明日までのお楽しみ 1
シャングリラから帰ってきたすみれたちがみんなを集めてホームパーティーをします。
かなりの確率でホームパーティーを開催しています。それだけみんなと騒ぎたいのです。
日本人では考えられない頻度で友達を家に招待しています。場所を提供する代わりに、ご飯やお菓子を持ち寄ってみんなで食べるスタイルがグレンツェン流です。
みんなでわいわい騒いでご飯をするのは楽しいですね。今後もことあるごとにパーティーします。特にお隣さんのティレット家とは一緒に晩御飯を食べています。描写している以外にもパーティーしています。
以下、主観【小鳥遊すみれ】
シャングリラのみんなにさよならと手を振って、愛しい我が家に帰還しました。
お土産にぽむんぽむんマッシュルームまでいただいて、魔法も使えるようになって、しかもこれからキッチンのみんなでホームパーティー。
ひとわくわく過ぎてまたわくわくですっ!
惜しむらくはここでペーシェさん、ベレッタさん、アーディさんとはお別れなこと。
3人は夕方に用事があるということで、残念ながら不参加です。
ですがしかして本日は、スペシャルゲストがお越しになります。
この街で最も忙しくしているヘラさんがご参加下さるのです。グレンツェンに来て初日からお世話になりっぱなし。
きちんとお礼らしいお礼もできなくて、申し訳なさばかりを感じていた私のもやもやを晴らす時がやってきました。
ヘラさんには楽しい時間を過ごしていただこうと思います。
そういうわけで、我々からはぽむんぽむんマッシュルームを使ったモツ添えのステーキ。
ハティさんの新作・禁断のアップルパイの幸せダブルパンチに舌鼓を打っていただきます。
ふっふっふっ♪
ディナーの準備が整った頃に、お隣さんのティレットさんたちがいらっしゃいました。
「こんばんは。パーティーに誘っていただいてありがとうございます。私たちからはこれ、クリームシチューです!」
ティレットさん宅から持ち込まれたそれは、チーズの入ってない普通のシチュー。
ほっこり安心シチューです。
「わぁ、すっごくいい匂い。チーズ入りも良かったけど、普通のはなんか安心する香りだね (すみれ)」
「チーズ入り、というと? (エマ)」
「今日のお昼はクリームシチューの隠し味にチーズが入ってた。おいしかった (ハティ)」
「チーズ入りのクリームシチューって、チーズが隠れてないだろそれ。むしろ本体では? (ウォルフ)」
「チーズ、チーズはおいしいですよねぇ (エマ)」
ウォルフさんの言う通り。隠れてない隠し味だった。でもおいしかった。
朝食のチーズ&ブレッドもすっごくおいしかった。
エリストリさん曰く、チーズをかければなんでもおいしくなる。
今度いろんなもので試してみよう。
次に戸を叩いたのはアポロンさん、ダーインさん、スパルタコさん。ヘイターハーゼのアルバイト帰りでスーパーに寄っていらっしゃいました。
スパルタコさんは食後の駄菓子を手に、キキちゃんとヤヤちゃんの姿を探すも影はない。今日の夕方には帰ってくる予定の双子。彼女たちは故郷のメリアローザに帰国している。
アルマちゃんたちはこれまでの経過報告と、預かっていた武器を持ち主に返却するということでシェアハウスを留守にしていた。
今後も定期的に故郷へ帰るということなので、できれば私もアルマちゃんたちの故郷に行ってみたいと思ってます。
それに暁さんにもまた会いたい。
温かくて太陽みたいな笑顔が印象的な素敵な女性。前祝では牛さんを解体してくれたから、お返しにマグロを解体してさしあげたい。
アポロンさんたちはヘイターハーゼで余った食材を持参。レストランでは大量の食材を一括で発注して単価を下げる努力をしているのだが、そうなるとやはりお店では提供できない規格外のサイズが混じってしまう。
通常であればそれらを集めてまかない料理にしてしまう。以前に受け取ってもらった鯨肉のお返しにと、パエリアにできる一歩手前まで調理してくれた。
中身の具は小さくてかわいらしい魚介類を中心に、これまた小ぶりな野菜がたくさん。小さくても量で勝負のパエリアです。
「シチューにキノコとモツのステーキ。海鮮パエリア。素敵なパーティーになりそうですね♪ (すみれ)」
「ほんとだね。しばらくしたらヘラさんとローザが食後のデザートを持ってくるらしいよ (アポロン)」
「デザートですか! それはとっても楽しみです。でしたら後で紅茶葉をお持ちしますね♪ (ティレット)」
「ごはんもいっぱい。デザートいっぱい。最高だねっ! (ハティ)」
「モツと聞いて颯爽登場ですっ! (アルマ)」
「わわっ! アルマちゃん、いつのまに? (すみれ)」
「いまさっきたった今です。モツの2文字が聞こえた気がしたので速攻戻ってきました (アルマ)」
「地獄耳だね。いったいどこから聞こえてたんだい? (アポロン)」
「時空を超えた遥か彼方からッ! (アルマ)」
「もはや地獄どころの話しじゃねぇな (ダーイン)」
どこからともなくアルマちゃんが帰ってきた!
