謝蜂葬〘エルンテダンク・ビーネ・ベアディグング〙 7
サン・セルティレア大聖堂。十字架状に伸びる本堂は礼拝堂と結婚式場を兼ねる。グレンツェン伯爵が戦争終結記念と平和を祈願して建立した、グレンツェンで大図書館をのぞいて最も歴史があり大切な場所。
上空から見て大聖堂の十字架はぴったりと東西南北に伸びる。居住区の寄宿舎が大聖堂の右下。少し離れて寄宿舎の右上に厨房とガーデンテラスがある。
後見人のいない子供たちがシスターや神父と一緒に暮らす場所。しかし、歴史的背景から厨房とダイニングは別に建てられている。火の気を使う場所はどこの世界でも家屋から少し離れた場所にあるものなのだ。
だけど、だからこその素敵ポイントがある。厨房の隣にはガーデンテラスが作られた。基本的に贅沢のできない修道院での暮らしの中で、美しい花々に囲まれて食べる食事体験ができる。これを設計したグレンツェン夫人はなんて感性が豊かで心根の優しい人なのだろう。
意外にも、大聖堂の隣で生垣もなく、聖職者と孤児たちが貴族と同じように花々に囲まれて食事をする空間は世界を見渡してもここにしかないらしい。
聖職者に求められるものは厳格であれ、謙虚であれ、贅沢などもってのほか。これが世界の常識。無論、サン・セルティレア大聖堂に勤める神父たちが贅沢であったわけではない。しかし、だからこそ、物質的には貧しくとも、心だけは豊かであれと、そう教えるための景色に見えた。
実際、この静謐と清廉と、花々に囲まれた楽園のような小世界でランチをしたいという人は多い。
私もその一人。もしもいつかできるなら、ここで友達と優雅な時間を過ごしたいと思ったことは、サン・セルティレア大聖堂のガーデンテラスを見たり考えたりした数だけある。
今日はそんな素敵テラスでランチタイム。あとでシルヴァさんにランチの様子を写真で送ろう。彼女もサン・セルティレア大聖堂のガーデンテラスでスイーツタイムをしたいって言ってた。きっと羨ましがるに違いない。




