133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 32
フォークと小刀を両手に持ってキノコを食べる。たしかにフェアリーのサイズ的にそれが最適解。最適解なんだけど、かわいいフェアリーが豪快な食べ方をして、キノコのおいしさにきゃいきゃいする姿が尊い!
「どうしたんですか、ベレッタさん。なんだか変な顔をしてますけど」
「きっとフェアリーのかわいらしさに感極まってらっしゃるんですよ。フェアリーの一挙手一投足の全てがかわいいですからね」
「そうなのか。キノコもぐもぐキノコうまー♪」
たしかにそうなんだけど。そうなんだけどっ!
あまりにかわいく、おもしろくて見るたびに噴き出してしまいそう。
アルマちゃんもロリムもすごくかわいい。ああー、ちょーしあわせー♪
いろいろと、ごちそうさまです♪
「えっ、もうお腹いっぱいですか? 焼きキノコ以外にも料理を用意してるんですけど」
「あ、ごめん。そうじゃなくて。大丈夫。まだまだいける! ちなみに、焼きキノコ以外の料理ってなに?」
「ふた口で食べるクリームソースのパスタ。キノコとかぼちゃとビスクを織り交ぜたトリオスープ。キノコの天ぷらもあります」
「キノコバーベキューのあとにそんな楽しみがあったなんて! わくわく♪」
今日のランチもわくわくがいっぱいだ。
噛みしめると出汁が口いっぱいに広がるシイタケ。
笠はぷにっ。軸はシャキシャキ。噛むとじわりと旨味が広がるタマゴダケ。
キノコとは思えないゴリゴリとした食感が癖になるヌメリササタケ。
強い風味と心地よい歯切れのするシモフリシメジ。
鮮やかな黄色が、熱を通すと白っぽく変化するタモギタケは香りも味も見た目も面白い。
「はぁ~♪ こんなにたくさんのキノコを一度に楽しめるなんて思わなかった」
「ベレッタさんにも楽しんでもらえて嬉しいです。デーシィさんはいかがですか?」
「わたくしも幸せです。初めての体験ばかりで楽しいがいっぱいです。料理も、景色も、人もみんな素敵で、しばらくここにいたいと思います♪」
色づいた紅葉のように頬を染めるデーシィさんは満面の笑顔で答える。
サプライズといわんばかりにティアさんがデーシィさんの背後から抱きついた。
「いえーい♪ デーシィ、みんなも食べてるぅ? キノコもソースも全部ぅまいな! ティアはメリアローザに住むことにしたよ。根無し草は卒業だ!」
「まぁ! ついに決めたのですね。個人的にはわたくしと一緒に暮らしていただけると嬉しかったのですが」
「それもいいんだけど、ミミックは乾燥した土地が苦手だから」
「そうでしたね。残念です。でもよかった。本当によかった」
「いえ~い♪」
ティアさんは再びデーシィさんを抱きしめる。
抱きしめて、決意を伝えた。
「ティアはここでやりたいことをやる! 今までできなかった全部だ! ぜーんぶやるんだ!」
「ええ、貴女らしく、欲張って――――ティア、貴女結構飲んでますね?」
「いえーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」
めっちゃ飲んでるっぽい!
「一度泥酔するほど飲んでみたかったんだあーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
「それやってみたいことなんですか!?」
ティアさんが思わず大きな声を出してつっこんだ。それでもティアさんは構わず笑う。大きな笑顔で笑う。幸せな笑顔で気持ちよく、心のままのえが――――いや、お酒が入ってるからちょっと違うのかな?
でも、彼女の笑顔につられてわたしたちも笑ってしまう。楽しくて、温かくて、どうしようもなく心が安らぐ。
さぁ、次はどんなわくわくがあるのだろう。




