133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 69
せっかく用意してくれたけど、揚げ物はほどほどにしておこう。
ヘルシーなサーモンとサラダを食べよう。ワインとフロマージュを堪能しよう。
ディナーの準備ができた。食卓の上は想像通りの茶色多めの色合い。すみれが見たら絶叫しそう。
わたしもちょっと叫びたい。揚げ物が多すぎる。マルタさんはカロリーが欲しいって言ったけど、なにかあったのだろうか。
フェアリーと出会うはずの機会を奪われたストレスによる暴飲暴食かな。
それではさっそく、整いましたので乾杯♪
シェリー酒を軽く飲んで、マルタさんは料理に手を付ける前にパソコンに手を伸ばした。
「乾杯してさっそくですが、動画を再生したいと思います」
「どうぞ。ユノさんも興味ありますよね」
「もっちろんだよ♪ どんな魔法があるのか気になるっ!」
「いろんな魔法がありましたよ。なによりドラゴンが衝撃的でした。ドラゴンに乗って空を飛びました!」
「「ドラゴンに乗って空を飛ぶ!?」」
これにはさすがのユノさんも興味を示した。
マルタさんはモンスターカー乗り。ドラゴンにライドできるとなれば自分も乗りたいと言い出すに違いないとは思ってた。案の定である。
「ドラゴンに乗ったって本当なの!? 私もドラゴンに乗りたい! どうすれば乗れるの? どうしたらドラゴンに乗せてくれるの!? 私も操縦して大空を大爆走したいッ!」
「大爆走ッ!? ええと、次のモンスターカーレースでドラゴンを披露する予定だそうです。マルタさんはレースに出られるということで、そのあとでドラゴンに触れられるかもしれません」
「モンスターカーレースで!? それは楽しみだなぁ~♪」
言えない。絶対に言えない。モンスターカーレースで披露するって言ったけど、それは障害物として出現するということでアトラクションとか展示物っていう意味ではない。
レースに参加するマルタさんに言うと情報漏洩になっちゃう。これ以上つっこまれるとボロがでそうなので話題を変えよう。
「マルタが料理するだなんて思ってもみなかったなー」
「はい?」
ユノさんが余計なことを言い始めたーッ!
マルタさんの笑顔が強張る。
「これでも一応乙女のはしくれなんですよ?」
笑顔が怖い!
「いやー、だって宮廷魔導士も見習いも忙しいでしょ? 料理をする人間がいるだなんて思わないじゃん」
思わないんですか!?




