謝蜂葬〘エルンテダンク・ビーネ・ベアディグング〙 4
誰がどれを運ぶかを子供たちと相談しよう。そう考えて声をかけるより先に子供たちがハティさんの手を取る。彼女のことはベレッタさんとシェリーさん、アーディさん、アダムさんたちに聞き、彼らは今日初めて彼女を見た。演奏を初めて聞いて感動する。
だから彼らはハティさんの周りに集まって彼女に話しかけた。
「ハティさんだよね。さっきの演奏、とっても素敵でした。プロの演奏家なんですか?」
「ううん。演奏は好き。でもプロじゃない。みんなのハンドベルを聞いたことがある。とっても素敵な音色だった」
「わぁっ! 聞いてくださったことがあるんですか。とっても嬉しいです。ハティさんは魔法もとっても上手って聞きました。どんな魔法が使えるんですか?」
魔法の単語が聞こえたアルマちゃんが、魔法の話題を出した子の背後に回る。
ハティさんは特に気にすることもなく会話を続けた。
「いろんな魔法が使える。そろそろお昼ご飯の時間になる。みんなも朝早くからエルビーベアに来たから、お腹ぺこぺこだよね?」
「うん。すっかりお腹が減っちゃった。今日はねー、シェリーお姉ちゃんたちがいるからランチがちょっぴり豪華なんだ~♪」
「それはとっても素敵だね。それじゃ、おうちに早く戻ろう。空間転移」
言った瞬間、私たちは一瞬で荷物とともに修道院の裏庭に移動した。
♪ ♪ ♪
困ったな。嬉しいけど困ったな。
困ったことがあるとすれば、移動中に子供たちとおしゃべりを楽しみたかったということ。テレポートで瞬間移動してしまっては、路面電車に乗ってカントリーロードの景色を一緒に楽しむことなどできない。
嬉しいことと言えば、肉体労働をすることなくお昼ご飯にありつけるということ。
あとそれと、初めて体験する魔法に子供たちはわくわくして瞳を輝かせること。宮廷魔導士でも複数人でやっと使えると言われる転移魔法を、たった一人で、しかも一瞬で成しえてしまった。
魔法が大好きな子供たちは興奮冷めやらぬといった様子でハティさんを褒め讃える。
「すごいすごいっ! 一瞬で移動しちゃった! 荷物も全部ある。みんなちゃんといる。すごーい!」
「ど、どんな修行をしたらテレポートなんて凄い魔法が使えるようになるの!? ハティさんって何者!?」
「ハティさん、すごい! 演奏も魔法もできちゃうなんてすごーいっ!」
子供たちに褒められたハティさんは超上機嫌。頬を染めて笑顔がこぼれる。
だけどその後ろでは、ベレッタさんとアダムくんが困った様子でどうしようかと顔をしかめた。




