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第6話 プロローグは悪夢(6)
黒い影の人物に首を力強く締めながらグイグイと押され──。真っ青な顔色と悲痛な表情で。
「うごッ」、「おげッ」、「うぐッ」と。
俺の麗しい嫁は中国語で声にならない台詞……。
そう俺自身も本当ならば中国語で会話をする嫁の言葉が何を言っているのかは悟ることができないはずなのに。
俺は何故か二人の嫁が、あの憎たらしい男……。俺の大事な麗しい二人……。やっとアラサーと呼ばれる齢でできた嫁……。
それも二人が「助けて」、「許して」、「堪えて」、「お母さまの」、「姫の」、「命だけは助けて」、「おねがい」、「おねがいします」と今日も告げ、嘆願、命乞いをしているのに。
黒い影、黒い容姿……。暗黒神のような男は今日も自分の目の端、口の端を吊り上げ──『ケラケラ』と笑いながら。
黒い容姿の男は母親の背が城壁に当たるまで押していき──。娘の方が黒い容姿の男の背から抱きつき、後ろへと引っ張り、自分の母親を城壁から落とす行為を止めようとしている様子が今日も俺の瞳? 脳裏に? SNSの動画サイトのように映し出されるから。