133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 8
さて、おいしいクッキーにおいしいコーヒー、面白い話しを聞かせてもらったところで気を入れ直して奮起しよう。ここ一回。たった数時間だけ頑張ればいい。
善は急げ。面倒なことは速攻終わらせるが大吉。
「それでは朝食も終えたことだし、シェリーさんから頼まれた案件を片付けに行きますか。フィーア、ルクス、デーシィ、ティア、準備はいい?」
「おう、いつでもいいよ」
「え!? シェリーさんの案件ってなに!?」
「わたくしも何も聞いてませんが?」
「ティアは華恋と一緒にミミックの住処を見に行くから、今日は別行動だ」
「ティアは用事有りか。シェリーさんの案件は、ゴーレムと戦闘することで私たちの戦闘力を見たいんだって」
彼女たちを私の用事に巻き込むと、寝耳に水のルクスとデーシィが眉間にしわを寄せて首をかしげた。
「今日はお昼にキノコ祭り。だから山に入って山菜狩りに行くんだから。貴女のご飯もあるんだからね!」
「実はわたくしはアルマさんに用事を頼まれていて、今日は一緒にいられません」
「ぐぬう……既に用事があったとは…………」
ちくしょう。ついでに妹たちを巻き込んでやろうと思ったのに。結局、ゴーレムとの戦闘には私とフィーアが参加。念のための護衛として、夜咲良桜とスカサハが同行する。さらにどういうわけか、せっかくなのでということでアルマによく似たロリム・シャイコースが手を挙げた。
「ぜひとも私もお供させてください。ゴーレムが出現するダンジョン17層【ゴーレムパラダイス】は何度か赴いたことがあります」
手を挙げた彼女を見たシェリーさんはロリムを見て疑問に思う。ロリムの実力やいかに。ゴーレムが出現する階層に出向くということはそれなりの実力があるのだろうか。客観的な事実を暁さんに求めた。
「私は構わないのだが、暁、ロリムの実力はいかがなものか」
「心配ありません。一人でゴーレムを一度に何体も沈黙させられます。ロリムは何度も17層に行って魔晶石を取りに行ってますから」
「魔晶石? ものすごく気になるワードが出てきたのだが、それはまた採取してから話しを聞こう」
目的から逸れそうな単語が出てきて、しかしシェリーさんは好奇心を抑える。明らかにレナトゥスに貢献しそうなマジックアイテム。話しが脱線することが目に見えてるから我慢した。
彼女の心中を察したロリムが素敵な提案をする。
「それでしたら、道すがら説明いたします。準備がよろしいのでしたら向かいましょう。17層は環境が整ってるので、装備さえあれば他に準備は必要ありません」
「そうか、それではロリムに甘えるとしよう。サンジェルマンさんも準備はよろしいですか?」
聞かれ、フェアリーと奥さんとヘラさんと一緒にバナナと異世界の話しでわいわいするサンジェルマンさんはサムズアップして笑顔を向けた。
「大丈夫だよ。手早く済ませようか」
「それでしたらわたくしも、わたくしも一緒に行きますっ!」
さぁ行こうという時に空気の読めないお姫様が現れた。
そんなに私に粘着したいのか。私の手を取って満面の笑みを浮かべる。
「わたくしもソフィアが凛々しく戦う姿を見てみたいです。侍女になるなら、侍女の実力を知っておかないといけないでしょう?」
「侍女は戦わないので実力を知る必要はないと思います」
「なにごとも備えあれば憂いなし、です!」
「万一の時の備えは騎士団の方々にお任せします」
「うわぁ~ん! ソフィアが意地悪です! 一緒にいたいだけなのに!」
一緒にいたい気持ちがあるのは素直に嬉しい。だけど、これから向かうのはゴーレムのいるダンジョン。お姫様と一緒に行けるわけがない。




