133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 60
どれほど難しいダンジョンにしたのだろう。怖くて聞けない。
ペーシェの話しを聞いたフィーアさんが素朴な質問をした。
「それさ、無理ゲーって分かった時点で誰も挑戦してくれないから、結局赤字なのでは?」
「そこは心配ご無用!」
「そこには対策取ってるのか……」
「世界中の剣闘士を挑発します。ライラさんと一緒に!」
「嫌な予感しかしねえ!」
「ベルンのオータムフェスティバルはグレンツェンのフラワーフェスティバルに並ぶワールドワイドなお祭りですからね。しかも国際空港がありますからね。ライラさんは現役時代、全戦全勝の無敗伝説を持ちます。現役を退いた今となっては誰も彼女の記録を覆すことはできません。しかし、今回、形は違えど、ライラさんを越えるか並び立つ機会が与えらえるのです。これに挑戦しないで何が剣闘士か! 挑戦も考えないようなやつはチキン野郎だ! と、ライラさんに世界に向けて喧伝してもらうつもりです。間違えました。挑発してもらいます」
「間違えるところ間違ってない?」
「あってます」
「世界を敵に回すんじゃない?」
「そのくらいぶっ飛んでないとダメなんですよ。こういうことする時は」
「そ、そういうもんなの……?」
「「そういうものです」」
うっかりにも、ペーシェと言葉が重なった。
わたしの言葉にシェリー騎士団長が一番に反応する。
「どうした、ベレッタ。なにかあったのか?」
「いや、えっと……ユノさんの助手を始めて、なるほどこんな世界にいたらまともじゃなくなるな、というか、まともでいたらおかしくなるんだろうなあ、と思うようになりまして…………」
「なるほど。まぁ、そういうのは、私も騎士団長をやってるから分からんでもない」
わたしを肯定するシェリーさんの言葉にフィーアさんが待ったをかけた。
「そんな世界に、あたしは誘われたということですか?」
「ライラさんの見てる世界はもっと凄まじいと思うが」
「うわあー……ですよねえー…………」
フィーアさんはライラさんの後継として期待される超特大超新星。期待と責任の重さが半端ではなさそう。わたしだったらとても耐えられない。




