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22 お約束

「くくっ……儂がなぜこの組織の首領をやっていると思っている? 部下には会ったであろう? この『悪の組織』において重要視されているのは力。暴力、破壊、殺戮、実にわかりやすい圧倒的な力! そんな『悪の組織』の首領をやっている儂が、少々まともに見えるだけの老人である。それはおかしいとは思わなかったか? 力を信奉する組織において、儂の様な力がなさそうな物が狩猟をやっていることに疑問は浮かばなかったのか? くくくくくははははっ! 思わなかったと言うのなら実に愚かであると言わせてもらおう」

「……っ」


 『悪の組織』の首領である老爺は笑う。嘲笑う。


「……お前はつまりこの組織における文字通り頭、首領としてだけでなく知能的な意味でも頭としての役割があるってことか?」

「ふむ。近いと言えば近い。この組織における力の信奉はそもそも儂が生み出したもの。しかし、首領である儂は力の象徴ではなく知の象徴。頭脳こそが力の存在じゃ。なぜそうなっているのかというと、儂が知識を使い、それを力とする。儂の知に愚かなこの組織の怪人たちは叶わない。なぜなら奴らは力を信奉し力のみに行き力しか振るわない。そんな者に何ができようか。今のお前たちのように捕まり、あっさりとやられるのが結末よ」

「ずいぶんとあくどい行いですね……」

「なに、儂らは『悪』。『悪の組織』、『悪』以外の何者であろうか!」


 この『悪の組織』はこの老爺にとって統括されている。その在り様は怪人たちの知を奪い力のみを鍛え、その力こそすべてであると信奉させたうえでその力を己の知で破る。そういう形で首領として立ち怪人たちを従えている。アクアリリィも言う通りあくどい行いではあるが、しかし手立てとは有効かもしれない。力では勝てないのであれば知で、知で勝てないのであれば力で、そのどちらでも勝てないのならば己の異能で相手を倒し御する。己の勝てる領分を作りその力で勝つと言うのは間違った行いではないだろう。もっともジャシーンの首領が話を聞けばなんと見にくい『悪』かと言うだろう。


「それにその知はとても有効だろう? お前たち二人その檻に囚われ捕まっているのだからな」

「…………」


 ぐうの音もでないアクアリリィ。しかし、確かに捕まったのは確かである。だがその捕まったそれを破れないはずがない。彼女は『正義の味方』。その力は『悪』を超え、『悪』を破るための力。『悪の組織』で作られた物ならば破壊できるかもしれない。


「確かに捕まっていますが……破壊すればっ!」


 魔法を使い檻を破壊しようとするアクアリリィ。しかし、その力は檻に触れると同時にはじけ拡散する。


「きゃあっ!?」

「っと!? 危ないっ!?」

「ご、ごめんなさい! ですが……攻撃が効かない?」

「くくっ、はははははは! 効くはずが無かろう。その檻がなぜここにあるのか考えなかったのか? 知にて力のみの怪人たちを従える。儂がその行いを何処でやっているかを考えたことはなかったのか? その場所はここだ。ここでやっている。その檻はそもそもお前たちに扱うつもりではない怪人たちを従えるための物。当然並大抵の力で敗れるほど甘くはない。くくははははっ!」


 実に厄介なことに、檻は怪人が簡単に破壊できるような代物ではないように作られた物。それは怪人だけに作用するものではなく、力の性質は違うが使用する力としては近しい『正義の味方』の力であっても分散する。つまり『正義の味方』の魔法少女であっても攻撃が無効化されてしまう状況になっているのである。


「くくく……しかし魔法少女か。良い素材だ。面白いものだ…くくくははは」

「っ!」

「どのように改造するのが面白かろう。バラバラにしてどう作り替えるか、いやそのままいじくりまわすのも面白い。醜くするのもありだろう。そうすることで『正義の味方』にいい意趣返しになるかもしれぬ。壊すもよし、改造するもよし、滅茶苦茶にして玩具にするのもあり。実に良い。『正義の味方』でももっともおもしろく使い道のある素材であろう……くくく」

「………………」


 その内容にかつて自分が捕まっていたときのことを思い出し、かすかに震えるアクアリリィ。ジャシーンに捕まっていたときは被害は受けなかったが、しかし実際にそうなる危険性はあった。ルーファスが助けに入らなければどうなっていたことか、それを考えるだけで身震いし、今この場で目の前の老爺が言うことはそれに匹敵する。いや、下手をすればそれ以上になり得るだろう。


「しかし魔法少女に対し『悪の組織』の怪人など使い勝手が悪い……んん? なに? いないだと?」

「え……あ」


 いつの間にか、ルーファスが檻の中からその姿を消していた。


「おい、奴は何処に行った!」

「何故それを私に聞くのですか? そもそも知りません」

「ふん。使い道のない」


 捕まえている相手に訊くことではないだろう。しかし…………すぐにわかる。


「自分にとって都合がいいかどうかだけで判断すればそうもなるな」

「なに」

「大人しく死んでおけ」

「げっ」


 全力の一撃をルーファスが老爺に振るう。それだけで老爺の頭部が爆散した。老爺は知にその能力を振っていた。力はどうしても足りていない。戦闘能力は極めて低い。それゆえにルーファスの一撃であっさりと終わったのである。首領としては弱い。だが、そもそもこれに関してはこの老爺は罠にそのリソースが降られていたからだ。その知を用いたあらゆる罠。認識していること、認識していないこと、そのどちらであっても作用する罠。しかしそんな罠であろうともルーファスには通用しない。彼はこの世にいるが、この世にいない。いる者に反応する罠も、彼はいない者と扱い発動されない。そもそも辺りもしないだろう。そこに存在するが存在していないので。


「『悪』は去った……っと、これで仕事は終了か」


 ルーファスとしては自分の行うべき仕事は済んだ。ここの『悪の組織』の首領は斃れた以上、これ以上争い合う必要性はない。もっともそれをルーファスが喧伝するのも難しい。どうしたものかと思う所である。そんなことを考えていると……大きな放送が流れる。


『爆破装置が作動しました。これより十分後、この建物を完全消滅させる爆破を行います。逃げるべき正しき首領に従う怪人はすぐに建物の外に出て首領の命令を授かるために待機してください。繰り返します。爆破装置が作動しました……』


 爆破装置の作動、それを知らせる建物内にいる『悪の組織』の怪人に向けての警報。本来ならこれは首領が自分から流すものであるのだが、今回首領が死んだことで作動してしまった。首領が生きていようとも、死んでいようとも作動させられるが、基本的にあの老爺に死ぬつもりはない。ゆえに生きている体での内容となっている。何故死んだら爆破するのかというと、相手を巻き込んで盛大に爆破して殺すためだ。


「あ……逃げないとやばいな」


 ルーファスはその放送を聞いてすぐに逃げないといけないと判断する。そんな彼に声がかかる。


「すいません! ここから出してもらえませんか!?」

「あ」


 まだ檻の中にアクアリリィが残っていた。そのまま残っていると脱出できずに爆破されてしまうだろう。


「すぐにやる!」


 そんなアクアリリィを、ルーファスは能力をうまく使いながら助けるのであった。

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