそんな感じ。でも明日からは午前分と午後分で数を分けたほうがいいかも。お客さんも多すぎて混雑がすごかったから」

「しかし、そうなると早い者勝ちになってますます競争力が高まってしまうような……」


 ぐ、ぐぬぬ……十分な数量とともに、1人3個までの購入制限をかけてもなお完売のエキュルイュ製カトラリー、恐るべしっ!


「問題は行列の整理だろ。だったら場所を変えればいいんじゃね?」

「場所を変える、ですか?」


 スパルタコさんの鋭い指摘が炸裂。場所を変える、ですか。

 だけどキッチンの中は手一杯。両隣の店舗も営業中。

 どこに移せばいいのだろうか。

 困り顔の私の顔を見て、考えがあると笑顔を作るスパルタコさん。


「今日は売店の横で売ったけど、行列ができすぎて通行人の迷惑になってしまったから、少し場所を変えますって告知すんの。で、場所は外の花壇のあるところ。花壇沿いに並んでもらうようにすれば、通行人の邪魔にはならないだろ。ついでに長く続くオブジェクトがあるから列が乱れにくい。午前分と午後分で分けるのも、売り子の都合で二部構成にしてるって断言すればいい。昨日は違ったのにとか言う人がいてもきっぱり断ればいい。シスターなら万事うまくやってくれるでしょ」

「あたしもそれがいいかも。人が群がりすぎて将棋倒しになるかと思ったの…………マジで圧死するからね、アレは……」


 接客マスターのスパルタコさんとヴィルヘルミナさんのお墨付き。

 であれば大丈夫でしょう。あとは百戦錬磨のシスターにも相談だ。


「賛成。サクラじゃないけど、最後尾の案内をしている時に何人かは、キッチンとカトラリーの売店とを間違えてそっちに並び間違えたって言ってた。明日からははっきり分けたほうがいいと思う。あとはまぁ、キッチンの敷地から少し離れるから、運営の方に一報入れて確認ってところかな」


 なるほどそれは確かにです。

 さすがペーシェさん。視野が広い。


「ちわぁ~っすっすっすぅ~♪ みんなご苦労様。ところでなんの話ししてるの~?」


 話しがまとまったところで部外者のエイミィさんがご登場。

 お客様視点から意見をいただきたく思います。


「エイミィさん! カトラリーの販売場所を少し変えようって話しをしてたんです。今日はキッチンのすぐ端で売ってたんですけど、明日からは少し距離をとって花壇寄りに。で、列は花壇沿いに並んでもらおうって相談してたんです。利用者側からはどう思いますか?」

「私はいいと思うよ。私は知ってたから混雑する前に買えたけど、そのあとから人が殺到してたいへんそうだったもん。リナはどう思う?」

「私もそれがいいと思う。実はここにはそれについて相談しに来たんだけど、既に解決策を立ててたのね。さすがヘラさんのお気に入りたち。仕事が早い」

「どやぁっ!」


 ああ、スパルタコさん。余計なことをしなければ、貴方はもっと異性から好感をもたれるでしょうに。


 それはさておき、スポーツ観戦バー【ゲニーセンビーア】の看板娘のエイミィ・リードリィーリアンさん。

 隣の女性は企画課のリナ・サイエンさん。


 エイミィさんはビールサーバーの件に関して相談ごとがあり、クスタヴィさんと一緒にキッチンまで来てくれた。

 リナさんは午前中にできた人集り解消のために派遣されたということです。


 クレームではないのだけれど、お隣の喫茶店のオーナーがその様子を見ていたらしく、賑わってるようだけど、もしかしたら事故になるかもしれない。と心配して企画課に連絡をとってくれたそうな。


 ちなみにお隣の喫茶店(カフェバル)【シエスタ】。普段はクラッシックの流れる大人なカフェ。お祭りの際には、喧騒から離れてひと心地つける隠れ家として有名。

 一番人気はブラックコーヒー。苦味の中にコーヒー豆が本来持つフルーティーな味わいが楽しめると評判なお店なのです。

 そして数種類のブレンドコーヒーと共にいただく自家製スイーツが、午後の時間を特別なものにしてくれます。


 閑話休題。これでカトラリー販売については問題解決。ベレッタさんがシスターたちに情報共有してくれるということでひと段落がついた。

 次にビールサーバー問題。これはエイミィさんが飛び入りで売り子になってくれるということで解決。さらにゲニーセンビーアが飲食スペースを提供してくれると約束してくれた。

