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決闘 8

 シェアハウス・屋上テラス。

 この家の先達と現在の管理人、つまりヘラさんが趣味で植えたという家庭菜園の広がる屋上には、お昼に涼しく過ごせる木陰のスペースと、日光の元に出て町並みを眺めることのできる外スペースの2つがある。

 今は夜。星空を見ながらあったかい紅茶を飲み、あまにがアップルパイを囲って談笑します。


「グレンツェンの春の夜は冷えますね。でもそのおかげで空気が澄んでいてお星様がよく見えます♪」


 すみれさんは星空を仰いでリラックスモード。


「四季があるのは同じですが、グレンツェンは倭国に比べて緯度が高いので、きっと夏も涼しいと思いますよ。それから湿度も低いのでカラッとしてますね」


 エマさんも隣でリラックスモード。はふーっとため息をついて星空の演奏会を静かに楽しむ。


「夏は冷たいものがおいしくなるっ!」


 ハティさんはガッツのポーズで星より団子。


「アイスにかき氷、冷や汁、そうめんも……蜻蛉(かげろう)(せみ)水黽(あめんぼ)

「もぅヤヤったら。食べ物のことばっかりなんだから」

「花より団子ですね。でも後半は虫の名前ですわよね。虫取りに行くのかしら?」


 内容を察したウォルフさんがいた。

 ティレットさんにそれ以上、ヤヤちゃんとの会話を繋げないために割り込んだ。


「いや、それは多分…………それにしてもこのアップパイ、超うまいな。ハティさんとヤヤちゃんが作ったんだって? 今度教えてよ、エマに」

「ウォルフ、今度一緒にお料理しましょう。ケーキを作れる女性は素敵ですよ?」


 エマさんの笑顔が怖い。ので、アップルパイを褒めて褒めて褒め殺そう。


「うぅ~ん♪ ほんとうにいくらでも食べれちゃいそうです。さすが禁断のアップルパイ。カラメルがキラキラしてて、見た目も味も抜群だなんてずるすぎです。あ、キラキラしていると言えば」


 そうそうそうだ。帰り際、ベレッタさんにとっておきの魔法を教えてもらったんだった。

 一見すれば本当に他愛のない、魔法の見地からすれば無意味なものであるかもしれない。

 だけどそれは、ベレッタさんの『魔法で誰かを幸せにしたい』という願いが生み出した真心の結晶。


 その名も【きらきら魔法】。


 指先に魔力を集中させて、明滅する小さな光の点を集めるだけの簡単な魔法。

 攻撃魔法でもなければ灯りにもならない。だけどどこかわくわくして、見る人に夢と希望を与えるような、そんな魔法。

 ただの演出でしかないそれは、アルマのような実用性ばかりを求める魔法使いではたどり着くことのない、ある種の境地を思わせた。


 きらきらな魔法を見て、すみれさんが大興奮。


「すごいすごいっ! キラキラ~ってして、ぴかぴかしていてとっても綺麗です! 私もやりたいっ!」


 すみれさんはこういうの好きだと思ってた。


「ベレッタさんが作ったの? なんかいいな、それ。あたしにも教えてよ。このきらきら魔法? って言ったっけ。これを使いながら踊ったりしたら最高にファンシーじゃないか」


 ウォルフさんはさっそく魔法を覚えて簡単なダンスを踊り始めた。なるほど、これはいいかもしれない。


「ベレッタさんは大したことないって言ってたけど、このきらきら魔法、キキは大好き。きらきらしゃらしゃらでなんだかわくわくするっ! そうだ、あわあわ衣装を着てこれを使ってみんなで踊ろう。きっとすっごく楽しいよ」

「踊るの? それはいいけど、ちょっと恥ずかしいなぁ」

「きっとすっごくかわいいよっ!」


 キキちゃんはノリノリ。ヤヤちゃんはあまり乗り気ではない。かわいいものに反応するハティさんは絶賛。


「きゅきゅっ? (きらきらしたらかわいい? よし、やってみよう)」


 一心不乱にリンゴをかじり続けていたゆきぽん。ハティさんのひと声に反応したかと思ったら、机の上に着地してキラキラし始めた。

 小さくて丸いゆきぽんが魔法を使ってるのはともかく、見慣れない景色に一同はあっけにとられ、すみれさんはなぜか彼女を天に掲げ、『せんたー・おぶ・ゆきぽぉ~ん』と呟く。

 なんだこれ。なにが起きてるんだこれ。


 ゆきぽんはかわいさを求めてのことなのかもしれないが、アルマたちからすると、何か神々しく尊い存在を崇め奉らん儀式に見えてしかたない。

 もはやこの瞬間がなんなのか。神のみぞ知るに違いない。


 そしてこの時、ベレッタさんが生み出したもうたきらきら魔法が、のちに世界をゆるがす大事件に発展することなど、もはや神すら知る由もなかった。

次回はお風呂上りにウォルフがすみれの髪をいじろうとします。

あまかせコースを頼むのでウォルフがアーティストへと変貌し、自分の思うがままにしようとするのですが、すみれは無意識にある方法で防御します。

そんな小話です。


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