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37 『悪の組織』の首領

「首領!」

「おお、ルーファス。どうした?」


 『悪の組織』、ジャシーンの首領のところにルーファスが訪れる。首領は相変わらず変わらず椅子に座り『正義の味方』達を待っている。その様子は余裕があるように見える。ジャシーンの組織は全体として『正義の味方』に負けているというのに、首領は特に焦る様子を見せていない。


「いえ、首領は変わらない様子で……」

「当然だ。我の在り様、我の役割は変わらぬ。この場にて我が敵を待つ。それが我のするべきことだからな」

「……はあ」


 ジャシーンの首領は一般的な感覚とは違う方針、目的、理由があるのは確実だろう。少なくとも現状になんら対策を討つことすらせず、他の怪人たちに連絡を取ることもしない。ただこの場で『正義の味方』を待つその姿は少々異様に思える。


「ところで……ルーファスよ何の用でここに来た?」

「ええ、実は報告がありまして……」

「裏切り者でも出たか?」

「……! いえ、そういうわけでは」

「ふっ……素直なものよ。表情に出ているぞ? 何、最初から分かっていることではあったがな。裏切り者、『傲慢』の部隊の隊長、ルーファスよ」

「っ!」


 そうジャシーンの首領がルーファスに告げる。


「今回の『正義の味方』の襲撃からその時に起きた出来事、そもそも『正義の味方』と共謀できる可能性を考慮すればお前しか候補はいない。普段と違う様子からもいくらか推測は出来たぞ?」

「……なら何故その場で処断しなかったのか聞いても?」

「お前の行いは『悪』だ。『悪の組織』に所属する怪人として最も大きな『悪』の行動だろう。実に素晴らしい『悪』だ。まあ、この世界の一般的な者達にとっては『悪』ではなく『善』、正義として判断されるだろうがな。我はその『悪』を評価する。それに……あの場でただお前を殺すだけ、というのは面白くないだろう? あの後『正義の味方』との戦いを控えている。お前の目的はわかり切ったことだ。『正義の味方』と共謀し我を討ちジャシーンを瓦解させる。それを我は迎え撃つ。組織の裏切り者が我の下に来て、それと戦う。実に『悪の組織』らしい行いだろう」

「…………」


 思わずその言葉に呆然とする。その内容の奇異さにである。


「そんなことで俺を放置したと」

「我にとって重要なことはこの組織を大きくすることではない。この組織に所属する怪人たちを守ることではない。我には我の理があり、『悪』として生きる役割がある。確かにお前に話した内容を理由とするには他の者にとってはおかしな理由だと思われるのに違いはない。だが、我が『悪』は他の者とは違うものだ。まあ、このようなことをお前に話したところで意味はないだろう。ルーファス、お前は我を倒しに来たのだろう? そこに隠れている『正義の味方』と一緒に」

「っ……」

「気づかれていましたか」

「お前たち『正義の味方』は光にある者たちだからな、我ら『悪の組織』の闇ある者たちとは違うのでよくわかるのだ。しかし……微かに闇があるな。なるほど、ルーファスを受け入れたか。特異な闇……我がジャシーンの怪人たちに施した闇とは違う闇となっている。ふっ、面白いではないか」

「…………」

「…………」


 ルーファスもアクアリリィもその内容に理解が及ばない。ジャシーンの首領が話していることは一般的な観点からでは見えない、知り得ないことだからだ。この世界に『悪の組織』が生まれた理由、発生した原因、そして今も何故『悪の組織』が存在し栄え『世界征服』を目指しているのか。そしてそれに対し何故『正義の味方』が生まれ存在しているのか。それらが『悪の組織』と戦う理由は何故か。始原の闇、それに対するカウンターとしての光、それらのことは始まりから在り、始まりを知らなければ難しい。ルーファスとアクアリリィはそういった始まりとは関係がない。ゆえに知りえない。


「思えば、お前がこの『悪の組織』に入った時我は失望を覚えたものだ」

「……何か始まりましたよ?」

「……好きにさせておこう」

「不意打ちはダメなんですか?」

「したらやばそうな気がする」


 何かジャシーンの首領の語りが入った。まあ、『悪の組織』の怪人でもそうだが敵を前に自分のことを語ったり、何か主張をしたり、冥土の土産として色々と隠されている事実をしゃべったりする。この首領もまたそう言うことについて話し出したと言うことである。


