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魔法大好きっ娘

魔法=空を飛ぶ。

鉄板です。箒に乗って空を飛んでみたいもんです。

でも箒はお尻が痛くなりそうだから絨毯がよさそうです。

いっそのこと、布団に乗りたいですね。




以下、主観【小鳥遊すみれ】

 グレンツェンで公開されている講義には主に2種類の講義がある。

 自由講義と義務講義。


 自由講義とは、申請したのち、国の教育機関から認められた人が自分の得意分野を一般人、企業向けに講義を行うこと。

 例えばお花屋さんなら、家庭向けの水耕栽培や、長持ちするお花の手入れの仕方などを教える講義もあった。

 許可を受けた企業であれば、講師がグレンツェン在住でなくとも、本社や事業所がグレンツェンになくても講義を行える。技術者や人事部の人間が自社の商品をベースに学生の技術向上と優秀な人材確保のため、飛行機で長時間かけてやってくるなんてことも珍しくない。


 義務講義とは国際基準に則って、初等教育、高等教育に必要な最低限の学習を、登録された講師によって行われるものを指す。

 これはあくまで他国に出て行った時、自分がどのくらいの勉学を修めてきたのかを示す意味で設定されていた。

 ほにゃららの講義を受けたから、自分は高等教育レベルの学習を修めている。と言っても、個人単位の信用では説得力が薄い。

 だから公的機関が認めた履修科目を修め、それらの講義を修了した証明書が発行されれば、グレンツェンを知らない人でも、彼は高等教育レベルの知識があるんだなと理解してもらえる。

 そういうブランドの問題もあり、義務講義という名前を冠した。一般的には社会の中で生活するにあたって、中等教育までは修めていたほうがよいと言われる。


 そういうわけで、私たちは慣れる意味も込めて、10歳になると受講できる初等義務教育の1つ≪飛行魔法・初級編≫を受講するため、郊外の演習場へやってきた。

 ちなみに、中級編は飛行の魔法に関する専門的な法令の座学と魔術回路を物体に付与させる技術の習得。

 上級編は世界的に開催されている魔法スポーツの1つであるシューティングスターレースの本格的な講義。

 この講義を務める講師はシューティングスターレース団体戦の元世界チャンピオン。

 同時に、世界的メイクアーティストという肩書を持つ、イ・エプリーナ・ハンヤ・デガン先生。

 色黒で健康的な細マッチョ。そして、オカマである。


「はぁ~い。今日は新しいお友達を紹介しまぁ~す。左からハティちゃん、すみれちゃん、アルマちゃん、キキちゃん、ヤヤちゃんよぉ~ん。みんな拍手ぅ~!」


 紹介されて元気な拍手が送られた。飛行魔法の講義は今日で3回目。全部で7コマが用意されてるらしく、我々は飛び入りでの参加なのだ。

 小さな子ばかりだけどみんな魔法が使えるんだろうな。

 私もいっぱい使えるようになりたいな。


 飛行の魔法は人間に付与することができない魔法。箒などのモノにのみ影響を与える。

 人間自体が宙に浮くためには浮遊の魔法があるのだが、飛行と違って扱いが難しく、また、移動速度が遅いので使われる場面が少ない。


 飛行の魔法が扱えるようになれば自由に空が飛べるのかと言われればそうでもない。

 制空権や土地の権利、法令の観点から、許可が出ない限り自由に空を飛ぶことはできない。

 犯罪や安全のためなのだけど、それを聞いてちょっぴり残念だった。自由に空を飛ぶことができれば、いつでも故郷に帰ることができるかもしれないのに。

 両親のところにだって、ひとっ飛びで行けるかもしれないのに。

 飛行魔法初級編はあくまで魔法を習得するための初歩的な訓練といった意味らしい。


 ちょっぴり残念。だけど、それはそれとしていざ実践。

 まずは詠唱者の手を握って、魔法の感覚を覚える。一から感覚で掴むこともできるけど、知ってる人から直接使い方を教えてもらうほうが効率的で分かり易い。

 こういう実践系のものは陶芸や彫刻と同じで、誰かが作ってるところを見て、自分で体感して、体で慣れていくのが一番手っ取り早いということだ。

 座学での知識も重要。それ以上に、使えるようになって初めて知識は活きるもの。

 知識より知恵。これが大事。


 なのだけど…………なかなかうまくいかない。

 そもそも魔力って何?

