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ぷにっ

地震大国日本。

作者が小学生の頃は地震が起きたら机の下に隠れなさい、って言われてましたけど最近は違うらしいですね。窓ガラスや天井にぶら下がって落ちてくる系の物に近寄らないようにするらしいです。

作者は当時、子供ながらに、天井が落ちてきたら机の下にいたところで押しつぶされるよなぁ。意味あんのかこれ、と思ってました。まぁ天井なんか落ちてこようものならどこにいても即死な気がしますけど。とりあえず外には出ないことですね。外にいるなら中に入った方がいいらしいです。

作中の舞台であるグレンツェンは地震が殆ど起きない地域なので住宅に耐震機能がありません。

こういう場所では机の下に隠れるは正解なのかもしれませんね。




以下、【小鳥遊すみれ】

 今日はペーシェさんの提案でお昼前に光る板をみんなで買いに行きました。

 使い方が分からないのでみんなで四苦八苦してます。

 カチカチするボタンをぽちぽちしてみたり、指でしゅっしゅしてみたり、ほっぺにあててぷにぷにしてみたりと色々してます。

 新しい物を手に入れて、ちょびっと浮き足立っちゃいます。


 ひとまず、ペーシェさんが言うところのスタートラインには立てました。


「全員初期設定が終わったね。あとは好きなアプリをダウンロードして、ゲームをするなりインターネットで買い物したりできるよ。でも有料アプリもあるから購入する時は気を付けてね」

「青いマークのところを指で触れて、表示された画面から“アプリ”と呼ばれる道具箱のようなものをいつでも使えるようにこの板……スマートフォンの中に保存しておくということでよろしいのですか?」

「そうそうその通り。ヤヤちゃんは飲み込みが早いね。それも固有魔法(ユニークスキル)ってやつのおかげなの?」

「えっと……そうです。おかげで助かってます」

「いいなぁ~。自分だけの魔法とかチートじゃん。あたしにもないかなぁ、ユニークスキル」

「ペーシェさんはユニークスキルなんてなくても素晴らしい女性だと思います。こんな素敵な道具を教えて下さいました。ここまでご助力もいただいてしまって感謝の言葉もありません。本当にありがとうございます」

「もぅ~、ヤヤちゃんってば誉め上手なんだからぁ。スマホの件は気にしないで。ぶっちゃけ、あたしがみんなといつでも連絡をとれるようにしたいっていう下心があるんだよね。それにグレンツェンで学業に勤しむならスマホは必須アイテムだからね」

「勉学のサポートという意味でしょうか?」


 ぽちぽち。

 しゅんしゅんしゅん。

 グレンツェンアプリを起動して見せてくれた。

 画面はカラフルなお花のロゴで飾られてる。花の都らしい、美しくわくわくするデザイン。

 説明のために手渡されて、機能そっちのけでお花に食いついた。


 ペーシェさんの言葉がいまいち頭に入ってこないせいもあって、画面のカラフルなお花畑に夢中になる。


「それもあるけど、ペーパーレスが叫ばれてからガイダンスの確認や講義の一覧なんかは、全部スマホアプリで見るようになったんだ。流れとしては専用アプリからログインして講義を検索。参加したい講義をワンクリック。スケジュール管理も簡単だし、講義室の変更とか休校の際も通知が来るから超便利。あ、でもあたしたちは使い方を分かってるから初めてでも感覚で分かったけど、みんなはスマホ初心者だし、多機能だけどそれだけ何をすればいいか分からないかも。操作方法とか教えるから、みんなもダウンロードしてみて」


 教わった通りにストアボタンをぷにっ。

 グレンツェンで検索。

 丸い輪っかがぐるぐる回って、グレンツェンのシンボルマークをぷにっ。

 しばらくしてダウンロード完了。

 チュートリアルの自動音声が流れ、その操作通りにボタンや文字をぷにっぷにっ。

 あれ、この声、ヘラさんだよね。

 ヘラさんが板の中にいるということだろうか。

 この薄い板の中に…………?