「我はそもそも『正義の味方』でも『悪の組織』でも殺せるものは稀であろう。それは別に強い弱いの問題ではない。我の在り様と持ち得る力の性質に由来するものだ。この世界に存在するあらゆる戦力、あらゆる武器、あらゆる破壊手段をもってしても我は殺しきれぬ。まあ、海にでも沈めれば封印くらいは出来ようがな。それは『正義の味方』の持つ武装、『悪の組織』の持つ兵器でも不可能。唯一可能とできる手段はこの世界における例外、能力によるものだ」

「……能力」

「そうだ。ルーファス、お前の能力は"規則破り"。この世界にありながら、この世界に存在するありとあらゆる法則、原則から外れる能力。この世界に存在する限り無敵の者であっても、お前の能力を使えばあらゆる無敵を無に帰すことができるだろう。それは我が在り様もまたそうだ。ゆえに我はお前がこの組織の所属になった時残念に思ったものだ。我を殺せるものがこの組織に所属することとなってしまったか、とな。もっともお前は能力を覚醒した後、闇を注ぎ込む際にその能力で虫息のうちに我が闇を弾いた。とはいえ能力覚醒時に注ぎ込まれた分を含め、拒絶するまでのわずかな間に注ぎ込まれた分があり結局は『悪の組織』の怪人となってしまったのだがな。まあお前の場合その能力のせいで我らに従うこともないのだが……『悪の組織』の存在であることに変わりはなく、元の社会には戻れぬわけだ。くくく……そこは少し残念だっただろう」


 ルーファスの事情に関しても話す首領。割とルーファス、および『正義の味方』側、そして首領にもかかわるような重要事であるのにあっさりとジャシーンの首領はその事実を話す。つまり要約すればルーファスであればジャシーンの首領を倒すことができる、それ以外の者では倒せないと言うことだ。もちろんルーファス以外にもジャシーンの首領を殺すことのできる手段はある。ただ、そういった手段は極めて例外的な代物だ。『宣誓の約定呪』の解呪を行える存在が少ないように、ジャシーンの首領もまた特殊な在り様を持ち、それゆえに殺すことのできる存在が少ない。そしてルーファスはその一人だった。


「……首領、それは黙っていたほうがよかったんじゃないのか? 知らなければ勝てるかどうかもわからなかった可能性はあるだろう」

「何を言う。それではつまらぬであろう? 我は無敵でありただ『正義の味方』をその無敵な在り様のまま滅ぼす。それではつまらぬ。『悪』として生まれ、『悪』として役割をこなし、『悪の組織』の首領として大きな『悪』を成してきた。しかしそれがただ無敵ゆえにできたのではまるで意味がない。我に生の実感など必要ないが、せっかくの『悪』なのだ。『悪』として、正当に戦うべきであろう」


 ジャシーンの首領である彼にもいろいろ理由はあるのかもしれない。もっとも、その理由も彼の中にしか存在しないものでありそれ以外の者にとっては傍迷惑な内容だ。自身の組織がどうなろうとも構わないと言ったような内容でもある。


「ふむ……まあ、お前たちには理解できぬだろう。世界の法則にまで話が及べば流石に流石に内容が飛びすぎる。この世界に生まれしお前たちでは届かぬ地平の内容となるな。そんな難しく面倒な話はさておこう。ルーファスよ、お前が我を倒したいと言うのであれば向かってくるがよい。『悪の組織』に在りて、己が所属する組織の首領を滅しようという愚かで実に『悪』な行い、我は許そう、我は認めよう、我は受け入れよう。だが、我もまた『悪の組織』の首領である。戦うのであればよかろう、我も全力でお前を殺しにかかる。殺されたくないのであれば……我を殺してみるがいい!」

「ああ、やってやるさ、もう!」


 ノリノリで語るジャシーンの首領。まるで何かの舞台をやっているかのようにも思えてくるがこれは実際に行われる殺し合いである。首領とルーファスの間に存在する温度差、それをルーファスは感じて半ば投げやりの言葉で返答する。


「私も参加します!」

「頼む!」


 そしてアクアリリィもその戦いに参加する。彼女ではジャシーンの首領を倒せずとも、支援くらいにはなるだろう。


「その意気やよし! 我らに対する『悪』、『正義の味方』よ! この場でその『善』の在り様を終らせてやろう!」


 『正義の味方』の魔法少女と『悪の組織』の怪人の二人と『悪の組織』の首領の戦いが始まった。

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