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133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 36

 貝をぱくぱく食べるといつの間にかすっかりなくなってしまった。

 ルクスアキナさんが合流したところで、席を渡す形で別の七輪へ向かう。ほかの七輪にはまだ貝が残ってるだろうか。無遠慮にも無意識に貝を食べることに気を取られてしまう。

 そうだ。きっとお義兄ちゃんなら貝を譲ってくれるに違いない。

 探すと、意外にもお義兄ちゃんは子供たちに囲まれてやんややんやしてた。


「殿っ! キノコが焼けましたでございまする。こちらのおソースをつけて食べてくだされ!」

「あ、ありがとう。俺のために焼いてくれるのは嬉しいんだが、自分の分もしっかり食べるんだぞ」

「ありがたきお言葉にございますっ!」


 これはいったいどういうことか。

 しじまちゃんが義兄のことを殿と呼んで敬う。にしても、まるで主従の関係ではないか。

 幸か不幸か、義兄の頭に金粉被りのカブトムシが乗った日から、しじまちゃんは義兄のことを殿と呼び慕っている。金粉被りのカブトムシのことがよっぽど気に入ったらしい。

 しじまちゃんの友達に金色のカブトムシを見せびらかすと、彼らは彼女をヒーローのように扱った。だから自分をヒーローにしてくれた義兄を殿と呼んで尊敬してるみたい。

 子供っぽくてかわいいな。

 しじまちゃんの態度と同じように、キキちゃんとヤヤちゃんも似たような態度で義兄に接する。


「アーディさん、こっちの貝もおいしいですよ。さきほどルクスさんが作ってくれたパテと一緒に食べてみてください」

「アーディさん、松茸と本シメジが焼けたよ。松茸と本シメジでキノコソースをサンドイッチして食べてみて。これすっごくおいしいよ♪」

「お、おぉう! 三人とも、ありがとうな。それじゃあみんなで食べようか。みんなで食べたほうがおいしいからな」

「「「はいっ!」」」


 ふた回りも年上のお兄さんを囲って、少女たちはキノコをほおばり秋風の中で喜びに耽る。

 彼女たちを見るミレナさんと白雲も楽しそうにキノコを食べた。


「いやー、アーディってばモテ期がきちゃったんじゃない?」


 からかうミレナさんにわたしが脊髄反射的に補足を入れる。


「お義兄ちゃんは彼女いますよ?」

「は!? マジで!? いつの間に!?」

「今年のサマーバケーションの時に、ユーリィっていう魔導工学技師の人に告白されてオーケーしたって」

「そんな恋バナ聞いてないッ!」


 いかん。ミレナさんの乙女な部分を無駄に刺激してしまった。義兄に突撃するミレナさんを筆頭に、好奇心旺盛な少女たちが食いつく。

 火種を点けたわたしがなんらかの責任を取らされそうなので逃げるとしよう。

 と、思って立ち上がろうとした瞬間、白雲は物憂げな表情をしてぽつりと呟いた。


「恋って、どんな気持ちなのでしょう…………」

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