「小ネタなんだけど、この自動音声の吹き替えは市長のヘラさんね。あの人はこういうサプライズ的なのとかお祭りとか大好きなんだ。おかげで再来月の上旬に行われるフラワーフェスティバルが世界的なイベントになったわけ」

「「「「「ふらわーふぇすてぃばる?」」」」」


 元々はグレンツェン夫人が始めたティーパーティー。街をあげて飲んで騒いで踊って歌って、命の営みに感謝する行事。

 ヘラさんが市長になって、もっと規模を大きくしよう。せっかくなら世界一を目指そうとして巨大化していった。

 3日間の来場者数は述べ約300万人以上。グレンツェンの人口が約200万人以上であることから、その規模の大きさが窺える。


 お祭りになれば個人、団体、企業が催し物を企画して街を盛り上げ、人々を楽しませるというのだ。そのための助成金も市から出るから出店のための敷居も低い。

 売り上げランキングや人気投票。国王様からの特別褒賞も出るというのだからやる気が出るというもの。人によってはこの日のために1年を通して準備している人も、就職を有利に進めようとする人もいるらしい。


「出店の条件は15歳(成人)になってることと、グレンツェン在住ってことくらいだったかな。だからすみれもアルマちゃんもアイデアがあれば申請できるよ。でも期限は1か月前だから、あと1週間くらいなんだけどね」

「なるほど。お祭りはとてもいいですね。メリアローザでは少しずつ七夕祭の準備をしてる頃かなぁ」

「アルマちゃんの故郷のお祭り?」

「そうなんです。天の川を眺めながら願いを込めたお札を笹にかけてお祈りします。それで太郎さんが作ってくれるあまぁ~い金平糖を貰うんです。街中の灯りが灯篭の火だけになって、幻想的で綺麗なんですよ!」

「灯篭の明かりだけ? いいなぁそれ、行ってみたい」

「ぜひぜひお越しください。七夕祭になったらみんなで行きましょう!」


 お祭り。おばちゃんたちの昔話でしか聞いたことがない。

 なんだか2人ともとっても楽しそう。きっと素敵なものなんだろうな。それがもう少しでやってくる。すっごく楽しみだ。


 ♪ ♪ ♪


 グレンツェンアプリには多彩な機能が備わっている。

 ペーシェさんが説明してくれたように、ボタン1つで講義に参加ができる機能。

 講義の内容を記したガイダンスの閲覧。

 講師の紹介文。

 事前に準備するものの一覧。

 講義の日程をスケジュール帳へ自動的に反映させ、数か月先までの予定が立てられるようにもなっている。

 講義の重複を知らせてくれるメッセージ機能はありがたい。

 さらには、図書館に読みたい本のリクエストを送るお便りコーナー。

 路面電車の時間割り表。

 ビッグデータから今最も検索されてるワード全集。

 各種イベント情報。

 スーパーの特売品チラシ。

 学生が欲しがる情報を網羅した、まさに必須アイテム。


「なるほど。これ1つで完結してしまいそうなほどの情報量です。こんなに小さな板なのに。グレンツェンの技術力はとてつもないですね」


 アルマちゃんは新しいおもちゃを買ってもらった子供のように、スマホを手にとってぷにぷにする。

 アルマちゃんの物言いに違和感を覚えつつも、ペーシェさんは細かいところにつっこむまいと言葉を飲んだ。


「グレンツェンの技術力? うんまぁグレンツェンには技術屋さんもいっぱいいるよ。魔導工学なんかは最先端を行ってるんじゃないかな。グレンツェン伯爵は戦争の際に、魔導工学を使った巨大ゴーレムを使ったらしくて、平和になった後も豊かな生活のためにって、知識と技術を集めてたっていうし」