 これならば、ビールを提供する場所が2か所になって負担が軽減される。まさに棚から牡丹餅。僥倖です。


「ウチはこの時期になるとお客さんが減るからね。地域密着志向だから仕方ないんだけど」

「それは助かるのですが、エイミィさんはこちらの売り子に来ていただいて大丈夫なのですか? ゲニーセンビーアにも人が入ることになると思いますが」

「大丈夫大丈夫。弟たちを働かせばいいから。お祭りも1日目で楽しんで、あとはゆっくりするのがウチのいつものパターンだし。ウチは臨時で収入が入る。そっちは色々と負担軽減できる。ついでに私は面白そうなところへ首が突っ込める。みんなウィンウィンっしょ?」


 隣の監査員の視線が鋭く冷たいものになっていく。


「分かってると思うけど、みんな真剣にやってるんだから、あんたも真面目にやりなさいよ」

「わかってるってぇ~。みんなよろしくね♪」

「わぁ~い。よろしくなの☆」


 エイミィさんと心の妹、ヴィルヘルミナさんがハイタッチ。なるほと、彼女と一緒に仕事がしたかったんですね。


「本当に助かります。考え抜いたつもりでも、いざやってみると準備も予測も足りてなくて、恥ずかしい限りです」

「そうかな。かなりよくやってるように見えたけど。少なくとも、みんなすっごく楽しそうだったよ?」

「はい、すっごく楽しいですっ!」


 反射的にそんな言葉が出たのは、心の底からお祭りを楽しめた証拠かな。

 実はすみれさんと同じで、忙しくて疲れすぎて殆ど記憶がない。だけど胸に宿る熱さは本物。

 過ごした時間が素晴らしいものだったと囁いている。キッチンのみんなも口々に楽しかったと揃えて笑う。

 素敵な景色を見渡して、またひとつ笑みがこぼれた。


 最後の課題は厨房の鍋振り係り。最初は連日連続で任せろと豪語していた3人も、筋肉に限界が来たようだ。

 筋肉と会話 (?)しているダーインさんも、祭りの途中で腕に力が入らなくなっても迷惑をかけるだけだと悔しそう。

 他の2人も正直に、明日も厨房に立つのは難しそうだと言ってくれた。さて、そうなると問題は代役。

 力自慢で言えばクスタヴィさん。しかし既にお菓子も喉を通らないときている。ウォルフも真っ白。


 すみれさんは鉄鍋も振れると手を挙げてくれるけど、そうなるとオーブンの管理ができる人がいなくなるので断念。

 他の男子はアダムさんにケビンさん。腕が折れそう。

 となると、見た目だけならハティさんなんだけど、どうだろうか?


 忍び足での質問に彼女は満面の笑みでもって答えてくれる。曰く、『1人で3枚振れる』らしい。

 え、1人で……鉄鍋を3つ同時に扱うことができるということだろうか。腕は2つ。鍋3つ。どう考えても物理的に足りないのだが。

 実演してもらって驚いた。鍋が宙に浮いて、ひとりでに動いているではないか。

 アルマさんが裾を魔力で動かすのと同じように、彼女も鉄鍋を魔力で持ち上げて動かしている。

 それも全部、別々の動きをさせていた。魔力で物を動かすのは分かるとして、それぞれ違った動きをさせるというのは、本人の魔力以上に集中力の高さを物語っている。

 凄すぎて、しかしそれを平然とやってのける姿を見ると、もう何が凄いのか分からなくなってきた。

 凄さのゲシュタルト崩壊です。


 しかしこんな無茶なように見えることを営業中、ずっとできるのかと、再び忍び足で質問するも、答えは当然イエス。全く問題無いと言う。

 なんていうか本当に、ハティさんってば神がかっていらっしゃる。

 なんでもアリだよなぁ。

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