133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 21
幾度か試行錯誤を重ねて完成した魔法陣は、闇魔法とは思えない美しい幾何学模様を描いた。誰かを困らせるものではない。誰かの幸せを願って生まれた魔法なのだ。美しくないはずがない。
インヴィディアさんが魔法の感触を確かめて、満面の笑みでサムズアップを繰り出した。
「うん。私が発動した魔法以上に安定してる。素晴らしい魔法技術と、魔法に対する愛を感じるわ。本当にみんな、憧れるわ♪」
「「ありがとうございますっ!」」
インヴィディアさんに憧れてもらえることは最上の誉め言葉。さぁて、次はこれをディザさんが作ってくれた指輪に刻印するだけ。個人的にはマジックアイテムへの刻印にも興味がある。でもこればかりは失敗できない。ここから先は玄人の仕事。陽介さんの出番です。
「お任せくださいねえ。今回はプラチナとゴールドの指輪ですか。デザインはアルマさんのアイデアでしたねえ。女性らしいかわいらしいデザインですねえ」
「アルマなりにかわゆいデザインを心がけました。実際に形にしてくださったディザさんに感謝です」
「いやなに、華恋のオーダーに比べたらなんてことないさ。それにしても、まさかアルマが魔法以外のことができるようになるなんてなあ」
「なんか引っ掛かる物言いですが、反論できないので無視します」
「無視することを言葉にされた……」
「ふふふ♪ アルマさんは留学してますます素敵なレディになりましたねえ。それではさっそく、刻印していきましょう」
ぱぱっ。
指輪に手を当てた瞬間、光ったと思ったら刻印作業が終わった。
早い!
もっとじっくり観察したかったのに!
さすがの玄人芸。凄いけどもっとしっかり見たかった!
「はい。これで完成ですねえ。試しに全員で試験してみましょう。まずは姉妹のデーシィさんからお願いできますか?」
「はい。もちろんです」
渡された金とプラチナの指輪を手のひらに乗せる。体外に自然放出される微力な魔力で魔法が発動した。魔法を受けたデーシィさんは感触を確かめる。
「たしかに魔法はきちんと発動しております。ただ、わたくし自身の腕力が弱いので、効果が現れているかどうかがピンときません」
「なるほど。それではワタクシが試してみましょうねえ」
そう言って、彼は上着を脱いでみせた。魔術師とはとうてい思えない筋骨隆々の胸筋。腹筋。上腕二頭筋。その他諸々、ドン引きするほどに極めた肉体が露わになる。




