133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 33
ということで、次は暁さんのところへ行こう。なぜなら、『山の幸もいいが、海の幸もよかろう』ということで、貝を持参してくださったのです。
まるでわたしの心を鷲掴みにしようとせんばかりに、わたしの好物を用意してくださる。
ありがとうございますっ!
隣に座って感謝の言葉を暁さんに伝える。すると彼女は笑顔を返してくれた。
「実際、ベレッタの心に刺さる物を積極的に用意してる。なぜならアルマの留学終了と同時にメリアローザに来て欲しいから!」
「ちょっと待ったあーッ!」
露骨な勧誘にシェリーさんが大声を出して割って入る。
「いくら暁といえど、私の義妹を勧誘することは許さんっ! ベレッタはレナトゥスで活躍するんだ。攻撃魔法ではなく、アルマと同じように人を幸せにする魔法でっ!」
珍しくシェリーさんがかなり酔ってる。こんなに酔ったシェリーさんを見たのは初めてだ。
泥酔ではない。しかし頬を染めて若干舌足らずになってる。意識と意思だけははっきりしてる。さすが影で【きっちり魔人】と呼ばれるだけある。
酔いの回った義姉の啖呵に暁さんは剣豪よろしくさっぱりと斬る。
「いやいやー、魔法文明と魔法の自由度で言えばメリアローザに分がありますからねー。人々を楽しませる魔法の開発ならメリアローザですよ~♪」
「ぐぬぬ……。国際魔術協会さえなければッ!」
このひと言にヘラさんが割って入る。
「シェリーちゃん! 気持ちは分かるけどそれは心の中にしまっておいて! 貴女はベルン第一騎士団長なんだから!」
「うぅっ…………すみません………………」
国際魔術協会はいろいろと黒い噂が絶えない。
とはいえ、古代より魔法の技術の研鑽を続け、現代まで世界の役に立ってきた実績もある。
国際魔術協会の攻撃的な理念はともかく、玉石混淆というか、善悪表裏一体というか、騎士団長も人間なのだ。いろいろと思うところがあるのだろう。
まさか先日のサマーバケーションで現れた巨大鮫魔獣を、国際魔術協会が人工的に作ったものであると知らないわたしは、シェリー騎士団長の心中を深くは察せないでいた。
ひとまずシェリーさんのうっかりのフォローに回ろう。
「安心してください。さっきの言葉は忘れます。ね、ニャニャ、リリィ、姫様」
「もちろんです。うまうまなバーベキューのせいで幸せなこと以外は全て忘れるです。にゃんにゃんにゃーん♪」
「私は何も聞いてません。あ、でもできれば、できればなんですけど、ハティさんの魔法をもっと見たいなー、って思うんですけど、ハティさんはレナトゥスにいらっしゃらないんでしょうか?」
「わたくしはシェリー様の味方です。もぐもぐっ! 国際魔術協会のことなんて忘れて素敵なランチを堪能しましょうもぐもぐっ!」
ニャニャはポーラとプリマのもぐもぐタイムを眺めながらキノコを食べる。
リリィは一服しながらも欲望丸だし。
姫様はシェリーさんに同意しながらも危険な発言を繰り出す。
姫様の発言も聞かなかったことにしよう。
ともかく、今は貝焼きに集中だ!




