133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 24
デーシィさんは手のひらを優しく開き、ティアさんの手と恋人繋ぎをするように手を握る。
なんの変哲もない姉妹のスキンシップ。だけどティアさんにとってそれは驚天動地の出来事。これまでの常識の外にあったはずの、手を伸ばすと壊れてしまう理想の世界。
彼女は今、夢にまで見た世界に足を踏み入れた。
「デーシィ、手、痛くないか?」
「ええ、ティアの手がこんなにも温かかったなんて初めて知りました。とても嬉しいです」
「あぁ……あぁあああ…………ッ!」
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、ティアさんは大粒の涙を流した。デーシィさんは彼女を抱きしめて、『おめでとう』と囁いた。デーシィさんは涙で顔をぼろぼろにして、声にならない声で愛しい姉妹を抱き返す。
ダンジョンから戻ってきたソフィアさんとフィーアさんが遠目でこれを見た瞬間、真っ青な顔をして走ってやってくる。
弱体化のマジックアイテムが完成したことを知らない二人からすれば、あと数秒でデーシィさんの骨と筋肉が砕ける場面だからだ。
「ちょッ! ティア、デーシィ、なにやってんの!?」
「おいティアは早く腕を解け! デーシィが死ぬぞ!」
血相を変えてやってきた二人に、デーシィさんがことの詳細を話す。
「もう大丈夫ですよ。アルマさんたちが特別なマジックアイテムを作ってくださいました」
「「特別なマジックアイテム?」」
声を揃えた二人に、涙を拭いたティアさんが中指に輝く金とプラチナの指輪を見せた。
「これのおかげだ。指輪に刻まれた魔法のおかげで筋力が普通の女の子と同じになったんだ」
「「ほんとに!?」」
まだ信じられない二人は驚きが隠せない。しかし、デーシィさんの手を握ったことから、彼女の言葉を信じるほかにない。
驚いて、唖然として、姉妹の幸せを実感した彼女たちの頬が少しずつ紅潮する。
膨らんだ風船が破裂するように、二人はティアさんの手をとって歓びを共有した。
「やったね、ティア! これでなにも心配することがなくなったね!」
ソフィアさんはティアさんの手を取って、ハグしてビズして心を躍らせる。
フィーアさんも彼女にハグしてビズして喜びを伝えた。
「やったな、ティア! これでようやくいろんなことができるぞ! みんな、本当にありがとう。あたしにできることがあったらなんでも協力するよ!」
両手でガッツポーズを作るフィーアさんを前に、さっそくアルマちゃんが躍り出る。指摘したのはロリムが持つ丸い玉。
「どういたしまして! 話しが逸れるんですが、ロリムが持ってるそれは魔晶石ですか? ゴーレムパラダイスでシェリーさんたちに実力を披露すると言ってましたが、その時に採取できたんですか?」
アルマちゃんの顔に、『欲しい』って書いてある。間違えた。『超欲しい』って書いてある。
それを察したソフィアさんが困ったような声色でアルマちゃんに待ったをかけた。
「これは私が採取した魔晶石なの。で、昨日の晩御飯も宿も暁さんにもらったから、暁さんに渡そうと思って。これで足りるかどうかは分からないけど」
「ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「もちろん。どうぞ」