 体の内側に内包してる魔力を、心に描いた魔術回路に注いで起動する。うん、全くわからない。

 手を握って使ってるところを体感はした。だが、魔法初心者どころか、魔法が全くの初発動ではうまく感覚が掴めない。

 ハンヤ先生は自分のペースで、焦る必要はないと励ましてくれる。だけど内心はかなりショック。

 今日は結局、ぴょんぴょんと足で飛び跳ねるだけ。地面から体が浮き上がることはなかった。


 帰り道、青空を臨んで我思う。グレンツェンに来て、ハティさんに抱き抱えられて空から見た街並みを思い出した。

 あの景色をもう一度、いや何度でも見てみたい。


「はぁ~……。上手にできなかったなぁ……」

「大丈夫です。魔法のことならアルマにお任せ下さい。演習場は飛行許可が出てるとのことなので、アルマでも飛行魔法を教えることができます」

「うん。ありがとう」

「その代わりと言ってはなんですが、お料理を教えていただきたいのです。アルマも将来は素敵なお嫁さんになりたいです!」

「もちろん。私にできることがあるなら何でも言ってね」


 あぁ~。お互いにできることを教え合う。

 友達とはなんて素晴らしいのだろう。

 これが青春。瑞々しい春。

 嬉しさに打ち震えるとはこのことよ。隣で一緒に歩くキキちゃんも、私との出会いを喜んでくれてるみたい。


「じゃあじゃあ、今日の晩御飯はクリームソースを使ったもっちもちのパスタが食べたい!」


 キキちゃんが目を輝かせ、ぴょんぴょんと背伸びをする。


「もっちもちのパスタだね。それじゃ、お買い物に行こう」

「うん! 行こう!」


 手をとって、スーパーへと歩いていく。

 魔法が使えなかったのは残念だった。だからって焦る必要はない。これからできるようになっていけばいいんだ。それにアルマちゃんが手伝ってくれるなら絶対習得できるよね。


 パスタを茹でてクリームソースをくるくるくつくつ。

 料理は化学とそして愛。

 だったら魔法は?

 魔法ってなんなんだろう?


「ねぇアルマちゃん。魔法って何かな?」

「魔法はみんなを幸せにしてくれるものですよ」


 たしかにそうだ。

 そうであってほしい。

 だけど欲しかった答えとちょっと違うかも。


「うーん、そうじゃなくて、魔法というか、魔力の扱いができるようにならないと、というか。いまいちよく分からなくて」


 アルマちゃんの魔法大好きスイッチがオン!


「魔力は精神力と体力を鍛えるほど保有量が多くなると言われてます。その源泉は人間の魂とも、感情から噴き出るものとも言われてます。そして人間の魂には魔術回路が刻まれてます。魔術回路は深く大きく美しく刻まれてる程、強いものとされます。善悪を問わずですが。魂を内外からの干渉より守るように、いくつかの魔術回路の殻と呼ばれるものがあります。魂に刻まれた魔術回路にもよりますが、魔術回路の殻の形によっても、得意な魔法の傾向が決まったり、魔力の放出量を変えたりできます。人によって個人差はありますが、殻は何層かあって後天的に鍛えることができます。もしかしたらすみれさんは飛行魔法を扱うほど魔力放出量をまだ持っていないか、体質的に合ってないかもです。どっちにしても訓練すれば魔法は扱えるようになるので心配することはありませんよ。まずは魔力を体外へ放出する練習をしていきましょう」


 魔法のことが大好きなのは知ってた。想像以上に専門的な用語が出てきて驚いてしまう。

 頼もしい限りだけど、何を言ってるのか殆ど分からない。

 最後の『訓練すれば大丈夫』というところは分かった。つまりなるほど、今はできなくても大丈夫ってことだ。

 言われてみれば魔法とかは本で読んだだけで練習とかしたことなかった。すぐに出来ないのも仕方ない。


 よっしゃあ、頑張るぞっ!

ついに学園物らしい魔法っぽい内容が始まりました。

ですがほぼほぼの学園物の宿命として授業内容なんか出て来ませんね。

行事やら放課後の部活やら、休日の日常の風景です。ディスカッション形式の授業でもないかぎり描写されることはほぼないですね。なぜなら主人公たちのアクションが、机に座って先生の話しをノートにとる、しかないからです。しゃべろうものなら怒られます。遊んでいようものなら怒られます。仮病を使えば呼び出されます。どう考えても絵になりません。学生同士のやりとりがないと話しにならないのです。


作中でも匂い立っているように、次回からフラワーフェスティバルというお祭りのストーリーです。

第一話の前書きでも書いた気がしますが、グレンツェンは年齢に関係なく好きな講義をとれます。

そういう設定にする前は、年齢ごとに教室につめつめする予定でした。次回に紹介されるキャラクターは殆どが主人公のクラスメートになる予定でした。


一年を通して同じ教室で学業に励む学徒です。しかし普通に考えたらよほどのことが無い限り、男女が自然に仲良くなったりしません。断絶状態です。作者と作者のクラスメートはそうでした。

じゃあどうするか。

レクリエーションがいいじゃない。

日本では秋ごろに始めるであろう学園祭。それを最高に前倒して、入学間もなくぶっこんで、クラスの親交を深めてから勉学に励めばいいじゃない。

学生の本分は学業とよく言われます。誰が最初に言って広めたのか知りませんがそうらしいです。

ただ社会人になって思ったことは、学生の目的は青春で、勉強は青春を謳歌するための目標であり手段でしかないし、そうあるべきだと感じました。

なので登場人物が青春を楽しみ、将来に希望を持って邁進する姿を描いていきたいと思います。

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