133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 30
デーシィさんとすみれ、わたし、アルマちゃん、ロリムの5人でひとつの七輪を囲んだ。自然とそうなった。いつの間にかほかの七輪が埋まってた。
とかく好き好きに簡単に切られたキノコを七輪の網に置く。デーシィさんへの毒キノコ講座の間にやってきたフェアリーたちも好きな七輪に席を置いた。
わたしたちのところにはすみれと同じ赤色が好きな赤雷。朱色の着物がよく似合う。秋の味覚にわくわくして、両の頬が赤く染まる。時折吹く涼しい秋風も解けてしまうほどに。
「マッシュルーム。エリンギ。しいたけ。ホンシメジ。タマゴダケ。どれも立派に育って、ぷっくりと肉付きがよくておいしそうです♪」
「本当に素敵なキノコたちだね。デーシィさん、マッシュルームは軸をとってひっくり返して出汁がヒダに溜まったら食べごろです。エリンギもしいたけも旨味が強いので焼くだけでとってもうまうまです。まずはひとつずつ焼いて食べてみてください。次に塩を振って食べましょう。最後に特製ソースをたくさん作ったので、それを塗って食べてみてください♪」
「特製ソース!」
ついうっかり大きな声が出てしまった。
サマーバケーションの記憶が呼び起こされて心が飛び跳ねてしまう。
焼いてる間にどんなソースを作ったのか聞いてみよう。
「わさびマヨネーズ、柚子味噌、ひき肉と刻んだ生姜、胡麻ダレ、ハニーマスタード、甘辛醤油ダレ、イチオシはペースト状にしたキノコとかぼちゃを使って、ホノオガニから出汁を取ったビスクソースです」
「ビスクソース?」
ビスクとはスープのことである。甲殻類を使ったソースであるならば、それはアメリケーヌのはず。わたしの疑問符に、すみれは難しい顔をしてブロッキングポーズをとり、体を左右に揺らして悶々とした。
「言いたいことは分かります。ソースなのになぜビスクなのか。でもアメリケーヌはトマトを使います。でも今回はトマトの旨味と酸味よりもかぼちゃの甘味が気に入ったのでトマトを使ってません。なのでアメリケーヌではないのです。かと言って、ビスクはソースではなくスープです。でもガンガンに煮詰めてソースにしました。焼きキノコのためのソースにしたかったからです。もういっそ、ビスクとアメリケーヌとは別の新しいソースとしてしまえばいい気がしますがぐぬぬぬぬぬぬ…………」
「カニさんを使ったソース?」
すみれの言葉に脊髄反射的に反応したのはカニが大好きなリィリィちゃん。セチアさんのいる円陣を飛びぬけてやってきた。




