133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 68
ユノさんの部屋に戻ると、るんるん気分でディナーの準備をするマルタさんとユノさんの姿がある。テーブルにはノートパソコンが部屋の主と言わんばかりの覇気をまとって鎮座ましましていらっしゃった。
揚げ物を揚げる小気味よいぱちぱち音の中にマルタさんの言葉が聞こえる。
「ベレッタは動画の準備をしてて。シェリーさんはテーブルメイクをしていてもらっていいですか?」
「かしこまりました。準備しておきます」
「任せろ。バストはプリマとポーラのご飯の準備を頼む」
「無論よ」
「ポーラ?」
マルタさんは聞きなれない名前を聞いて振り向くと、真っ白な毛並みをふわふわさせ、宙にふわふわと浮かぶ猫ちゃんの姿を見る。
マルタさんはポーラを見るなり黄色い歓声を上げた。
「なんですかこのふわふわなかわいい猫ちゃんは!? 宙に浮いてる!? どういうことですか!?」
抱きつきたいけど油でべとべとの体では抱きつけない。もふもふしたい欲求を押さえつけるために地団駄を踏む。しかしたまらず声を上げた。
「ベレッタ、料理代わって!」
「もちろんです♪ たくさんもふもふしてあげてください」
「やったあーっ!」
マルタさんはふわふわの長い毛を腕で巻き込むようにして胸の内にポーラを収め、優しく抱きしめてもふもふなでなでする。
ポーラも嬉しそうに気持ちの良い声を発した。
幸せになるマルタさんをみて微笑み、わたしはサモサと対面する。
サモサ。シュニッツェル。フライ・カチカヴァリィ。エンパナダス。どうしてここまで揚げ物を用意したのだろう。つっこんでいいところなんだろうか。
「ねぇねぇ、マルタ。どうして揚げ物ばっかり選んだの? 珍しいねー」
ユノさんが言った!
ナイス!
もふもふなポーラでなごむマルタさんが夢見心地の声色で笑顔を向ける。
「今日はカロリーが欲しい日なんですよ~。ベレッタも旅行先でカロリー使ったでしょ?」
「旅行先でカロリー!? むしろ摂取しまくりで、明日からプチダイエットしなきゃなんですが」
「えっ!?」
「んんっ!?」
なにを隠そう、フェアリーたちと一緒にティータイムばっかりしてたし、スイーツも山ほど食べた。主食も炭水化物多めでヤバいヤバいと思いながら、旅行なんだからと無視をした。だけど現実に戻ったならば、現実を見なくてはならないのだ。
隠してばかりではいられない。いずれ隠しても盛り上がってきてしまうのだっ!




