133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 31
少女の初動を察していたロリムの手元にビスクソースがある。なんてできた子なんだ。当然、リィリィちゃんにソースを差し出した。
「これがカニさんを使ったソースです。みんなで食べてみましょう」
「やったー! ありがとう!」
彼女の笑顔のため、小難しい大人の悩みはいったん置いておこう。
そろそろエリンギがいい塩梅に焼けた頃合い。一人一枚持ち上げて、ビスクソースを振りかけてぱくり。
歯ごたえのあるエリンギの食感とキノコ独特の風味が鼻を抜ける。舌にはキノコとかぼちゃとビスクのソースが触れ、旨味と甘味の強い絶品ソースがキノコの味と調和していくのを感じた。
キノコの風味。かぼちゃの甘味。甲殻類の旨味。全てを感じられ、全てが調和する。
「おいしいーっ! すっごくおいしいーーーっ!」
「喜んでもらえて私も嬉しい!」
おいしさのあまり、リィリィちゃんがすみれにハグ。すみれも抱き返してハグ。二人を見たティアさんがなぜか二人を同時にハグ。
ほのぼのする景色だ。ほんわかしちゃうなあ。
「リィリィもこのソース大好き! どうやって作るの? 教えて教えて!」
「もちろんいいよ。結構簡単に作れるから、あとで教えてあげるね」
「わぁーい! ありがとう! よし、もっといっぱいキノコとソースを食べよう!」
ということで、リィリィちゃんもわたしたちの円陣に加わった。
次はマッシュルームが食べごろ。ひっくり返して七輪に置くと、ヒダの部分からマッシュルームの出汁が浮き出る。すみれは『ここがおいしい。これを少しすすって、最後にキノコごとぱくりする』と、デーシィさんに力説した。
その通りにすると、彼女は瞳を輝かせて頬を染める。
「んん~! とってもかぐわしくて、とっても風味豊かでおいしいです♪」
「ほかにもたくさんあるので、たくさん食べてくださいね。ひと口にキノコと言っても、味も香りも食感もそれぞれに個性があって楽しいですから。次にホンシメジを食べてみましょう。香り松茸、味シメジと言われるほど、古よりたいへんに重宝されてきたおキノコ様なのです」
「はふはふ。ふわぁー♪ これもとってもおいしいです」
「デーシィ様、デーシィ様。わたくしにも少し譲っていただいてもよろしいですか?」
「もちろんです。さあ、どうぞ♪」
「ありがとうございます♪ とってもおいしそうなキノコです。わくわく♪」
赤雷がわくわくしながらライブラから取り出したそれはフォークと小刀。
フォークをホンシメジの柄に刺し、小刀を逆手に持ってザクザクと切り取る。まるで海賊か山賊が丸焼きの肉を豪快に切り取ってほおばるような絵面がシュールすぎて面白い。




