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133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 20

 インヴィディアさんは魔術回路を整理して再構成をするだなんて、そんなことは考えたことがない。なぜなら、彼女としては魔法は、『発動すればそれでいい』代物だからだ。

 芸術的だとか、ましてや他人のためのマジックアイテムの素材になるなど前提にない。

 元々、自分のことでいっぱいいっぱい気質だった彼女は他人を慮る力が弱い。それでも、社会的サークルで生きていけるように努力した。だから一国の主になったし、みなに慕われる素敵な女性になれた。

 だが、時折として、思いがけないところで弱点が露わになる突拍子のなさが露呈する。クラリスさんに対するインヴィディアさんのコーヒー好きもそのひとつ。

 いい人なんだけど、こういうところは気を付けていかなくては。


 若干の心配を視線で送るわたしたち。

 失敗はできないと意気込む嫉妬の悪魔。

 再構成された魔法陣を発動させて感触を確かめる。


「――――少し、違和感があるかも」

「違和感、ですか?」


 インヴィディアさんは首を捻って感触を反芻した。


「そうねぇ、魔法自体は発動するんだけど、魔力の通りが悪くて出力が下がる、みたいな?」

「なるほど。どこかに魔力の流れを阻害する要因がある、ということですね。探ってみます」

「あ、あのっ!」


 横から声を出したのはデーシィさん。小さく手を挙げて協力を申し出る。


「それでしたらわたくしにも心得があります。ぜひ手伝わせてください。わたくしの姉妹のために尽力してくださってるのに、わたくしがなにもしないのはいたたまれないです」

「もちろんです。一緒にティアさんの悩みを解決しましょう」

「はいっ!」


 二人で手を重ねて再構成した魔法陣に魔力を流す。どこに魔力の流れを阻害する場所があるのか。可もなく不可もなく、適正な魔力の流れを興すにはどうすればいいか。

 整理して、整頓して、足し算して引き算をする。デーシィさんの考えが魔力の流れを通して伝わってきた。

 この魔法陣を複数に分けて分散してみるのはどうだろう。

 幾何学模様の中にある3本の線を外して隣の魔法陣と連結させて、連続させて、円環を作れば魔力の流れが均一にできるかも。

 彼女の魔力の色を、光を、力強さを見て分かっていた。実際に手を重ねて共同作業をしてみて確信した。

 この人は心から魔法を愛してる。

 実力もわたしなんかとは比べ物にならない。宮廷魔導士か、ベルン騎士団長クラスかもしれない。

 楽しい。魔法を作ることがこんなにも楽しいだなんて。この気持ちはきらきら魔法を作った時に似てる。

 嗚呼、わたしって、本当に魔法が大好きなんだな。

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