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133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 63

 人数分+ペーシェの分に切り分けられた桃は鮮やかなピンク色を輝かせる。

 手を伸ばそうとして、月下から注意事項が渡された。


「みんな気を付けてください。宝玉はあまりにおいしくて、桃源郷が見えることがあります」

「「「「「桃源郷!?」」」」」


 おいしすぎて桃源郷が見えるとはどういうことだろう。それほどまでにおいしいということか。どれほどまでにおいしいのか。

 いざ、ぱくりっ。


 まったりとした甘さと芳醇な香り。桃独特の心地よい酸味が広がったと思えば、強烈な多幸感が全身を包む。

 目を閉じれば幻想に横たわる桃園が広がった。煌々と輝く太陽の下、緑と桃色が広がる光の世界が――――――――はっ!?


「今、桃源郷が……!?」

「おかえり、ベレッタ。はい、ハーブティー」

「あ、うん。ありがとう」


 なにが起こったのかよくわからないまま月下に差し出されたハーブティーを飲む。

 ハーブティーを飲んでも甘やかな宝玉の余韻がまだ残る。とっても幸せな時間を堪能した。それにしても今のはなんだったのか。ほかのみんなはなんともないみた――――ペーシェが放心してる!?


「ペーシェがピンク色になって幸せそうな笑顔で魂が抜けてるッ!」


 わたしには魂の色が見える。だから分かる。ペーシェがエクトプラズムしてるッ!

 どうにかして魂を呼び戻さなきゃ!

 でもどうやって?

 そんなのシスターに教わってない!


 みんなが幸せそうに桃をほおばる中、一人でわたわたしていると、月下がペーシェの頬に抱きつき、祈ちゃんがペーシェの手を握って呼びかける。


「やっぱりペーシェは桃源郷に行ってしまいましたね。呼び戻さなきゃ。ペーシェ~、一緒にスイーツを食べましょ~。ハーブティーもありますよ~♪」

「ペーシェお姉ちゃん帰ってきて~。ペーシェお姉ちゃん大好き~♪」

「ペーシェ大好き~♪ ほっぺぷにぷに~♪」

「はっ!? 今なんか桃源郷が見えたッ!?」

「やっと帰ってきましたね。桃はおしいかったですか?」

「すっっっっっごくおいしかったよ~♪ もう本当に信じられないくらい甘くてジューシーで、これ以上のおいしい桃があるとは思えないくらいおいしかった! 本当にありがとう! あたしも月下も祈のこと、大好きだよ~♪ むぎゅ~♪」

「「やった~♪ むぎゅ~♪」」


 なんだかんだでペーシェが戻ってこれた。今の感じから察するに、桃源郷に行ってしまった人間は彼女だけじゃないらしい。

 これ、何度か死にかけた人がいるな……。

 おいしすぎてエクトプラズムする桃が存在するなんて思わなかった。

 よし、今のは見なかったことにしよう。

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