雪麗
一夜明け、皇帝が私室へと戻る
ドレスに着替えると小蘭を呼ぶ
「お呼びでしょうか?」
「菖蒲様にお会いしたいの。紫宮にお使いに行ってくれないかしら?」
「かしこまりましてございます。」
「美怜、喪服あるかしら?」
「侍女1人にそこまでしなくて大丈夫ですよ」
意図を汲んだ美怜が怪訝そうな顔をする
「いえ、誰であろうとも人が亡くなったのだもの。しかも、心細かった私に仲良くしてくださっている菖蒲様の侍女。当然よ」
「…かしこまりました。リーシュの喪服をご用意します」
黒いドレスを身にまとう
「薔薇様」
「小蘭、どうだった?」
「いつでも構わないそうです」
「そう、ありがとう。助かったわ」
ベールを被り紫宮に向かう
「薔薇様、菖蒲様がお待ちです」
部屋に通されると雪麗が立ち上がり出迎える
「ご機嫌よう、薔薇様」
「ご機嫌よう、菖蒲様。その、何と言えば…」
「いえ、英欣の為にお気遣いありがとうございます」
「…大丈夫ですか?」
「ええ…」
侍女のひとりがお茶を運んでくる
「…英欣様は、雪麗お嬢様が小さい頃からの侍女でして…とても仲のよろしい主従関係でございました。」
お茶を運んできた侍女が口を挟む
「京凛…そういえば貴女、英欣と仲よかったわよね?」
「ええ、英欣様はとても良くしてくださっていましたから。」
「英欣さんから何も聞いてませんか?」
「はい…特に何もなかったと思います」
「そう…何か思い出したら聞かせてもらえるかしら?」
「かしこまりました」
「雪麗様、皇帝陛下の御成です」
「陛下が?」
「ほう、薔薇妃もいたか。ちょうど良い」
上座に座る皇帝
「菖蒲様とお話ししておりました」
運ばれてきた茶を啜る
「宦官の長、高孝に調べさせた。薔薇妃毒殺未遂と英欣の殺害関係があるらしい」
「薔薇妃毒殺未遂?そのような事が?」
「え、ええまあ」
「しかも実行犯は消された」
「え?」
「実行したのは宦官の馬詠らしい
…背後に何者かいるはずだ。探し出し罰せねば」
ずっと立ち上がり、
「薔薇。犯人を捜すのもいいが、無茶だけはするなよ」
そう言い残し立ち去る皇帝
「薔薇妃様、お気をつけくださいね。」
早々に紅宮へと帰る