133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 53
「まぁ、護衛付きか、お部屋に招待されるのであれば」
「やったー! みんなで一緒にお茶しましょう♪」
「みんなで一緒に!」
「「「お茶したい!」」」
楽しい時間を夢想する姫様の目の前で、楽しい時間を想像するフェアリーがわくわくに胸を膨らませる。だけど、そのわくわくは、来年の秋までしまっておかなくてはならない。
「あっ! そうですよね。わたくしもフェアリーのみんなとお茶がしたいです。でもまだ少し待っていてください。その時になったらめいいっぱい、ベルンのきらきらを堪能しましょう♪」
「「「「きらきらを堪能したいっ!」」」」
未来のわくわくにきらきらするフェアリーたちは、姫様の指に一人一本、姫様の指を掴んで握手した。
ひとしきり満足したところで次のアロマボトルが渡される。
次は逆回り。ヘラさんから鼻を近づけた。
「これは…………ウッディな香り。それでいて独特な甘さを感じる。なんとなく分かったけど、答えは後回しにしておこう。はい、ローザ」
「いい香り。だけどバラじゃないと分からないわ。はい、アルマ」
「アルマは金木犀と銀木犀しかわからんでやんす。はい、暁さん」
「なんか分からんが火の気を感じるな。しかしいい香りだ。檜っぽい感じもする。はい、リリス姫」
「すーーーーん。ふわぁ。私は鈴蘭みたいな甘い香りのほうが好きですね。これは燃やした木っぽい感じがしますし。はい、インヴィディアさん」
「うーん……。全然分からないわ。でもとっても心が落ち着く香りね。はい、華恋ちゃん」
「あ、多分これはアレですね。私知ってるやつです。はい、ソフィアさん」
「すんすん。なんていうか、ちょっと神秘的な香りな気がする。香木? 前にもらったサンダルウッドに似てるような。はい、フィーア」
「あたしは全然分からん。はい、ティア」
「ティアも全然詳しくないからわからん。でもいい香り。今までできなかったこと全部やりたい。アロマのテイスティングもやってみたいな。はい、デーシィ」
「ふわぁ~♪ これ、さっきのビターオレンジも素敵でしたが、こちらはもっとわたくし好みです。素朴な雰囲気がいいですね。はい、シャルロッテ姫様」
「すんすん。なんの香りかは分かりませんが、いい香りがしますね。はい、ミレナさん」
「正直言って当てられる気はしないが。うん。全然分からん。はい、ラム」
「残念ながら私も料理ばっかりだったもので。でもアロマオイルをカクテルにくわえるのは定番です。はっ! 全然わかんない!」
「分からないんだ」
「これを使えば面白いカクテルができそうな気はしますが、なんのアロマオイルかは分かりません。ヘラさんは心当たりがあるそうですが、ズバリどうですか?」
「パロサントじゃないかな? それも火を焚いた時に出る煙をアロマオイルにしたんじゃないかな?」
「それで火の気を感じたんですね」
「なぜ分かる……? それで、答えはどうかな?」
ラムさんがローズマリーに聞く。と、彼女は感心したような表情を見せてヘラさんに向き直った。ローズマリーだけじゃない。バーニアも赤雷も白雲も、だ。
そして驚きのひと言が我々の脳天を直撃する。
「あの木はパロサントっていう名前だったのか」
「「「「「ッッッ!?」」」」」




