30 正義の動き
「……納得いきませんわ! なぜ先輩がそのようなことをしなければいけなかったのです!」
「今更ですよデイジー。もう『宣誓の約定呪』で契約を果たした以上覆すことはできません。『正義の味方』から彼を守るにはそのようにするしかありませんでした。それはわかるでしょう」
「ええ、わかりますとも! ですが、そういうことを問題視しているのではありません!! 何故私達『正義の味方』が『悪の組織』の怪人を保護しなければならないのか、ということです! そんなことをして何になるんですか!」
「私は『正義の味方』として正しい行いをしているだけです。救えるべきものを救う。『悪の組織』に対して『正義の味方』が行うことを考えればこうするしか手段はない」
「……っ! ですけど!」
「はいはーい。二人ともそこまでそこまでー」
冷静に自分の意見を述べるアクアリリィに感情的に先輩に突っかかるイエローデイジー。まあ、一般的な言い分としてはイエローデイジーの言う方が正しいのだろう。しかし、アクアリリィにはアクアリリィなりの正義があり、『正義の味方』像も個々で違ってくる。どうしても意見の食い違いは出てくる。そんなことで言い合いをしていたところであまり意味はない。
そしてそんな無意味な言い争いを続けるよりも、これからのことを話し合う方が重要である。そもそもイエローデイジーも含めこの場所にいる魔法少女の面々はそのために話し合いをするために集まっている。まあ、全員ではなく重要な人員、アクアリリィ、イエローデイジーと後は『悪の組織』の一員であるルーファスだけだ。そもそもイエローデイジーは重要な立ち位置ではなく、アクアリリィの後輩だから来ているのである。
「イエローデイジー。話が進まなくなる。言い争いをしたいのであれば今はしばらく他所に行っていてくれないか?」
「っ……わかりました、リーダー」
リーダー格の魔法少女……まあ、もう魔法少女という年齢では明らかに誘う名女性であるが、魔法少女は魔法少女である。その彼女がイエローデイジーを抑える。それだけの風格、立場が彼女にはある。なによりもルーファスの持ち込んだ案件はそれなりに急ぎの内容である。話を進め、全体に拡散し、一気にジャシーンの制圧に向けて話を進めなければいけない。
「部下が荒れていてすまないね。改めて話を勧めよう。ルーファス、君の持ち込んだ案件について。君の所属する『悪の組織』の予定している活動についてだ」
「ああ。うちの組織ジャシーンのここ、『正義の味方』の秘密基地に襲撃をかける件についてだな」
「その通りだ。ぜひとも詳しい内容を訊ねたい……いや、それ以上に。君たちの組織そのものをどうにかしたいというのもある。それ自体は君は構わないか?」
「もちろん。うちの組織は『悪の組織』としては……どうだか知らないが、俺自身はあまりそういうことは好きじゃない。そもそも俺自身元々『悪の組織』に入りたいと思って入ったわけじゃないからな。まあ、その話はどうでもいいとして。組織についてだろう? 怪人、構成員、首領、基地の場所に関しても詳しく教えることに関しては構わない。ただ、俺自身『傲慢』の部隊の隊長をやっているが、他所の部隊とは仲がいいわけじゃないからそこまでは詳しくない。ある程度の傾向、性質、能力に関しては話せるが、隊長個人のもつ能力とかは知らない。首領も……人柄に関してはそれなりに話せるが、あの人が戦った姿を見たことのあるやつはいないといっていいくらいだからな。だからあまりそっちが役立てることはないのが多いと思う」
「それでもかまわない。場所さえわかればこちらが攻め込める。優位を取れるのが重要だからな」
『悪の組織』の内情に関して、一人の怪人から詳しく知れないことが多い。『悪の組織』は組織内でもそれぞれ繋がりがないことが多いからである。他の組織との繋がりでもそうだが同じ組織内でもそういうことがあるのはやはり『悪』であり、個人の性質が優先されるからだろう。まあ、そこは重要ではない。『正義の味方』側にとって重要なのは相手の本拠地を知ることができる点である。
『悪の組織』の本拠地は相手の怪人に防衛措置としての自爆機能、能力があることが多く中々情報が得られない。怪人たちも自分から情報を搾り取られないよう、また勝ちを拾えるよう最後の最後まであきらめずに抵抗することも多く、確実に殺さなければいけない場合も多い。そのためなかなか怪人からの情報収集が難しいと言う事情がある。そのためルーファスのように生きている怪人から情報提供してもらえるのはかなりありがたい。とはいえ恩赦が与えられるようなことは殆ど無い。まあ、そこは逃げ込んだ先が重要である場合もあるが。
「じゃあ、とりあえず詳しく話すとしよう……」
ルーファスがジャシーンの内情、またその襲撃予定の日に関しても話す。ルーファス自身裏切ることに思うところがなくはないが、しかしまあ元々仕事だからやっているのであって転職できればしたかったところでもある。一度『悪の組織』に入ってしまえばまともなところに就けないのであきらめていたのだが、今回のアクアリリィの行動でもしかしたら一般社会に復帰できるかもしれない、そう思う所であった。
「参考になるわー。でも、あなたはそれでいいのかしらー? 一応裏切ることになるのよねー?」
リーダーである魔法少女の女性についている一人の女性がそうルーファスに訊ねる。しかし、ルーファスにとっては……あの首領がそれで裏切りに憤るとは到底思えなかった。
「あの人なら多分それもまた『悪』である、とか言って受け入れそうだなと思ってる。まあ、裏切った以上容赦なくこちらを殺しに来るだろうけど」
「それはまた面白い首領さんねー」
「そうだな。だが……『悪の組織』の一員であるのだから倒すしかあるまい。君の意見、話に関しては参考になった。しかし、君が『悪の組織』の一員である以上それを理由に君を赦し解放する……というわけにはいかないのだが」
リーダーの女性がちらりとアクアリリィに視線を向ける。
「彼女の件もある。それについて話をしようか」
ある意味ルーファスにとっての本題であるアクアリリィとの契約。それに関してもこの場で話し合いとなった。