「巨大ゴーレム? 魔法生物じゃなくてですか?」


 きょとんとした表情とともに疑問符を浮かべるペーシェさん。

 魔法に詳しくないがゆえに、アルマちゃんの言葉の真意がわからないでいた。

 視線の先のアルマちゃんは、なぜか『しまった』という顔をして驚いてる。

 ペーシェさんはアルマちゃんの言葉を待ち、アルマちゃんは余計なことをしゃべると色々とマズいことになると分かって沈黙。

 理由の分かってない私には謎の沈黙でしかない。

 誰か打ち払ってくれる人はいないものか。


 空気の読めるペーシェさん。とりあえず話しを進めようとアルマちゃんの疑問を揉み潰す。


「ええと、魔法生物? のゴーレムっていうのは聞いたことないけど。グレンツェン伯爵のゴーレムは鉄と油。それから魔術回路で動いてたらしいよ。今はもう現存しないし、設計図もないから再現もできないけど、グレンツェンの技術者が研究してる」

「ふへぇ~。それはぜひとも見てみたいです。クレアちゃんのアルカンレティアも魔導工学なんですか?」


 キキちゃんの問いにハティさんは首を横に振った。


「それはよく分からない。起動させたのは1回だけだし」

「アルカンレティア?」


 なんだろう。アルカンレティアは『虹』って意味なのは知ってる。なにかとなにかを繋ぐ役割を持ったものなのだろうか。

 キキちゃんはアルカンレティアなるものを思い出して、その印象を語ってくれた。


「浮遊要塞アルカンレティアって呼んでる。すっごく大きくて、輪っかがついてて、野太い声でしゃべる」


 理解の及ぶところではなかった。よくわからないので、ひとまずスルーしておこう。

 ペーシェさんも同じ気持ちみたい。


「しゃべるんだ。聞いたこともないけど、世の中にはそんなもんがあるんだねぇ。あ、電話だ。ん、ヘラさんからだ」


 キキちゃんの言葉からアルカンレティアという単語が出て、はわはわしたアルマちゃん。なにか都合の悪いことでもあるのだろうか。聞かないほうがいいかもしれないから今は聞かないでおこう。


 ペーシェさんのスマホからプルプルと音が鳴ってスマホが振動したのにびっくりし、地震だと思って机の下に隠れた。

 それは電話の呼び出しのために設定されたバイブ機能なわけだけど、知らない私は反射的に身を隠す。

 ヤヤちゃんに説明されて椅子に座りなおそうとすると、隣にいたキキちゃんが抱き着いてきた。

 キキちゃんは地震や雷が苦手。いつもびっくりして近くのものに抱き着く習性があるらしい。怖がるキキちゃんには悪いけど、仲間がいてなんだかちょっぴり安心した。


「おまたせ……って、なにやってるの? 大丈夫?」


 なにごとが起こったのか。電話から帰ってきたら少女が顔を埋めて怯えてるのだから心配にもなる。

 すかさずヤヤちゃんの補足が入った。


「先ほどの着信に驚いてしまったみたいです。地震と勘違いしたようです。キキは地震や雷が苦手で」

「あぁ~分かる分かる。慣れてないってのもあるけど、急に地面が揺れるとびっくりするし、大きな音も嫌だよねぇ~。すみれの故郷は地震大国って聞いてるけど、みんなそんな感じなの?」

「え、う~ん。みんなこうなのかは分からないけど、地震が起きたら机の下に隠れなさいって言われてて」

「そうなのか。知らなかった。あたしなら外に逃げるなぁ。そうそう、ヘラさんからみんなにお願いの電話が来たよ」


 なんでも、フラワーフェスティバルの開催期間だけ、市が試験的に運用しているお料理ゴーレムの食堂を使ってキッチンを開いて欲しいということなのだ。

 通常なら、飲食ブースとして簡易的な食堂の立ち位置なのだけど、お祭りに間に合うようにメンテナンスに出していたゴーレムの修理工場でストライキが起こり、返却される目途が立たないという。

