133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 23
華恋は指輪を吟味する。表と裏を見て、くるくると回す。すると笑顔になって指輪を箱に戻した。
「うん。完璧。ハートのパターンのデザインもすごくかわいいね。平打ちリングにしたのは魔法陣の刻印に必要な面積を確保するため?」
「はい。この細さが限界でした。指のサイズはデーシィさんと同じなのでぴったりのはずです」
「それならよかった。個人的には女性らしい細い、シンプルなリングのほうが似合うと思うけど」
「――――まぁそこは、仕方ないということで」
アルマちゃんの鉄面皮の裏に、『絶対に文句を言われると思ったらから華恋さんを連れて行かなかったんですよ』って書いてある。聞こえる。オーラが言ってる。
実際、彼女を連れていったらたいへんなことになっただろう。
『指輪を細くしたほうがいい』
『刻印をするための魔法陣をそれ用のものに改良しろ』
そういった注文がきたに違いない。
華恋も華恋でちょっと不満そう。不満を隠す笑顔が張り付いてる。
気付いてない振りをしておこう。
翻ってティアさんの笑顔は心の底から出た満面の笑みだ。
期待に胸を膨らませ、デーシィさんが指輪を落とすようにティアさんの中指にはめる。
「はい。きちんと魔法が発動しているようです。試しになにかを掴んでみましょう」
「お、おぅ…………」
ティアさんは少し悩んで、ライブラから空になった宝箱を取り出す。万が一にも壊れていいもの。自分の持ち物の中で最も安価なものを選んだ。これならさいあく壊しても誰も困らない。
期待はしない。だけど期待したい。
普通の女の子になれるなら。それをどれだけ恋焦がれたか。
触れて、力をこめる。
宝箱にはなにもおこらない。
彼女は驚いて、宝箱をなめまわすようになでる。
「壊れない。それに、体全体に違和感はある。筋力が弱まったような感覚がある。それでいて体調に変化はない。これが弱体化の魔法? すごい。すごいっ。すごいッ!」
「それでは、ティア。わたくしの手を握ってみてください」
「え、でも……」
「もう大丈夫ですから。なにかあっても回復できますから」
「お、おぅ…………」




