133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 28
以下、主観【ベレッタ・シルヴィア】
野外に七輪が並ぶ。銀色の備長炭のところどころに美しい赤色が輝く。サマーバケーションで見たものと同じ。あの日に食べたチキンステーキはおしいかった。塩こうじに漬けた鶏肉の柔らかさとジューシーさが今も心に残る。
数種類のソースの全部がおいしかった。あぁ~、思い出しただけでよだれがじゅるり。
思い出し呟きをすると、わたしの声をキャッチしたソフィアさんが振り返る。
「それ、サマーバケーションに行ったフィーアから毎日のように聞かされた。私も食べたい、チキンステーキ」
「そうなんですよ。すみれが用意してくれたチキンステーキが本当においしくって、他の料理も全部おいしくって、華国料理もおいしくて。それだけじゃないんです。夏季合宿に参加した寄宿生の故郷の味も作ってあげて、みんな本当に喜んでました」
「おもてなし力が半端なさすぎる。知ってたら私もサマーバケーションに行ってたのに」
「みなさーん、準備ができましたー♪」
すみれとルクスアキナさんが山盛りのキノコを持ってきた。文字通りの山盛り。キノコ狩りに参加しようと思ったのに、用事を済ませて合流しようとしたら既に終わってた。
すみれの超採取能力とキキちゃんヤヤちゃんしじまちゃんの無限に湧き出るキッズパワーのおかげで、超速攻で籠の中身を満たしてしまったらしい。
ザルに盛られたキノコは見たことがあるものから見たことのないものまで並ぶ。隣の包装紙のようなものの上にもキノコが並ぶ。
キノコが盛られたザルと包装紙を机に並べると、すみれがデーシィさんを呼んだ。
「はい、それでは。デーシィさんはキノコ初心者ということで、大事なことを伝えたいと思います」
「大事なこと?」
「単刀直入にお伝えしますと、ザルの中のキノコは食用です。包装紙の上のものは毒キノコです」
「毒!? キノコって毒があるんですか!?」
「はい。知らないと毒キノコを食べるかもしれないので、知識のある人か信用できる業者さんを通してください。くれぐれもキノコを見つけたからといって、無作為に採取して食べないでください。そんなことは普通はしないと思いますが、シャハルサハではキノコは貴重品ということですから、貴重品と思って食べる人がいるかもなので」
「しっかと心に刻みます。正直、毒キノコと言われた白いキノコが綺麗でおいしそうだと思いました…………」
「ドクツルタケ。別名【死の天使】です」
「死の天使!?」
「一本食べただけでほぼ即死です」
「即死!?」
これを聞いたデーシィさんは顔を真っ青にして後ずさる。知らずにいたら食べてたかもしれない。
気の抜けた彼女は力なく椅子に腰をかけた。




