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コイバナ 1

コイバナできゃっきゃうふふする回です。

ついでに予告していたボードゲームが描写されています。

ちょっとしか登場しませんが、とりあえず満足です。




以下、主観【ティレット・ヘイズマン】

 雲一つない青空。

 心地よい暖かな春風。

 ああ、今日はなんて、なんて良いボードゲーム日和なのでしょう。


 ずっと夢だった。お友達と一緒に卓を囲んでゲームをして遊ぶことを、どれだけ恋焦がれたことか。

 前に麻雀をしたけれど、先日のアレはイカサマ麻雀ということで、場の空気をすみれさんに完全に持っていかれてしまった。

 でも今回は私のターンです。


 意気揚々と扉をくぐり、すみれさんたちがシェアハウスする家へいざ参る。

 そこには待ってましたとすみれさん。それからルーィヒさんにペーシェさんも待っていた。

 彼女たちには事前に声掛けをして集まってきてもらったのだ。

 心の通った友人たちと同じ時間を過ごすというのは良いものです。キッチンに参加する時はとても勇気がいりましたけど、入ってみると自分でも驚くほどに足が進んでおりました。

 妹と侍女の2人と、それから使用人に囲まれて育った私にはとても新鮮なことばかり。戸惑うことも多いけど、今ではとても愛おしい。


 今こうしていられる時のなんと幸せなことか。

 ひとつ、笑顔がこぼれて胸が熱くなりました。


 さて、ボードゲームはただの遊びではありません。

 知略に運、ルールの隙を衝く勘所の良さはさることながら、その醍醐味はコミュニケーションツールであるということ。

 お互いに顔を合わせて、同じものに夢中になる。これこそゲームの素晴らしさ。

 一喜一憂しながら親睦を深めあうにはもってこいの道具なのです♪


トランプ(カードゲーム)はホームパーティーでもよくやるけど、ボードゲームってメジャーなのしかやったことないなぁ。すごろく形式でルーレットを回すやつ。今日持ってきたのってどんなの?」


 ペーシェさんも興味津々。興味を持ってくれると嬉しいです。


「今日のはこれ、【バケット・オブ・ウェル】。井戸のバケツですわ」

「なんていうか、地味な名前だね」


 たしかに名前は地味。しかし現実世界にも活かせる知恵が詰まっているのです。このゲームは運と勘と決断力がものをいうゲーム。

 題材は株とお金。しかも現実世界に近い流れで進むのが特徴。株投資の入り口として学校の教材にも使われ始めている。近年有望な存在として注目されていた。


 最終的な目的としては、ゲームの流れを通じて、手持ちのお金が最も多い人が勝者。

 このゲームの開始時、最初に自分の場に置かれるものは、【財布】【銀行】【証券】【役職カード】の4つ。

 財布と銀行にはそれぞれゲーム内通貨であるシエルを置き、始めはそれぞれに500シエルずつを準備、合計1000シエル。

 証券の役割は、銀行のお金を使って株券を買い、株を保管する場所である。最初、ここには何もない状態から始まる。

 役職カードは名前の通り現在の階級を示す。役職カード1枚につき、毎ターン、自分は給料として10シエルを受け取ることになっており、スタート時は2枚が配布される。


 このゲームで最も重要なテーマである株について、株を買うための指標となる株価は全プレイヤー共通。最初は30に設定されていた。

 株券は1度の売買で手数料は10シエルかかる。なので、まとめ買いがお得。10枚購入するごとに株価が1シエル上昇し、10売却するごとに株価が1シエル下落する。株の売却で株価が0シエルにはならない。

 毎ターン、持ち株1枚につき配当金として1シエルがもらえる。

 株価が0になるとその企業は撤退したとみなし、全てのプレイヤーの株券は消滅する。

 現実では様々な上場企業が存在し、自分の好きな銘柄を買うわけだけど、とりあえずこのゲームでは1社に統一です。


 紆余曲折する人生の出来事を決めるイベントカードの山。

 120枚が重なるこのカードには【役職カード】【ハッピーカード】【バッドカード】の3種類各40枚存在する。

 役職カードは引いたら役職が1つ上がり、受け取る給料が増える。ハッピーカードとバッドカードはその名の通り、良いことが起きたり悪いことが起きたりする。

 しかし状況によっては、ハッピーカードなのにハッピーにならなかったり、逆にバッドカードなのにバッドなことでなかったりする。そこは運次第です。


 1・ゲームの流れは、ターンの最初にプラスマイナスが刻まれた六面体サイコロと数字の表記された八面体サイコロを同時に振り、株価を変動させる。

 2・給料と配当金を受け取る。

 3・財布銀行間の金銭(シエル)の移動。手数料無料。

 3・株券の売買。手数料有り。

 3・イベントカードを10シエルで購入。1ターンに1~3回。ただし1度は必ず引く。

 4・好きなタイミングで相手のターンに移す。


 3の部分は任意に行動でき、株券を買ってイベントカードを購入してもよし。イベントカードを引いてお金の移動を行うもよし。


「なるへそ~。お金を主題に置いたゲームなんだ。面白そう!」

「カードに種類があって回数を選べるってことは、チキンレースみたいな感じか。次のカードが何のカードかどうかを予測して、次の人に送りつける的な。なかなか性悪な性格してるんだな」