いつのまにかキキちゃんとヤヤちゃんもリビングでくつろいでる!
アポロンさんの持ってる駄菓子袋に顔を埋めた!
おかえりを言う間もなく驚いて、何を指示するわけでもなくリビングをパーティー仕様にしていく3人の手際の良さたるや。
これは相当、暁さんに仕込まれてるな。大助かりです。
ひと息つこうかとテレビのリモコンに手をとったスパルタコさんとは大違い。
そもそも我が家においてリモコン権はゆきぽんにある。ゆきぽんが見たいものが最優先。しからばスパルタコさんの手がリモコンよりもゆきぽんの背に触れるのは必定なのでした。
ダーインさんが呆れて一瞥。
「おめぇなぁ。ひとんちに来て、しかもこれからパーティーだって言うのにテレビつけようとすんなよ」
「いやぁ……この時間は見たいドラマがあったり、し、て…………わりぃわりぃ。ちゃんと準備するって。そんな目で見るなって。…………みんなごめん」
くつろぐはずが逆にメンタルブレイクしていくスパルタコさん。ご愁傷様です。
そんなこんなと時間も過ぎて、おいしい料理が色付き始めた。
真っ赤に香るシーフードパエリア。
ぽむんぽむんマッシュルームステーキにアラカルトモツ。
じっくりコトコトクリームシチュー。
お友達と並んで、台所に立って料理をするだなんて夢みたい。
くつくつじゅうじゅうことことぽっこん♪
じゅーじゅーふつふつぽこぽっこん♪
とろ~りもつもつぷにっぷに♪
おいしい音を集めて揃えて整えて。
お皿に盛れば出来上がり。
グッドなタイミングでヘラさん登場。
仕事終わりとは思えないテンション。
仕事が終わってからが1日の2度目の始まり。
「あらあらまぁまぁ、外までおいしい匂いがしてくると思ったらここだったのね」
「わぁ、ヘラさん。いらっしゃいませ。今日はしっかりおもてなしさせて下さいね♪」
そう言うと、ローザさんが手を顔の前で振って苦笑い。
「お気遣いなく。母さんは好きでやってるんだから。それよりほら、食後のデザートを買ってきたわよ。それからこっちはわたしの手作りクッキー。琥珀の蜂蜜を練り込んだ特別製♪」
両手にスイーツのローザさん。我先にと受け取った双子はローザさんに感謝を告げた。
でも半分はヘラさんから。いいところ取りされた彼女の眉尻が上がる。
「あたかも自分が買ってきたかのように言わないでくれるかしら? それから食前酒にシェリー酒を持ってきたわよ。女性が多いから度数低めの軽いやつ」
「わぁ~! ヘラさん、ローザさん、ありがとうございますっ!」
「「かぐわしいチョコレートケーキの香りがするッ!」」
ヤヤちゃんとウォルフさんが箱を掲げて大万歳。
大好きなチョコレートにテンション爆上げである。
同僚のエマさんがウォルフさんを嗜めた。
「ヤヤちゃんはともかくとして、ウォルフは自重しなさい。あ、これはロングセラーの白ワイン。すぐ売り切れてしまう人気ワインですね。製造数が多いけどすぐに売り切れてしまって、意外に手に入らないやつです」
「詳しいな。さすがエマだ」
お酒大好きなエマさん。早く飲もうと目を輝かせる。
ウォルフさんはしっぽをフリフリ。
ヤヤちゃんはお尻をふりふり。
嬉しくってたまらない。
みんなも笑顔で楽しそう。
見ているだけで嬉しくなっちゃう。
あぁ、こんな時間がずっと続けばいいなぁ♪




