133.異世界旅行2-7 思い出に、『また明日』を 7
クッキーをさくさく食べるレーレィさんが娘の前で秘密をぽろりする。
「はぁ~♪ それにしても、バナナの花の蜜って本当においしいよね。私の大好物♪」
妻の笑顔を見たサンジェルマンさんは誇らしげに、楽しそうに語る。
「レーレィは本当にバナナの花の蜜が好きだよね。バナナの花の蜜は現地で消費されるから市場には出回らないんだ。でも、僕は伝手があってバナナの花の蜜を分けてもらってるんだ。ほとんど妻の口に入っちゃうけど」
「ダーリン、愛してるわぁ~♪」
「僕もだよ♪」
「ちょっと待ったあッ!」
ラブラブ夫婦の間に娘が割って入る。なにを待ってほしいのだろう。コーヒーをすすってことの成り行きを見守ろう。
「母さん、花の蜜を父さんからもらってるなんて初耳なんだけど!?」
「だって言ってないもん。言ったら欲しくなっちゃうでしょ? そしたら私が食べる分が減っちゃうじゃん」
「娘にそういうこと隠すぅうおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
「あっはははははははははははははは♪」
娘が母親を揺らしまくる。揺らされる母親は大爆笑。なにがそんなに面白いのか。他人ながらに親子関係が心配になる。
不思議な親子のスキンシップをとるペーシェの肩にシルヴァが手を置いた。
「ペーシェだって隠してることあるでしょ。タルトタタンのレシピを隠してるでしょ! 母親に隠し事するなって言うなら、貴女も母親に隠し事しないほうがいいんじゃないかな!? タルトタタンのレシピを教えてよ。教えてくれないならショコラでタルトタタンを焼いてよ!」
「あっはははははははははははははは♪」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
今度はペーシェが大爆笑。彼女の絶品タルトタタンのレシピを知りたいシルヴァは彼女を前に後ろにゆすりまくる。
母が母なら娘も娘みたい。
母と娘、か。もしも私に母がいたなら、彼女たちのようなやりとりがあったのだろうか。嗚呼、考えても仕方ないことは考えないようにしよう。
それはともかくとして、ショコラのシルヴァが熱望するペーシェのタルトタタンは気になるところ。




