133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 70
ユノさんの屈託も悪気もない笑顔が怖い!
わたしが話しをぶった切るしかないっ!
「フェアリー! フェアリーの話しをしましょう!」
「フェアリー! フェアリーの話しを聞きたい! シェリーさんからも聞きたい!」
「ん、ああ、もちろんだ。彼女たちは本当に努力家で、自然が大好きで、四季の移ろいにわくわくしてな。見てる私たちまで楽しくなってしまうんだ」
「おぉーっ! あ、フェアリーがスイーツ食べて……え、ハレルヤ?」
ちょうどフェアリーたちがメルヴェイュを食べて、あまりのおいしさにトランス状態になって無意識に宙を舞い、ハレルヤコーラスを始めた場面がパソコンの画面に流れた。
今思い出してもなぜハレルヤを歌ったのかは分からない。分からないけど、わたしの作ったスイーツをおいしいって言ってもらえたのでよしっ!
「はわわ~♪ フェアリーたち、みんな個性的で素敵です。とってもワンダフルです! 私も直接会って、みんなと一緒にティーパーティーがしたーい! ちらっ」
目配せをしたのはシェリーさんではない。ユノさんに対して不満光線を放った。ユノさんは困ったような表情をしてマルタさんに言う。
「今回は残念だったねー。急な仕事が入っちゃって」
「それなんですけどー、今回の仕事って別に私じゃなくてもよかったと思うんですけどー?」
「えー? だって見知った人と仕事したほうが効率的じゃない?」
「ッ!」
「マルタさーん! お土産に宝石石鹸とアロマオイルがありまーす!」
「わぁ~い♪ ありがとうございまーす♪」
機嫌が直った。もう早くこのディナーを終わらせて帰ってもらいたい。
マルタさんはユノさんに激おこカムチャッカカラクムヤルクムィインフェルノゥ。異世界出張ができなくて超不機嫌。しかもそれがマルタさんの中で超重要案件で、異世界出張を断念せざるほどの仕事であれば彼女も納得した。だけど、今回の案件は結局、一日で会議が終わった。
と、いうことを濁流のようにやってきたメッセージの中で知る。ユノさんの仕事に同伴した寄宿生たちが、会議から戻ったマルタさんがブチギレしてるからどうしてキレてるのか、どうすればいいかとエマージェンシーコールが来ていたのだ。
そんなことと知らないわたしは異世界でフェアリーにアルマちゃんにドラゴンに、おいしい料理にうつつを抜かした。
まさかそれほどでもない案件だったとは……。




