133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 34
七輪の上の半分を貝で占拠すると、通り過ぎた義兄ちゃんがつっこんだ。
「お、お前またそんな無遠慮に……」
義兄ちゃんのつっこみを暁さんがガードする。
「いいんだいいんだ。ベレッタへの賄賂……賄賂みたいなもんだ!」
「言いなおそうとして突っ切ってきやがった! 暁とベレッタがそれでいいなら俺は構わんが」
「わたしは何をすればいいですか!?」
「ベレッタ、お前……」
落胆する義兄を横目に暁さんがわたしに要求を突きつけた。
「アルマと仲良くしてくれると嬉しいよ」
「喜んで!」
「おいちょっと待てそれしれっと勧誘に走ってるだろ!」
「いえいえ、あたしからの礼ですよ」
「はぁ~ん?」
お義姉ちゃんって『はぁ~ん?』とか言うんだ……。超意外。
バチバチのシェリーさんと暁さんの間に割って入ると地雷を踏みそうなので、貝が焼けるまでポーラとプリマのところへ行ってみよう。
プリマは相変わらず、すみれが作った特製ご飯をはむはむ食べた。キノコはお気に召さなかったみたい。
ポーラはというと、木の実類が主食らしいがキノコも食べる。食べるのだが……。
「ポーラはキノコの笠のところしか食べないの?」
ニャニャに聞くと、まさかのイエス。
「ですです。笠のところはおいしいらしいです」
困った表情でキノコの柄だけを七輪に乗せるバストさんが肩を落とした。
「やれやれ。選り好みがあるとはいえ、まさかこんな食い方をするとはのう。別にいいんじゃがのう。行儀が悪いというかなんというか……」
「さすがににゃんこに行儀を求めるのは酷です……」
ニャニャは猫に甘いから、といっても、わたしもニャニャの意見に同意です。バストさんが猫と意思疎通できるとはいえ、人間中心のこの世界で猫に礼儀は求めませんのでご安心を。
ポーラとプリマをにゃんにゃんしてたら貝が焼けた。まずはアサリを食べてみよう。
「もぐもぐ。潮の香りと貝の旨味が噛みしめるたびに口いっぱいに広がります。とってもおいしいですね♪」
「アサリはシンプルに旨いからな。貝の中ではあんまり癖がないほうだし。ベルンやグレンツェンではどんな貝が主流なんだ?」
「ムール貝や牡蠣が多いですね。ちょっとお高い部類だとホタテやウニになります。他にはハマグリやマテ貝、アワビ、カタツムリ、シロトリ貝などです」
「やっぱりいろいろと――――え? 今なんかカタツムリって聞こえたんだけど」
「はい、カタツムリも食べますよ」
「ッ!?」
どういうことだろう。暁さんが表情筋を引きつらせて後ずさった。
メリアローザではカタツムリは食べないのかな?
「もちろん、食用に養殖されたカタツムリですよ?」
「カタツムリって食用とか養殖とかあんの!?」
「メリアローザには、ないみたいですね……」
「ありえんだろ。あんなもん」
暁さんは目をかっ開いてドン引き。びっくりするほどびっくりした顔でのけ反る。
恐竜とかドラゴンとか、ミノタウロスとか食べちゃう人にドン引かれても困るんだけど……。




