133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 62
どうしたことだろう。『幸せは二つに分けると二倍になる』が信条のフェアリーがこぞって驚いた顔を見せた。
意外な反応に全員がフリーズする。氷を溶かすのは暁さん。
「ペーシェは知らないと思うんだが、月下たちが育てた桃は特別でな。【宝玉】と呼ばれる、ギルマスのあたしでも一年に一回しか食べられない代物なんだ。ちなみに、月下と祈しか果樹の場所を知らないらしい。セチアも、太郎も、ローズマリーたちも知らないんだって」
暁さんの言葉にセチアさんが続く。
「それもメリアローザの国王様、各ギルドのギルドマスター、それから私の分だけ採取してくれるんです。それ以外の人の分は頼んでも貰えないんです。それくらい貴重な桃なんですよ」
「それ本当ですか? なんてこった。しかしあたしの気持ちは揺らがない。月下、これはみんなで食べよう!」
「ふわぁ~♪ さすがペーシェです。それでは私が心して切り分けさせてもらいますっ!」
「先生、宜しくお願い致しますっ!」
「ふっふっふっ♪」
頼まれて、月下はライブラから自慢の刀を取り出す。フェアリーに似ても似つかない獲物が出てきてクレール姉妹は目を見開いて驚いた。
気にせず大上段に構え、お決まりの文句を発する。
「妖精流剣技奥義! 宝玉をペーシェの分だけ大き目に切って後はみんなの分を等分切りーっ!」
「「「「「ッッッ!?」」」」」
妖精流剣技奥義を初めて見るソフィアさん、グリムさん、フィーアさん、ティアさん、デーシィさんはツッコミどころ満載の月下の啖呵に驚きを隠せない。
フェアリーの努力とかわいさに慣れたわたしたちは切り分けられた桃を見るなり拍手喝采。
月下に賞賛の言葉を贈る。
「ちょっと待ってこれ魔術的にも物理的にもありえなくない!?」
現実を受け入れられないソフィアさんに悟りを拓いたが如き笑顔で説得しよう。
「ソフィアさん、フェアリーなので」
「フェアリー、なので……?」
それ以上の説明は要らない。フェアリーだからなんでもできる。できると思えばできるのです。
それだけ伝えて宝玉に視線を移した。




