133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 71
終わったことを蒸し返してもしかたない。思い出だけを語ろう。
フェアリーたちと一緒にバスボムや石鹸を作ったこと。
秋の森に入って紅葉の実や山菜を採取したこと。
ドラゴンに乗って空を飛んだこと。
フラウウィードで極上の時間を過ごしたこと。
今振り返ってもなにもかもが輝いていた。
「老後はセチアさんの工房みたいな素敵な庭付きの一軒屋でのんびり余生を過ごしたいっ!」
「「めっちゃ分かるー」」
シェリーさんとマルタさんも激しく同意。だってあんなに素敵な花々に囲まれたウッドデッキでのんびり過ごすなんて、考えられる限り最も贅沢な時間としか思えない。
愛する旦那がいて、愛する我が子がいて、あま~いスイーツと香しいハーブティーなんてあれば毎日が絶頂であり続けられるに違いない。
「ユノさんもそう思いますよねっ?」
「とっても素敵な一軒家だったわ。私もフェアリーの魔法に興味あるなー♪」
フェアリーに興味があるんじゃなくて、フェアリーの魔法に興味があるって聞こえた気がしたけど無視しよう。
「フェアリーたちは移り香の魔法が使えて、どんな香りでもアロマオイルにできるんです。花だけじゃなくて、スイーツや紅茶の香りもアロマオイルにできるんです! 香木の香りもあって本当に素敵なんです。お土産にたくさんいただきましたので、マルタさんもユノさんも受け取ってください」
「いいの? やったー♪ ベレッタ、本当にありがとう!」
「あらあら。私にもお土産があるの? ありがとうね。でもあんまり無駄遣いしちゃダメよ?」
「ええと、異世界ではベルンの通貨が使えなかったので、暁さんに甘えました」
「そうだった。じゃあ今度、暁がベルンに来たら料理を振舞いましょうね」
「はい。めいいっぱいのおもてなしで暁さんをもてなしますっ!」
暁さんが来たら腕によりをかけてモーニングにランチにディナーに作らなくてはっ!
秋のオータムフェスティバルにご来訪なさるという。その時はぜひとも食事に招待しなくては。
オータムフェスティバルといえば、マルタさんが出場するモンスターカーレースが開催される。一年に一度のワールドワイドな狂気の祭り。本来ならここでマルタさんの近況を知りたいところ。しかし、今年の妨害要員としてわたしが名指しされてることから、この話題は避けなくてはならない。
ありがたいことに話題にことかかない。マルタさんの大好きな動物もいる。ポーラちゃんの話題をあげよう。