 普段から特別なメニューが提供されるというわけではない。だけど、自由な時間が限られてる人は毎年そこで簡単に食事を済ませている。

 飲食スペースとしてだけの公開も選択肢としてあった。けど、それだけだともったいない。

 何かないかと探っていると、ペーシェさんのブログを見て私の料理を見たそうだ。

 このレベルの料理を出せるなら、催し物を提案した方が得策であると考えたようだ。


 本来、お祭りの出店にはそれ専用の掲示板が設置され、張り紙を出して有志を募集。企画から運営、材料の調達や商品の製造、売り子のシフトなどを自分たちで考え実行する。

 募集をかけるのが最初の一歩目なのだが、ヘラさんはわざわざペーシェさんに直接電話をして白羽の矢を立てた。

 ペーシェさんは全てを話さなかったけど、彼女に頼んだ根拠としては、ペーシェさんが公開しているブログの中に出て来た私の料理を見て、私が料理をすれば倭国料理が食べられると期待したそうだ。食欲の奴隷である。


 そしてなにより、ヘラさんは暁さんからハティさんの素性を聞いている。あまり素性を知られたくないと思ってる本人も了解してのことだった。

 だからこそ、ハティさんの人脈と行動力なら外国の食材を集めてくれるはず。

 おいしい料理が食べられるはず。

 そう考えている。とんでもない食欲の奴隷である。


 そうとは知らない私とハティさんは当然快諾。

 キキちゃん、ヤヤちゃん、アルマちゃんは保留。他に何かしたいことがあるらしい。

 ちょっぴり寂しい気もするけれど、彼女たちが何をするのか楽しみでもあった。




~おまけ小話『ヘラの野望』~


ヘラ「倭国料理。楽しみだわ。ふふふふふふふふふ♪」


ペーシェ「倭国の料理ですか。昨日みたいな魚料理は大歓迎ですね。ってか、もうそのまんま出してお金とれるレベル」


すみれ「おいしいって言ってくださって嬉しいです!」


ヘラ「ふっふっふっ。すみれちゃんはいろんな料理が作れるらしいから、私の娘にも教えてあげて欲しいな。歳は同じ16で、彼女も料理が好きだから。ペーシェちゃんと幼馴染なの。ローザって名前でね、バラが大好きな子なの」


すみれ「えっ! そうなんですかっ! 私もお料理いっぱい覚えたいから、ペーシェさんにも教えてもらいたい。ローザさんにもいろいろ教えてもらいたい」


ペーシェ「う、ん、まぁ、ね。ちなみにあたしは食べる専門だから、味見は任せてっ!」


ローザ「あんたも作りなさいよ」


ペーシェ「作っておくれよ。材料費は出すから」


すみれ「ペーシェさんの好きな料理も食べてみたい。一緒に料理を作りましょう!」


ペーシェ「ぐっ、ぬっ、ガンバッテミル」


キキ「キキもたくさん料理を覚えたい。料理ができる女はいい女って、暁さんが言ってた!」


ペーシェ「ぐはぁっ!」


ヤヤ「料理もいいですが、個人的にはスイーツを覚えたいです。甘いは正義!」


ペーシェ「桃のタルトが食べたい」


ローザ「はいはい。それじゃ、今度スイーツを作りましょう。簡単なクッキーからケーキまで。わたしはお菓子作りが大好きなの。一緒に頑張ろうね♪」


キキ/ヤヤ「「やった~♪」」


ローザ「で、あんたは?」


ペーシェ「くっ、そんなに難しくないのから、お手柔らかに、ちょびっとずつお願いします」


ローザ「どんだけにじり寄ってんのよ」

グレンツェンでは15歳で成人扱いです。

ただしお酒の度数には制限が設けられています。また、パッチテストなどアルコールテストで個人個人に飲んでいいアルコールの度数と量が定められます。飲みすぎ防止もありますが、他人から飲酒を勧められた時の言い訳にするためです。定められた度数を超過しても罰則はありませんが、飲酒が原因で刑罰を科せられた時、情状酌量に関わってきます。そんなプチ設定があります。

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