 ペーシェさんとルーィヒさんからは好感触。

 他の方々の顔色はどうでしょう。


「なるほど。でもでも、3回に2回はいいカードってことだよね」


 すみれさん、素晴らしい観察眼です。


「はい、その通りです。運が良ければ3回とも良いカードを引ける場合もありますし、バッドカードでも状況によっては好転する場合もあります。そこは運次第ではありますね。逆も然りですが」

「バッドなのにいいことが起こるってなかなか変化球だね。逆も然りってことは、ハッピーがバッドになることもあるのか」


 ペーシェさんが不安そうな顔をする。彼女は危険察知能力が高い。

 だからこそ、危険を予測して行動できる彼女はとても賢く頼りになる。


「ですです。そこがこのゲームの面白いところなんです。ところで、ハティさんやアルマさんたちはお出かけですか? もしよかったらと思っていたのですが」

「アルマちゃんたちはシェリーさんから送られてきたマジックアイテムの動作確認と試験をしに演習場に行っちゃった。ハティさんも付き添いで空中散歩に参加していったよ。夕方までには戻れるかもって」

「そうでしたか。それは残念です。では気を取り直して、ゲームスタート……の前に、カードの内容を把握しておきますか? 私たちは内容を知っているので不公平になりますし」


 見渡して、ペーシェさんは首を横に振った。


「あたしはいいや。やりながら一喜一憂していくよ。ゲームなんだし」


 ルーィヒさんもペーシェさんに同意。


「ボクもそれでいいんだな。その時々に補足があったら教えて欲しいんだな」

「わかりましたわ。では始めましょう」


 まず手順の確認も兼ねて私から。

 サイコロを振って株価を決める。

 -5。

 株価を25に更新。役職カードが2枚あるので20シエルを受け取る。

 イベントカードを引く前に株券を30枚購入。25×30+10=760シエル。残金の260シエルを財布と銀行にそれぞれ130シエルずつ振り分け、10シエルを使ってイベントを行動。

 イメージとしては給料日、配当日、休日に株券を買ったり外食や遊興をしたりといった流れ。

 さっそく1枚ぺらり。

 …………バッドカード。【共同事業失敗】自分と左隣のプレイヤーから役職カード1枚を破棄する。


 左隣。ペーシェさんである。

 顔を見合って一瞬の沈黙ののち、感嘆符が飛び出した。


「…………え? あたし、何もしていないのに、なんか巻き添え食らった感じ?」

「う、ごめんなさい。そんな感じです」

「ちなみにこの役職カードが0枚になったらどうなるの?」

「役職カードが0になったら失職ということで、給料日に給料を受け取ることができません。他に特にペナルティはありません」

「あんまりなさそうなんだけど、ゲームの途中でお金が無くなったらどうなるの?」

「それは…………お金が無くなった時点で全ての役職カードを破棄します。残金を600に調整します。1ターンに2回、0シエルでイベントカードを引きます。役職カードがあった場合、そのカードを手元に置きます。役職カードでない場合、カードを山札に戻します。役職カードが手に入るまで、お金は手元にありますが株券の購入をすることができません。配当金は受け取れます」

「マジか。嫌な予感しかしねえ」


 初っ端から不穏な空気が漂う。


「それはまた、厳しいんだな」


 ルーィヒさんも心配した。でも、物事は捉えようだと思います。


「でも大丈夫ですよ。役職カードを破棄するバッドカードは40枚の中で4枚しかありません。逆に役職カードを追加するカードもありますし、全体で120枚ありますから、そうそう引くものではありません。さっそく1枚、出てしまいましたが」

「そ、そうだね。今のがフラグにならなきゃいいんだけど」


 もっと不穏なひと言を放って次はペーシェさんの番。

 お金の整理を終えたのち、株券を買ってカードをぺらり。

 バッドカード。【降格】役職カードを1枚破棄する。


 まさかのフラグ回収。これにより、ペーシェさんは無職になってしまった。

 しかしまだ無職。ではなく求職中。

 万が一にもこのまま消費だけが続き、お金が0を下回った場合、彼女は生活が破綻して生活保護受給者となり、ただただ役職カードが引けるまでイベントカードを引くマシーンと化してしまう。

 よほどのことが無い限りそんなことはないのだけれど、なんだかこのまま行くとそうなってしまうかもしれない。


 ちなみに生活保護受給者となっても、借金をして破産申請をしたとしても希望を捨てる必要は全くない。

 世の中にはそんな状況に陥ったとしても、情熱と人脈で億り人になる人なんてごまんといる。

 結局のところ、人生は自分次第なのです。


 そしてペーシェさんはたて続けにバッドカードを2枚引いて意気消沈。

 2枚目は【まさか!?】財布をトイレに落として流す。財布の80%のお金を失う。

 最後は【病気】脳梗塞。このターンを直ちに終了する。次のターンをスキップする。


 人生は自分次第だけど、運次第でもあるようです。


「3枚に2枚はいいカードってことは、そろそろハッピーカードが来るでしょ。ほら来た。【そして時は巻き戻る……】最も新しいハッピーカードまでのカードを山札に戻す。……って、ティレットが引いた【特進】ってカードまで、ペーシェが引いたバッドカードが3枚もあるんだけど、これって実質マイナスじゃない。ハッピーと言えるのか?」

「あ…………それはいいことが書いてあるようで、殆どの場合はあまりよくないものです」

「なるほど。これがさっき言ってた、ハッピーなのにバッドなカードか。チラッ」

「こっち見んな」


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